肥満と遺伝(週刊やさしいダイエット第14号より)


■はじめに

以前「食生活チェック」で、「私は少し食べただけで太ってしまう」「ダイエットしているのに全然痩せない」と言うのは「クセ」や「思い込み」によるものだ、とお話しました。

しかし実際には、生まれつき太りやすい人や、その逆に「痩せの大食い」と言われるような人もいます。今日は肥満と遺伝の関係について勉強してみましょう。

■肥満は遺伝するのか

人は何故肥満になるのでしょうか?これには勿論食べ過ぎや運動不足が挙げられますが、他にも原因の一つとして「遺伝」があります。ただしこれは「肥満の体型」が遺伝する、と言うより「体脂肪を貯える能力」若しくは「エネルギーを消費しないでおく能力」が遺伝するのです。つまり、遺伝に食べ過ぎや運動不足と言った「環境」が加わって、結果として肥満が生じます。

■肥満に関係する遺伝子(1)

それでは肥満に関係する代表的な2つの遺伝子についてお話しましょう。ここでは遺伝子=遺伝のもと、と簡単に考えていただければと思います。

まずはob/obマウスと呼ばれる遺伝性肥満マウスから発見されたob遺伝子と言う肥満遺伝子です。この肥満遺伝子は、脂肪組織(体脂肪を貯えておく場所)に存在し、食欲を抑制する働きをもつレプチンと言う蛋白質を作るものです。ob/obマウスではこの蛋白質であるレプチンの構造に変異が見られます。そのため食欲を抑制できずに食べ過ぎになることが、肥満の原因であるとみられています。

db/dbマウスと呼ばれる糖尿病マウスやfa/faラットと呼ばれる肥満ラットでもレプチンの働くメカニズムに異常があることが明らかとなっています。

人間でも肥満とレプチンの関係についての研究が進められています。

■肥満に関係する遺伝子(2)

次にベータ3-AR(ベータ3アドレナリン受容体)遺伝子の異常があります。ベータ3-ARと言うのは先ほどもお話した脂肪組織に存在します。

脂肪組織のほとんどは、いわゆる体脂肪を貯えておく場としての「白色脂肪組織」なのですが、ごくわずかに(成人で40グラム程度)過剰なエネルギーを熱として放散する働きを持つ「褐色脂肪組織」と言うものもあります。ベータ3-ARは白色脂肪組織の脂肪分解と、褐色脂肪組織での熱産生をそれぞれ促進させます。

しかしこの遺伝子に異常があると、ベータ3-ARがうまく働きません。この異常はほとんどの人種に見られますが、特に日本人に多く、世界で2番目だと言われています。

■どの程度遺伝が関与するか

さて、それでは一体どの程度、肥満に遺伝が関係しているのでしょうか?ある研究では以下の様なデータが報告されています。

◯両親とも正常体重   →子供の肥満発生率は10%
◯両親のうち一方が肥満 →     (同上)50%
◯両親とも肥満     →     (同上)80%
これだけ見ると、肥満には遺伝が大きく関係しているように感じられますが、実は次のようなことも言われています。

◯子供が養子であっても、実子と同じような現象が見られる
◯夫婦間でも一方が肥満していると配偶者も肥満する
◯家族が肥満していると、飼い犬まで肥満する
つまり、遺伝より寧ろ同じ生活習慣が、その人の体型に関与しているということなのです。

以上から一般に肥満の原因は「遺伝3割、環境7割」と言われています。

■最後に

今まで「体質だから痩せられない」とあきらめていた方も少なくないでしょう。確かに「遺伝」はどうにもすることが出来ません。しかし「環境」はちょっとした工夫で変えていくことが出来ます(勿論変えられない環境もありますが)。

その一方で「努力が足りないから痩せられない」と自分を責めていた方もいらっしゃるでしょう。そんな時は「痩せられないのは努力云々の所為ばかりではない」と少し肩の荷を軽くしてみませんか?