“青の魔法使”は2人存在しました。その名はアラタールとパルランド。2人の内上位者であった“清蒼の”アラタールは、もちろんヴァラールの僕であり、才気縦横にして極めて行動的な僕として知られていました。そしてパルランドはイスタリとしてはアラタールの下位者でしたが、その友であり助言者でもありました。ヴァラであるオロメは、イスタリをエルフと人の故郷に送り出す人選に際して、このアラタールを推しました。第1紀に彼がそうであったように“狩人”としての手腕を見込まれたのです。これによって彼の視線は、当然のように東へと向けられました。そここそエルフと人のルーツであったからです。
アラタールには(盟主サルマンがそうであった様に)中つ国の将来に対する壮大な未来像がありました。彼もまた力に魅せられた人物の1人だったのです。イスタリにあって彼の序列は第3位(サルマン、ガンダルフに継ぐ地位です)、そしてほんの少し上を見ればそこはもう冥王サウロンにすら匹敵する位階でした(サウロンもアラタール等と同様、マイアールの1人です)。オロメに仕えるマイアールの中に、この青の魔法使の上位に立つ者は居なかったのです。
アラタール個人の指向は、狩人の僕という起源と見事に一致をみていました。彼は常に大いなる喜びと共に原野を行き、その身体は俊敏で並ぶ者の無い騎乗者でもありました。純粋に肉体的な技を比べればイスタリの中に彼に比肩する者は在りませんでした。天空の涼やかなる色彩と豊かな眺望 ―青と緑の― その色に装い、エルフの長弓が彼の誇りでした。野外にあっては、森の静寂と木々との交わりを好んでいました。
彼の身長は1メートル93センチ、その動作は優雅でした。月光に輝く長いローブを纏い、その深緑の裏地は熱い夏の日々にすら柔らかな苔類の寝台を思わす慰めを与えてくれました。彼は魔術師団に選ばれた者達の常として老人の姿に身をやつしていましたが、その目には炎が宿り、声には力がありました。そしてその所作はしばしば大仰なものとなり、それこそ正にマイアの活力を露呈していました。彼はガンダルフと異なり、世界の重荷を自ら設定した嗜好の枠内でしか背負おうとはせず、それ故重圧に潰されること無く背筋を伸ばして中つ国を闊歩しました。
アラタールの中つ国での運命と彼自身の嗜好は、その生涯を通じて平行線を辿っていました。この運命を受け入れ守ったのはガンダルフだけだったのです。
彼の肉体は中つ国に在るためのかりそめのものに過ぎませんでしたが、(皮肉にも)アラタールはその肉体の限界―欲望と恐怖、安寧と疲労、そして高慢と嫉妬―に屈してしまいました。ある意味、理解しやすい話と言えるでしょうか。彼の目的はだんだんと変化していき…、そして今や、力に淫していました。もはや彼は力による解決を禁じた誓いの制約を外れ、世界の正しく強靭なバランスのための戦いとすら無関係に自分自信の目的を追求しだしました。この静かなる策謀は、サウロンへの備えという彼に架せられていた役割、その微妙な均衡を脅かすものでした。彼の東の王国の勢力は指輪王の衰えを待って忍耐強く延ばされました。
“深青の”パルランドは2人いた“青”の第2位で、アラタールの召集に答えてエンドールに送られたマイアです。彼はナーモ(別名をマンドスと言います)とニエンナの従者であり、悲嘆と死の道に精通しており、魂の苦難を学んでいました。アラタールは彼等の間に培われた友情のため、そしてまた旅人として高名な友人の経験に期待してパルランドを旅の道連れとしました。しかし長い旅路の果てに、2人は袂を分かつことになるのですが…。
パルランドは褐色の目と黒い髪の持ち主で、身長は1メートル98センチ、その身体は疲れを知らず大股で力強く大地を踏みしめて歩きました。ガンダルフと同様に彼もまた遠く、広く旅を重ねていきました。しかし青の第2位の魔法使はその灰色の同胞と異なり、旅路の果てに初志から逸脱し彼の言葉に従う人々の元に居を定めました。彼はナーモに教えを受けた者の常として死と闇に通じていたのですが、人々に清めと智恵を授ける筈その言葉は少しずつ変貌していき、最期にはすっかり恐ろしいものと成り果ててしまいました。
彼の智恵は、高貴なるイスタリとしての振舞いに常に力を添えてきました。しかし最期にはこれこそが堕落の源と化してしまったのです。サウロンの支配が東へと浸透していくに従いパルランドの影響力は序々に削がれ、その凋落は第3紀を通じて変化はありませんでした。そして奇妙な事に、アラタールこそパルランドにとって最大の競合者となっていったのです。
from 『Valar & Maiar』