おとーさん ばれんたいんおめでとう
ちよこれいと かったよ
ほんとうはしろいのがよかったけど おかーさんがちやいろのがいっぱいはいって やすくておとくだからこっちにしなさいといいました
だからちやいろい ちよこれいとです
れなより
「……なんてゆーか、玲名はだんだんしのぶさんに似て来たよね。」
「正直者ってこと?」
「しっかりしてるってところがね」
おとおさんへ
ばれンたいンは ひとみせンせえが おとこのひとにちょこをあげるひだって
だからあげるね
ちょこはまなのだいこうぶつだから
まなにもちょうだいね
まなより
「真名はどちらかというとあなた似よね」
「しっかりしてる?」
「ちゃっかりしてるわ」
「本当に幼稚園でバレンタインなんて教えてるのかねえ」
「というよりお友達の中にね、早熟な子がいたらしいのよ。それでバレンタインって何だって話になったらしいわ」
「ふーん。末恐ろしいねえ」
「そのカードもお友達と一緒に作ったらしいわよ。幼稚園の中のおつきあいも大変だわ」
「女の子は小さくても女の子ってことか。しのぶさんはどうだったの」
「私? 別に。興味なかったし」
「あっそ」
「ちょっと。そのカード元に戻しておいてちょうだいね」
「ん?」
「まだ13日でしょう。あの娘たち、明日あなたにあげるって楽しみにしてたんだから、勝手に持っていかないの」
「はーい」
翌朝。
刻みねぎを混ぜた納豆、豆腐と油揚げの味噌汁、皮をかりかりに焼いた鮭の切り身に半熟卵というメインディッシュの後に出て来たデザートは、よくいって粘土細工、正直に云えば泥団子のような手作りのチョコレートだった。
小さな手で丸めた形がしっかりとついたそれと、クレヨンで書かれたカードを前に誇らし気に胸をはる娘達。
「「おとーさん、はいチョコレート」」
差し出された後藤は双児の姉妹を一人ずつ抱き上げた。
「人生最高のバレンタインデーだよ」
おかえしのキスは嫌がられ、少しだけ幸福度は下がったが。
「うん、うまい」
一口ずつ堪能して、残りはにわかショコラティエに『お裾分け』。
チョコレートは瞬く間に、作った本人達の口に放り込まれた。
「ところでしのぶさんからはないの? チョコレート」
「興味ないっていったじゃない」
「それは幼稚園の頃の話でしょう。俺は今、愛しい旦那さまにないのかなあって訊いてんの」
「……はいはい。じゃあ今日の内に見繕っておくわ」
「んじゃよろしく」