食欲のコントロール法(週刊やさしいダイエット第42号より)
■はじめに
先週は食欲の「大脳による調節」すなわち認知調節系について取り上げ、これにズレが生じると痩せや肥満をもたらすことをお話ししました。
認知調節系は、五感から入った情報が大脳の中で処理され、最終的に食欲に影響すると言うものですが、それではこのメカニズムを逆手にとって「五感から特殊な情報を入れることで食欲をコントロールする」ことは出来ないでしょうか。
実はそのような方法は既に肥満治療の現場で取り入れられているのです。
■「目で感じる」体重
その一つに「グラフ化体重日記」があります。これは起きた直後と寝る直前に、それぞれパジャマ姿で体重をはかり、グラフ化すると言うものです。さらに同時に食事や運動の記録をつけるとなお効果的です。こうすることによって、私たちは体重の変化を「目で感じる」ようになります。
ただしグラフや記録は付けっぱなしではいけません。後からそれを見直して、反省することが肝心です。例えばそのグラフを見て、ある人は「ああ、暴飲暴食をしてすぐ寝ると体重は増えるのだな」と気づき、またある人は「残り物を食べないようにしていると体重は減ってくるな」と気づくかもしれません。
これらのダイエッター自身の「気づき」はとても大切なもので、どんなダイエット指導者の言葉(「寝る前に暴飲暴食をしてはダメ」「残り物をもったいと食べてはダメ」等)よりも説得力があります。また時には「何かをつかんだ!」と言う感動を覚えるかもしれません。
体重のグラフは一般に、ダイエットがうまくいっている人では「きれいな波形」、そうでない人では「汚い波形」になると言われます。
・ダイエットのうまくいっている人の「きれいな波形」
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・ダイエットのうまくいっていない人の「汚い波形」
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しかし、「汚い波形」だった人も自分の食行動の問題点に気付き、改善することで「きれいな波形」に近づいていきます。つまり、ダイエットがうまくいっているかどうかも「目で感じる」ことが出来るのです。
■「口で感じる」満腹
またもう一つの食欲コントロール法として「咀嚼(そしゃく)法」があります。簡単に言うと「良く噛む方法」です。
昔から「良く噛むことはダイエットに良い」と言われていますが、それは何故だと思いますか?早食いを防ぐから?素材の本来の味を味わうことができるから?勿論そのような理由もあるのですが、最近になって「噛むことによって食欲を抑制する物質が出てくる」と言うことがわかりました。
その物質は「神経ヒスタミン」と呼ばれます。ものを噛むと口の中や周囲の神経が刺激されますが、その刺激が脳に伝わると「神経ヒスタミン」が出てきます。この物質は食欲の中枢がある「視床下部」に作用して食欲を抑制します。つまり「偽の満腹感」を作り出すのです。この他にも体のあちこちに作用して、脂肪の分解を亢進させる働きがあります。
では「咀嚼法」を実践するにはどうすれば良いのでしょう?それにはまず「私は○回噛むことにしよう」と決めることです。人によって20回でも30回でも良いでしょう。その代わり一度「20回」と決めたら必ずそれを守らなければいけません。19回でもダメなら21回でもダメなのです。
何故このようにきっちり回数を決めるかと言うと、ダイエットがうまくいかない人の中には「どんぶり勘定」が習慣付いてしまっている人が多いからです。「いや、そんなことはない。私は自慢ではないが物事に細かい方だ」と言う人もいるかもしれませんが、そう言う人でも案外、ある特定の事柄には細かいけれど、その他のことはいい加減であったりするものです。この習慣を改善するためにも「咀嚼法」は役に立ちます。
そして「○回噛む」ことに決めたら、一口ごとにその回数を守れたか、○×をつけていきましょう。○×をつける期間はどのくらいでも構いません。1ヶ月は続けようと決めたり、良く噛むことが習慣づいたと思ったら止めてもいいでしょう。
そうしているうちに皆さんには「良く噛む」習慣がつき、「神経ヒスタミン」の作用で食事の度に食欲が抑えられ、さらに食べ物の微妙な味がわかるようになって「味付けの濃いものから薄いものへ」「油っこいものからあっさりしたものへ」好みが変わるかもしれません。
■おわりに
3回にわたって食欲のメカニズムについてお話ししてきました。今まで「食欲とどう折り合いを付けて良いのだろう」と悩んでいた方にも、食欲の正体がわかり、何も怖がるものではないことに気づいて頂けたと思います。特に今回のご紹介した2つの方法は、鋼(はがね)のような意志も、特別な道具も要りません(実際、必要なのは紙と鉛筆だけです)。
ただし、これらの方法が全ての人に有効とは限りません。例えば1日の摂取カロリーを1,000kcal以下に抑えているような人は上記の方法を試すより体に必要なカロリーをしっかりとることの方が効果的でしょうし、病気や薬の副作用で食欲が亢進している人はかかりつけの医師と相談することが先決でしょう。
いずれにせよ、痩せたい気持ちがある限り、食欲と折り合いを付けることは避けて通れないものです。皆さんがそれぞれ自分にあった方法を見つけることができるよう、祈ります。