安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


----------------------------------
チェチェン哀れ

----------------------------------
〈 Wed, 10 Dec 2003



ドゥマ(ロシア下院)選挙まえに列車爆破で40人の死者をだし、選挙後の昨日9日、モスクワのショッピング街にあるファッショナブルなホテル前で自爆テロがあった。本来はもう一つ先の建物であるドゥマを狙ったそうだが、そこまで近付けなかったよう。どちらの犯行もチェチェン絡みだといわれているが、確証があるわけではない。
余談:今日のモスクワタイムズネット版は、チラっといくつかの死体が焼けただれた車の前に転がっている写真が出た瞬間にブラウザが切れる。プラウダにも同じ写真があり、見えると同時にキリストのイコンが被さり、別の写真はドクロの絵で隠されてしまう。何度やっても同じだった。何の目的か、これもメディアテロの一種だ。
さて、確証があるわけではないが、チェチェン分離派のゲリラが計画したにちがいないと、いまでは反射的に応じるようになってしまった。そしてチェチェン人は、実際卑劣なテロリストなのだが、悪者と決め付けて疑わない。哀れなチェチニアの民・・・そのことを書いてみたい。
チェチェンはコーカサス山脈の北にすむ山岳民の土地、宗教はイスラム、シリアやレバノン、ヨルダンに同族がいる。何百年も前からロシア帝国と戦って団結してきた筋金入りの民族である。ソ連が崩壊したとき、独立をもぎとった連邦共和国があれば、独立かなわなかった共和国もある。コーカサスを境に南のグルジアは独立し、北側のチェチェン共和国はロシアに組み込まれた。人口の二割がロシア人。
チェチェン分離独立運動に対して、エリツィン大統領がおこなった首都グロズニ鎮圧は中途ハンパなもので、チェチェンはロシア軍を追出し事実上の独立を勝ちえていた。ところがプーチンが大統領になってからチェチェン鎮圧の攻撃がハンパではなくなった。四年前、首都グロズニは真冬にすさまじいロ軍空爆の波状攻撃で廃墟と化した。筆者はちょうどカスピ海油田の資源地図を製作中で、毎日この近辺のニュースに敏感ならざるをえなかった。プーチンは攻めるときは容赦しない、恐ろしい人と想うようになった。
しかしこのころは国際的な反響があり、日本からも医師や支援ワーカーがかけつけたほどチェチェン支援が活発であった。それがすっかり凋んでしまったのは米軍がアフガニスタン空爆を始めてからである。テロ掃討は世界熱になって、チェチェン分離独立闘争は壊滅すべきものであり、米はすでに独立している親米グルジア共和国には介入するが、お山のむこうのチェチニア地方についてはプーチンの恣いままに許したため具体的な国際支援が立ち消えになってしまった。結果、八方塞がりのチェチェン人はテロに走ったのではないか。憾みをはらす方法はテロしかないのだろう。通りすがりの犠牲者を悼み、無差別殺人は断じて許せないことはもちろんです。でありながら「死んでやる」!と自爆テロにむかうチェチェン女性が哀れでしょうがない。
プーチンは「自由経済と民主主義の発展を損ない、国家の一体性に挑戦する犯罪テロ行為である」と非難する。今年のチェチェンゲリラによるとされる犠牲者は三百人近くにのぼり、中央政権からみれば尤もな言い草ではあろう。しかし、プーチン自身のチェチェン強硬政策がテロの下地をつくったのである。(了)


Pnorama Box制作委員会

ひとこと言いたいなんでも・掲示板へ
筆者へのmailはこちらまで
HOMEへ戻る