

zucca
Date:020425
後藤さんとしのぶさん結婚式前夜の二人と言うことで二人の心境告白などを…
タイトルは浜崎からなんですが歌詞が出てくるというのではありません。あくまでもイメージということで(笑)
5月も半ばの頃だった。
新緑に彩られた教会に1台の車が止まっていた。平日と言う事もあり閑散とした駐車場に小鳥のさえずりだけが響き渡っていた。ステンドグラスに注がれる光が乱反射している。
何もかもが幻想の世界に見えるように静寂を保っていた。その中に現れる影がこの静寂を破った。
「ここで、このようになりますので…」
30代半ばの担当者の女性がにこやかに微笑みながら緊張する2人を前にテキパキと話しを進めていた。
その口調は事務的ではなくむしろ古くからの友人であるよな暖かみがありそれでいて、馴れ馴れしさは感じなかった。そして、そこには明日に迫った結婚式前日の最終打ち合せに後藤喜一と南雲しのぶは教会に足を運んでいたのだった。
慌しいと言えばこの2名の日常からは当然の事ながら時間を合わせる事も出来ない事情もあり、簡単な挙式でという事でありながらも、それ相応の準備と段取りは踏まなければ落ち着きようがなく、漸くこの日まで着けたというのが彼ら2人の気持ちだった。「それではいよいよ明日と言う事ですが、よろしくお願いいたしますね」
のんびりと構えていた横に立つ後藤のジャケットのすそを引っ張りしのぶは緊張した笑顔を見せて慌てて軽く会釈をした。担当者の笑顔に見送られて2人は教会から外へ出た。
新緑の季節を迎え、教会には春から初夏へ向けての花が咲き誇り、木々が空に向かって大きく葉を広げ始めた。
そんな季節の中、2人は明日この場所で挙式だということにまだ実感が持てない様子で空を見上げた。のんびりとした平穏な午後。それに合わせたかのような口調で後藤は喋り始めた。
「明日も晴れだって、良かったね。しのぶさん」
後藤は何気に緊張していただろうと思われるしのぶに声をかけた。
「そうね…」
しのぶはそう言った物のまだかすかな緊張を解く事が出来ないようで後藤の返事にも上の空のような感じだった。
「明日、大丈夫?今からそれだと倒れるよ」
「・・・どうして、そう呑気に構えられるの?後藤さんは、いつもそうやって!」
「あはは…そう、怒んないでよ。眉間に皺よるよ」
「好きで怒ってるんじゃないわよ。何時も任せっぱなしで今日だって殆ど話聞いてなかったでしょう?」
「うん。だってめんどくさいでしょ。単に話聞くのって」
「そう言う問題じゃないでしょう。まったく…」
「はい、はい」
これ以上この男と話をしていても疲れる事は十分わかっている筈なのにしのぶは尚も言葉を続けようとする。
「でも明日晴れたらいいよね。うん、それだけが気がかりだったからさぁ。俺」
後藤はしのぶの気持ちを知ってか知らずかそういうと再び空を見上げていた。
『本当にこの人と上手くやっていけるのかしら…』
しのぶは今更マリッジ・ブルーを抱えているのかしらなどと思いながらも後藤を見詰めた。
後藤は何時もながらの飄々とした横顔を見せてはいたが、その目には嬉しそうで子供のような表情が表れていた事にしのぶは気がついた。
「しのぶさん、これから別に予定ないよね。飯でも行こうよ」
後藤はしのぶに手を差し出すと悪戯げな目をして言った。
「そうね。そうするわ」
何時の間にか後藤のペースにはめられている事に内心苦笑いを隠しつつしのぶは後藤の手を取った。
『そう言えばこうやって手を繋いだりする事も自然に慣れていったのよね…私』
しのぶは繋いだ後藤のぬくもりを感じながらこの目の前にある男の背を見詰め思っていた。簡単な食事を済ませた2人が都内についた頃には車は混んでいた。何時もなら1時間も掛からない道が帰宅ラッシュの時間に巻き込まれてしのぶが自宅に付いた時には既に夜の9時を回ろうとしていた。
「それじゃ、明日…」
しのぶがそう言いながら後藤の車を降りようとした時だった。
「しのぶさん、ちょっと話して行かない?その辺でもいいからさぁ」
突然の後藤の言葉に助手席のドアに手をかけながらしにぶは考え込んだ。
自宅前まで来て何があるんだろうという考えと何時になく哀願する後藤の目にしのぶは好奇心を覚えた。「そうね。少しだけなら…でも、ここは嫌よ。行っておきますけどここ駐禁なのよ」
「じゃあ、路駐できる場所ってある?」
「ここを少し奥にいった公園なら大丈夫かしら…」
「わかった。じゃあ、そこで」
後藤は頷くと車をゆっくりと走り出させた。
しのぶの言っていた公園はすぐにあった。都会の住宅地にある遊具場と多少の広場があるようなどこにでもあるような公園だった。後藤は路肩に車を止めるとしのぶと一緒に公園の中に向かった。
夜の公園は人気はなかった。元々高級住宅街と言われる場所の事、あたりの住宅から漏れる光と街灯の照明、それに自動販売機の明かりが周囲を照らすだけだった。
「俺、なんか買ってくるけどコーヒーでいい?」
「あ、そうね。それで」後藤がそう言い走り去ったのを見詰めながらしのぶはベンチに腰を下ろした。
5月の風は冷たさを感じる事はなく日中の暑さを忘れるほどの心地が良かった。「はい、おまたせ」
冷たいのでよかったよねと後藤が言いながらしのぶにコーヒーの缶を手渡した。
普段、飲んでいたのはあの場所でインスタントではあったけどホットだったと言うことを思い出してしのぶは微かに微笑んだ。「ん、何?思いだし笑いして?」
「ううん、何時も熱いコーヒーばっかりだったっていうのを思い出してたの」
「そうだった?」
「そうよ。何時も休憩する時ってそうだったわ」辺りが静寂に包まれる。
「懐かしい?しのぶさん…」
後藤がぽつりと洩らした。
その声にしのぶは少し考えながらも答えた。「そうね…懐かしいと言えば懐かしいかもね…」
そう言うとしのぶは缶コーヒーを一口吐けた。苦いコーヒーが冷たさで更に苦く感じた。
「いろんな事があったわよね…」
しのぶは通り過ぎて行った過去を懐かしくも感じながら笑顔を見せていた。
「あの場所で出会った誰かさんとまさかね、明日結婚するなんて、夢にも思わなかったわ」
最後は笑いながらしのぶは後藤の顔を見た。
「後悔してない?」
おそるおそるといった感じで後藤はしのぶを見詰めていた。
「そうねぇ…」
考える振りをしながらしのぶは後藤の目を見詰め返していた。「・・・・してない」
焦らすように告げられた答えに後藤は顔が緩むのが自分でもわかっていた。
「なら、いいか…」
「何を?」
「うん、しのぶさんがどうなのかなって。俺ね、こう見えても小心者だからね」
本音とも冗談ともつかない後藤の告白にしのぶは再度笑顔を見せた。
「知ってるわよ。ほーんと、人を心配させては勝手にこそこそ動き回ったり、昼行灯を決め込んで見せてはこっちが恐くなるような目をしたり、何考えてるのかわからない部分も含めてね」しのぶは飲みかけの缶をベンチの横に置くとそっと後藤の肩に頭を預けた。
「そこまで判ってくれてれば十分かな」
しのぶの重みを感じて後藤は呟いた。
肩に自然と手を回ししのぶを抱き寄せる。「それにね、あの時、待ってるからって言ってくれた言葉が一番支えになったのよ」
抱き寄せられて後藤のぬくもりを感じしのぶは囁く様に言った。
「俺ね、もう離したくないんだわ…一生…」
しのぶが微かに頷いたのを後藤は感じた。
明日からは何が変わるのだろうという不安は感じていたのかもしれない。式など形だけの物だと後藤は考えていが、それでも、この女性が毎日傍らで過ごして居てくれるだけでも何かが変化して行くのは感じ取っていた。
過去に同じような生活はあった。短い期間でもありながら後藤はそれを大事に思っていた。突然奪われた事は今も癒されない事実でもあった。だから、それ以上にこの女性を離したくないという気持ちが強まっていた。そして、自らの前でしのぶが過去と決別する様を見詰めていた。あの時は、しのぶの選ぶ物が過去であるか未来であるか後藤自身にもわからなかった。ただ、「待つから…」と言う言葉を告げるだけだった。
不器用過ぎたのかもしれないと我ながら思ってはいたが、それでも、しのぶは帰ってきた。そして、流れた月日を思えば、遠回りした分だけこうなる事が予め決められていたのだろうかと不思議な気持ちでしのぶを見つめた。
後藤が考え込んでいるように思えたのか沈黙を破ったのはしのぶだった。
「何、考えてるの?」
暫く間を置いて後藤は口を開く。
「うーん、いろいろ…と、さぁ…」
言葉尻がつい途切れてしまう。
そんな後藤にしのぶは微笑みかけた。
柔らかいしのぶの微笑みを見て後藤はゆっくりとその頬に指をはわす。
輪郭をなぞるように無骨な指がしのぶを包み込むと、しのぶはその様に促されるように瞳を閉じた。後藤の息が掛かるのを感じながら。やがて重ねられた唇に想いを伝わらせた。それは、どちらともが必要とされていた事を確認するように、優しく穏やかに。
やがて名残惜しそうにしのぶの頬に唇がかすめて行く。
満ち足りた想いに後藤は不安だった想いを否定した。そこに手を触れれば大切な人はこうやって答えてくれると言うことに改めてその想いを感じていた。うっすらと開かれたしのぶの目に後藤の顔が映る。
珍しい程に真摯な目がそこにはあった。
2人が辿っていた過去に思いを感じたのだろうか。そんな郷愁と慈悲にも似た優しい眼差しがしのぶを見つめていた。「これからも、よろしくね。しのぶさん」
しのぶに告げられた言葉は後藤なりの照れ隠しだったのかもしれない。
「そうね。こちらこそ、よろしく。後藤さん」
気恥ずかしさをしのぶも感じながら後藤にそう言った。
「もう、そろそろ帰りましょうか。あっ。明日は遅刻しないでね」
眉をしかめてしのぶは後藤に言う。
「さすがにねぇ、主役が遅刻じゃシャレになんないでしょ。あいつらだって来るんだし…」
「でも、油断は出来ないわよ」
「はい、はい。恐いよ。その顔」まったくもうと呟きながらしのぶは先に立ちあがった後藤が差し出す手をゆっくりと強く握った。握り返された手にこれから先の未来を見つめた。
握り返された手の強さに何があってももう大丈夫だからと強く確信させられた。
同じ歩調で歩き出した2人を明日は優しく祝福するだろう。
やがて2人の影が公園から消え去った。
後にはこれから向かえる明日の為に夜が深まるだけった。Author's Note
駄ですね(-_-)
だったら送るなといわれそうですが(汗)
取りあえずは、お初物なんですが…実はこういうのを書いたことがあまりない(-_-)
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