─つないだ手─

あら、煙草やめたんじゃなかったの?
……ふーん、結局また長続きしなかったのね、禁煙。

はい。

何って、今度禁煙できなかったらサマンサタバサのバッグ買ってくれる約束でしょう?
約束したわよ、ちゃんと!もう。

あ、雪。
どうりで寒いはずだよね。ごめんね。待たせちゃって。
ウチの課長がまた領収書なくしてさ、自分が悪いってのに、こっちのミスみたいにぐだぐだ云われて、やんなっちゃう。あんなのにつきあって残業させられたらたまんない。知らんふりして出て来ちゃった。
そっちはどう?
ま、大きな事件を抱えてたら、のんびりデートには応じてくれてないよね。うん、平和が一番。
……なーに笑ってんの。当たり前のことじゃない。
毎日毎日、ニュースじゃ救われない事件ばっかりでさ、恋人が警察官ってだけで無性に心配になる乙女心、察してほしいなあ。

純な乙女はバックなんかねだらない、ですって?
いやーねえ、もう!クリスマス時期くらい、サービスしようって気にならない?この、薄情ものぉ。
さあ、行こ行こ。お腹減っちゃった。イタリアンがいいなあ、気を使わなくて済むし。そりゃたまには張り込んでみたいけど。

……うん、じゃクリスマスにね。ちゃんとしたディナー、予約しよう。

でもさ、本当に今日は無理しなかった?だってさ、また煙草吸い出したってことは、嫌なことがあったんじゃない?違う?
私相手にやせ我慢したってしょうがないじゃない。まったくもう。素直じゃないなあ。

ねえねえ、食事の後さあ、時間があったら旅行のパンフレットもらいに行こっか。一度、二人でどっか行きたいんだ。海外なんて贅沢いわないし、一泊二日でいいからさ。
大丈夫、大丈夫。だまし討ちで私の実家なんか連れてかないから。
まーだ連れてく訳ないじゃん。う・ぬ・ぼ・れ・る・な。

私、知ってるんだ。真一郎が煙草をやめられないのは、煙草を吸いたいからじゃなくて、その赤いライターを使いたいだけなんだってコト。
今はいいよ、別に訳は云わなくても。
だけど、もうちょっとしたら、教えて欲しいな。
そのライターの前の持ち主のこと。
もう少し時間が経ったら、でいいから、ね。

あ、この店、前に雑誌に載ってた。ここにしよう。
今日は真一郎のおごりね!


秦くんは「普通の女の子」と出逢って、幸せになれる。きっと。