ボクシング・ヘレナ
Boxing Helena
監督:ジェニファー・リンチ アメリカ1993年
 CAST ジュリアン・サンズ:ニック  シェリリン・フェン:ヘレナ  
 ニックは優秀な外科医であるが幼い頃母から受けたトラウマから性格はゆがんでいる。 母が亡くなりその豪邸に住むことにしたニックはかつて付き合ったことのあるヘレナを見かけ動揺する。 ヘレナから手痛い目にあっているのだがニックは彼女を忘れられずストーカー的な思いは募っていく。 ヘレナに近づく目的で豪勢なパーティを開き、忘れていったバックを口実に彼女を呼び寄せて一方的な愛を告げる。 自由奔放なヘレナは軟弱で自惚れがつよいニックなど眼中になく怒って帰ろうとした時悲劇が起こる。 ニックの目の前でヘレナが轢き逃げされた。 ニックは自宅で両足切断の手術を施すとヘレナを監禁して献身的な愛を捧げようとする。 当然、拒絶し強硬な態度をとるヘレナを持て余したニックはとうとう彼女から両腕をも奪ってしまう・・・。
  
作品ガイド
 20世紀のワースト映画の一つに数えられようかという「ボクシング・ヘレナ」。 「ひどい」「ひどすぎる」など散々な評価。 ジュリアン・サンズもこの映画以降主演作が心なしか減ってしまった。 何故ここまで悪く言われるのか、それは常にマイナスの先入観を持って見られる映画だから。 その理由はいくつかあげられるが、第一にキム・ベイシンガー、マドンナがそのショッキングな内容から出演を断り、キム・ベイシンガーにいたっては降板をめぐって訴訟を起こされ破産しかけるほど莫大な慰謝料を請求されてしまったということ。 この話題は必ずセットで語られ、この映画の心証を著しく悪くしている。 しかも作品は超豪華主義、家も車も調度品もピカピカでキムからぶん取ったお金であつらえたなどというオヒレがついてますます反感を煽っている。 第二に監督がデビッド・リンチの娘だったということ。 時期的に「ツイン・ピークス」で盛り上がっていた頃だけに奇才の令嬢として鳴り物入りで監督デビューを飾ったわけだが、本来ならば主題からしてもこの手の映画はひっそりと上映されひっそりと語られるのがお似合いのはず。 それがスキャンダラスな抜群の話題性と「箱詰めへレナ」というストレートなタイトルをひっさげ、猟奇さを前面に出し直球勝負してしまった。 結果、想像以上に倫理観の強い米国では拒否反応が激しく、作品も多大な期待に沿える出来ではなかったため、いわくつきのタイトルを聞いただけで「おぞましい」映画と見なされるようになってしまったような気がする。 しかしながら残酷シーンは皆無に等しく映像的には美しいのだが。
私的ジュリアン・サンズ ガイド
 「ボクシング・ヘレナ」はジュリアンが出演した「眺めのいい部屋」のアンチ・テーゼなのか? ニックは「眺め…」のジョージ・エマソンが「女性というものを分かっていない、女性を美術品や所有物のようにしか愛せない」人物と批判したシシル・バイスを痛烈にデフォルメした人物のように思える。 ニックはヘレナを女神のように崇め監禁してからもキスさえできずにいる。 女性の気持ちも女性をどう愛していいのかも分からず、ヘレナの象徴として登場するミロのビーナスの如く所有し愛でることで満足してしまっているのだ。 作中では「眺め…」と同じ曲が使われたりもしていて、ジョージを演じたジュリアンにニックをやらせてしまうジェニファー・リンチはかなり皮肉屋?! こんなところがまたまたこの作品のアンチ派を増やしているかも。
 しかし私は敢えて言おう! 決して出来のいい作品ではないが、そこまでひどい作品でもないと。 確かに独りよがりでプライドばかり高い前半のニックは見ているのも嫌になるほど気色が悪くて情けない。 このためジュリアン・サンズ(の演技)はひどいと言われたりするのだが(ひどいのは劇中のニックで演技者としては上出来なのでは?)、恐らくアンチ派はこれに耐えられず途中で見るのを放棄してしまっているのではないか。 ところがヘレナを手中に収めるとニックは俄然変わるのだ。 性格は相変わらずなのだが、髪の分け方一つ変わっただけでジュリアンの魅力倍増。 か弱いヒロインとは言い難い強烈なヘレナの性格も判明してくる。 ニックを覗き見、性的欠陥を嘲り、なじるヘレナ。 後々、これが2人の絆を結びつけることになるのだが、2人の蜜月は美しく、短い。 このシーンのジュリアン・サンズを見るだけでも私は満足だったりするのだ。
 だが超現実的なことを言ってしまえば医師とはいえ手足を失ったヘレナの世話は簡単ではないしきれい事だけでは済まないだろう。 それで話に収拾をつけようとしたのかジェニファー・リンチはオチをつけた。 私はこれで救われた思いがしたのだが、このオチは一番やってはいけないことだったらしい。 最後まで見た人を更に怒らせてしまう「ボクシング・ヘレナ」。 ソフトポルノもどきのシーンといい、道義に外れるテーマといい、誰にでも勧められる映画ではないし、絶対受けつけられないという人がいるのも事実だろう。 しかし評価は実際に見てから下して欲しいと切に願う。  

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