文芸誌『鳩よ!』(マガジンハウス)のNo.216号が2002年3月に発売された時、『指輪物語』ファンの間にちょっとした騒ぎが持ちあがりました。なぜならこの号の「指輪物語を読もう」と題した特集の中に、日本語の商業出版物としては初の『Unfinished Tales』からの翻訳が含まれていたのです。またこの号は、『MECCG(Middle Earth Colectible Card Game)』ファンの間にもちょっとした驚愕を引き起こしました。特集記事中のキャラクター紹介で、MECCGのカードがイラスト代わりに使用されていたからです。MECCGを作成したI.C.E.社は既に倒産しており、不遇の身を嘆いていたファン(私です…)はこの機会に飛びつきました。「MECCGを『指輪』ファンに広く紹介するチャンスではないか!」
と言うわけで、このコーナーではMECCGの紹介を行います。テキストには『鳩よ!』No.216を使用しますので、各自入手して下さい(笑)。
ちなみにマガジンハウスのサイトはこちらです。
この講では、分りやすさを優先して、多少説明を省いていますがご容赦下さい。ここでは皆様にMECCGに興味を持っていただく事と、知らない人には意味不明であろうカードの説明を目標としていますので…。
では皆様、テキストのご用意を。
カード説明の前に、基本的なゲームの内容をご紹介しましょう。
このゲームは2人〜5人が対戦できるカードゲームで、それぞれのプレイヤーは、約60枚の「自分の」カードを持ち寄って対戦します(トランプの様に全員が一組のカードを共有するのではなく、それぞれが自分のカードを使うのです)。プレイヤーはイスタリの一人となり、冥王に立ち向かうため、味方や秘宝を集めます。そして最も多くの味方(や秘宝)を集めたプレイヤーが勝利者となります(中つ国の最も良き助言者と認められるのです)。つまりこのゲームでは、サルマンは堕落しておらず、ラダガストは自然の誘惑に屈さず、アラタールとパルランドは東方に去ってはいません。イスタリ(=プレイヤー)は中つ国を善導するため冥王と戦い、また意見を異にする他のイスタリ(=他のプレイヤー)とは牽制しあっているのです。
さて、テキスト8頁〜13頁をご覧下さい(ただし11頁のナズグルのカードは無視して下さい)。
それらのカードの中には、左上に数字が書いてあるものがあります(アラゴルン2世は3、シェロブは6、ナルシスは3、といった具合です)。この数字を「統率ポイント」と言い、このポイントを多く集めたプレイヤーが勝者となります。つまり上で書いた「味方や秘宝を集める」とは「統率ポイントを集める」という意味です。統率ポイントを集めるには「そのキャラクターやアイテムを、自分の影響下に治める(キャラクター、リソースの場合)」か、「自分の影響下にあるキャラクターが、闇の生物を打ち倒す(ハザードの場合)」必要があります。
11頁をご覧下さい。「シェロブ」の統率ポイントは6点で、「オークの見張り部隊」は1点です。これは、シェロブはオークより遥かに大物なので、倒した時の勲はシェロブの方が遥かに大きいということを示しています。もちろん、オークを倒すよりシェロブを倒す方が遥かに難しいのは、言うまでもありません。
上では、「キャラクターやアイテムを、自分の影響下に納める」と、あっさり書きましたが、ここではもう少し詳しく説明しましょう。8〜9頁をご覧下さい。キャラクターの統率ポイントの下に、白地に黒文字で数字が書かれているのがお分かりでしょう(アラゴルンは9、ボロミアは4、ギムリは6といった具合)。この数字は「意志力」と言い、大きいほど強力なキャラクターであるとお考え下さい。「意志力」が高いキャラクターは、高い「統率ポイント」を持っていたり、有益な能力を備えていたりするのです。
また「意志力」の下には、黒地の手のマークに白文字で数字が書かれています(アラゴルンは3、ボロミア1、ギムリ2)。この数字は「直接影響力」と言います。ここで8頁のガンダルフと10頁のサルマンをご覧下さい。イスタリカードはプレイヤーそのものを示しているので、少し他のキャラクターとは異なります。ご覧頂ければ分るとおり、イスタリには「意志力」がなく、10点の「直接影響力」のみを持っています。
そして「自分の影響下に治める」には、「意志力」と同じ点数の「影響力」を消費しなければなりません。つまり、10点の「直接影響力」を持つガンダルフは、「意志力」6のギムリと4のボロミアを同時に(意志力合計は10)影響下におくことができますが、アラゴルンとボロミア(意志力合計13)の組み合わせは不可なのです。このように、キャラクターが他のキャラクターを影響下に置く事を「従者」にする、と言います。「従者」が、更に「従者」を持つ事はできませんのでご注意ください。
このように「影響力」と「意志力」、「統率ポイント」の関係から、どのキャラを影響下に置くか? という駆け引きが生まれるのです。しかしここで、イスタリ以外も「直接影響力」を持っていることに注目して下さい。ガンダルフが(影響力を9点使用して)アラゴルン(意志力9)を影響下に置き、アラゴルンは(影響力を3点使用して)アルウェン(意志力3)を影響下に置く、ということが可能なのです。この場合、ガンダルフのプレイヤーは、2人の「統率ポイント」を合計した4点が得られるのです。
2002.3.26追記
先にアップした文章に誤りがありました。あるキャラクターの「従者」であるキャラクターは、他のキャラクターを「従者」にできないのでした。つまり、ガンダルフ→アラゴルンや、アラゴルン→アルウェンは可能なのですが、ガンダルフ→アラゴルン→アルウェンという風に3段重ねに「従者」を持つことは不可能なのです。
従って上のセンテンスを削除し、次の文と差し替えます。また、その上のセンテンスにも「従者」の説明を追加しました。大変失礼致しました。
さて、イスタリには10点の「直接影響力」があり、これで他のキャラクターを影響下に置く(=「従者」にする)ことは、理解して頂けたことと思います。しかしイスタリの影響力は、それだけに留まりません。イスタリは先に挙げた10点の他に、20点の「総合影響力」を持っており、合計30点もの影響力を行使できるのです。この20点は、イスタリのカードが場に出ていない時にも使用可能という特徴を持っています。
また「総合影響力」で影響下に置かれたキャラクターは、「従者」ではないので、別のキャラクターに対して自分の直接影響力を行使することができます。これを上手く使えば、効率良く「統率ポイント」を稼ぐことができます。例えば、ガンダルフが「直接影響力」でアラゴルンを従者にすると、得られる「統率ポイントは3点だけですが、ガンダルフが「総合影響力」でアラゴルンを影響下に置き(「従者」にはならない)、アラゴルン(直接影響力3)がアルウェン(意志力3)を従者にすれば、4点の「統率ポイント」が得られるのです。
次に「アイテムを影響下に置く」方法を説明しましょう。まあ感覚的に想像はつくでしょうが、自分の影響下のキャラクターがアイテムカードを所持すれば良いのです。そのためには、アイテムがある場所に赴き、障害(闇の勢力や厳しい自然現象、つまりハザードのことです)を排除しなければなりません。テキストの12〜13頁の「The One Ring」「ローハンの大盾」「アセラス」をご覧下さい。それぞれの統率ポイントは順に6、2、0となっていますが、これはそれぞれのアイテムの重要度を示しています。当然ながら統率ポイントの大きいアイテムを入手するには、大きな障害を排除しなければならないのです。アイテムは、単に統率ポイントを稼ぐ以外にも、様々な恩恵をキャラクターに与えてくれます(武器や防具といったアイテムなら戦闘時に有利な修正が付く、など)。統率ポイントが0のアイテムも、直接勝利に結びつく物ではありませんが、所持していればプレイ中に様々な役に立つ能力が得られるのです。
ただし、アイテムを大量に所持することは、そのキャラクターに危機をもたらします。原作で一つの指輪を手にしたものは、心の堕落という試練に晒されていたことを思い出して下さい。このゲームでは、一つの指輪に限らず、多くのアイテムに堕落への危機がセットになっています。12頁の「The One Ring」「アセラス」カードの右下の数字にご注目下さい。この数字は「堕落ポイント」と言い、この数字が大きい程、所持しているキャラクターは堕落しやすいのです。「アセラス」の1点に比べて「The One Ring」の6点は際立っています。これは、「The One Ring」がいかに恐ろしいアイテムか、ということを示しています。
キャラクターは時折「堕落チェック」という判定を要求されることがあります。サイコロを2つ振った合計値が、所有している「堕落ポイント」の合計より小さければ…、お察しのとおり堕落してしまうのです。もちろんその場合、統率ポイントは得られなくなります。
8〜9頁のキャラクターカードの右下をご覧下さい。一部のキャラクターには+4(Frodo)、-1(ボロミア)といった数字が書かれています。これは、「堕落チェック」への修正値です。Frodoは堕落チェックに失敗しにくく、ボロミアはその逆という訳です。原作を反映して、ホビットには有利な修正がついています。
9頁の「大鷲」「木の葉髪」「トム・ボンバディル」、11頁の「ゴクリ」をご覧ください。これらは、一見キャラクターカードに見えるかも知れませんが、実際はリソースカードに分類されます。これらのリソースを影響下に納める際には「影響力」を必要としません。そのためキャラクターよりも手軽に統率ポイントを稼げるのですが、能力的に制限があったり、影響下に納めるために判定が必要だったりします。
前にハザードカードの統率ポイントを稼ぐためには「自分の影響下にあるキャラクターが、闇の生物を打ち倒す」必要がある、と書きましたが、その方法をご説明しましょう。
11頁の「シェロブ」カードの左下に「18/9」と書いてあるのがお分かりでしょうか? 左側の数字は「武勇」(強さ)で、右側は「身体」(死ににくさ)を表しています。この「武勇」と「身体」はキャラクターにもあることにご注目下さい。
「闇の生物を打ち倒」そうとするキャラクターは、サイコロを2つ振った合計値に自分の「武勇」を加え、その数値が、ハザードの「武勇」(「シェロブ」なら18、「オークの見張り部隊」なら9)を上回っていなくてはなりません。8〜9頁を見ていただければお分かりのとおり、大抵のキャラクターの「武勇」は1〜6程度です。シェロブ(武勇18)を倒すには、サイコロ+「武勇」で19以上を出さなくてはならず、アイテムなどのリソースでキャラクーの武勇を上昇させることが必須な、強力な敵であることがお分かりのことでしょう。
「武勇」で敵を上回ったとしても、敵を殺せるとは限りません。もういちどサイコロを2つ振り、合計値が「身体」を上回った場合のみ、その敵は死亡し、「統率ポイント」がもらえるのです。11頁をご覧下さい。「シェロブ」の「身体」は9もあるので、非常に殺しにくくなっています。また「オークの見張り部隊」には「身体」がありません。これは「身体」チェックなしで死亡が確定するということを意味しています。
ここで、キャラクターにも「身体」があることを思い出して下さい。 「武勇」のチェックで敵を上回れなければ、キャラクターの側が「身体」チェックを行い、サイコロ目によっては死ぬ事があるのです。そのため、プレイヤーは戦いに対して、非常に慎重であることが要求されます。
実は、このゲームに勝利する条件は、「統率ポイント」を集めるだけではありません。そう、「一つの指輪」を滅びの山に投げ込めば良いのです。もちろん、それには困難が付きまといますが、これこそ究極の勝利法です。
以上が、(はしょっていますが)主だったカードの説明です。プレイヤーは上に挙げた勝利条件を目指して、リソースを選抜し、また他のプレイヤーを邪魔するためにハザードを練り、合計60枚程度のカードを集めた「デッキ」を作成して、これを持ち寄ってプレイするのです。多彩なカードや戦略、プレイヤー同士の読み合いが、複雑な駆け引きを展開します。ルールが複雑だと良くいわれる(実際、そういう面はあります)ゲームですが、それだけの楽しみはきっと得られるでしょう。
MECCG英語版を発売していたI.C.E.社は倒産しており、日本語版も最近店頭で見かける事はほとんど無くなっています。が、英語版の在庫は未だ流通しており、一部ショップで購入することは可能です。英語ですので「読みやすい」などと言うつもりはありませんが、ゲーム中で使われている単語や構文は限られているので、「なんとかなる」レベルではないかと…思います。
MECCGを購入できるオンラインショップを以下にご紹介します。
重要な注)以下の紹介は、「こういう店がある」というだけのものです。「この店がベストだ」と言うつもりはありませんし、当サイトが経営やサービスの内容を保証するものではありません。問い合わせ、注文、もしトラブルがあった際の対応などは、全て個人の責任で行ってください。
Potomac Distribution(英語)
CARDHAUS(日本語可)
現在、『指輪物語』をテーマにしたカードゲームには、ここで説明したMiddle Earthシリーズと、映画版を基本としたLord of the Ringsシリーズがありますので、混乱されないようお気をつけ下さい。
Middle Earthシリーズは基本セットの他に、追加カード集が色々と発売されています。その内容についてはここをご参照下さい。
また、MECCGについては、より詳しい解説サイトなどがありますのでリンクの方をご参照の程を。