急激な減量とリバウンド(週刊やさしいダイエット第25号より)


■はじめに

この半年間、私は皆さんに健康なダイエットとは何かをお話しし、またそうでないダイエットの危険性についてもご説明してきました。しかし、それにも関わらず「来月までに8キロ痩せたいのですが、どうしたらいいですか?」「現在自己流で1日300キロカロリーの食事で頑張っています。」と言った相談がたえません。

先日私の運営しているメーリングリスト(dml)でこの話題を取り上げ、「皆さんだったらそのような質問にどう答えますか?」と質問したところ、「そう言う人には、何を言っても無駄。痛い目に遭わなきゃわからないんですよ」と言う答えが多く返ってきました。確かにそうかもしれません。しかし、それでも私は皆さんに「痛い目にあって、取り返しの付かないことになる」前に、危険なダイエットを止めていただきたいと思うのです。

今日は有名なあるダイエットの実験についてお話しします。このお話が、皆さんの「危険なダイエット」のストッパーになることを祈ります。

■ミネソタの実験

ダイエットに関する実験について述べた本に「飢餓の生物学」と言うのがあります。これは第2次世界大戦中、アンセル・キーズと言う学者が男性のボランティアを募って行ったいわゆる「ミネソタの実験」と呼ばれる有名な実験です。

この実験は1年以上にわたって行われました。半年の「半飢餓期間」と呼ばれるダイエット期間には、男性の通常の食事の半分にあたる約1570キロカロリーの食事制限と運動が課せられました。被験者(実験の参加者)のもともとの身長と体重は平均174.4cm・69kgでBMIは22.7のほぼ標準体重でした。

そして半年のダイエットの間に彼らは平均約16.6kg(体重の約24%)の減量を行い、実験終了後の平均体重は52.4kg、BMIは17.2となりました。つまり月平均2.8kgの減量を行ったのです。これは体重の点から考えれば明らかに標準体重より10%以上下回った「痩せすぎ」ですし、ダイエットのペースの点から考えても月に2kg以上ですから早すぎます。

このダイエットの後、彼らにはどんな変化が起こったでしょう?

■リバウンドの嵐

彼らを襲ったのはリバウンドの嵐でした。具体的には

*お腹がいっぱいで張り裂けそうなのに、食べることを止められなかった
*何をさておいても、食べ物のことばかり考えていた
*次の食事までの時間を数えるようになった
*1日の多くの時間を食べることに費やすようになった
*1日に何と平均5200kcalの食べ物を食べるようになった
*昼食を3回続けて食べることもあった
*食事のマナーに無頓着になり、皿を舐めるようになった

この他に無気力や落ち込みが見られ、攻撃性も強くなりました。

リバウンドの嵐は33週目(約7ヶ月後)には多くの人には改善が見られましたが、約3割の人はその後も食べ過ぎが続きました。

■ミネソタの実験のあらわすところ

この実験のあらわすところは何でしょう?それは人間は急激で過酷な減量を行うと必ずと言っていいほどリバウンドを起こすということです。

人間にとってカロリーを摂取するということは呼吸をするようなものです。人間は自力で呼吸を止めて死ぬことは出来ないと言われますが、それと同じようにカロリーを制限するのにも限界があるのです。その限界を超えれば、意志の力を超えて体は食べ物を要求するようになります。これは他ならぬ体の「生きたい」と言う防衛本能なのです。

私たちはこのような体のメカニズムを大変疎ましく思います。そして「食欲なんて無くなればいい」「胃袋なんて取ってしまいたい」と考え、挙げ句の果てには食欲を抑えることの出来ない自分の体を「なんてダメな人間なのだ」と責め立てます。

しかし、それは本当に「ダメな体」「節操のない胃袋」の所為なのでしょうか?いいえ、違います。人間の体はそもそも意志の力で何とでも出来る‥と言うものではないのです。もし意志の力で「人体」と言う「自然」を思うがままにデザインできると思っているのであれば、それは「不遜」に他なりません。私たちは改めて「自然」に対し、謙虚にならなければいけないのです。

■最後に

このようなお話をしてもやはり「でも友人は2ヶ月で10kgの減量に成功しました。だから平気でしょう?」と尋ねる人がいることでしょう。しかし、これは「友人は若い時からヘビースモーカーですが、今でも元気です。だから私もそれくら吸っても平気でしょう?」と言っているようなもの。お友達が健康を害されなかったからと言って自分もそうなるという保証も、そのお友達が今後10年、20年先にも健康を害さないと言う保証もないのです。

体重を減らすのは努力かもしれません。しかし、体重を減らしすぎないようにするのもまた努力です。少しでも早く減らしたい、もっと減らしたい、と思う気持ちをぐっとこらえて、体のためにダイエットをほどほどにすること。これもダイエットにとっては、とても大切なことなのです。