フェニルプロパノールアミン(PPA)(週刊やさしいダイエット第45号より)
■はじめに
前回の「エフェドリン(麻黄)」と並び、個人輸入される代表的な痩せ薬として「フェニルプロパノールアミン(以下、PPAと略す)」が挙げられます。
PPAは気道や鼻の粘膜に作用する薬で‥と言うと、「何だかどこかで聞いた説明だなぁ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それもそのはず。この薬は前回お話ししたエフェドリンによく似た薬なので、作用も似ているのです。この作用を利用して、日本では市販されたり病院で使われたりする鼻炎や風邪の薬に配合されています。
一方アメリカでは、上記の用途の他に食欲抑制剤としても使われ、かつては処方箋無しにどこでも手に入れることが出来ました。そしてアメリカで最もメジャーな痩せ薬として、若い女性を中心に多くの人に使われるようになったのです。
■アメリカの研究より
しかしPPAの使用者の増加と共に、PPAが関与していると思われる事故(高血圧・不整脈と言った循環器の障害、幻覚・不眠と言った精神の障害等。中でもとりわけ脳出血)の報告も増加しました。この為、1994年から99年にかけ、大規模な疫学調査が行われたのです。
この調査は脳出血を起こした患者さん702人と、健康な1,376人を比較対照したものです。これによれば、PPAを含んだ食欲抑制剤を使った女性は、使わなかった女性に比べ、16.58倍も、脳出血を起こしやすかったのだそうです。この結果を受けて、FDA(前回も出てきましたが、日本で言うところの厚生省)は、「PPAが脳出血のリスクを増大させる」として、昨年の11月、製薬企業に対し、PPAを含む薬のアメリカ国内における自主的な販売中止を要請しました。
■日本での対応
最初にお話ししたように、PPAは日本でも鼻炎や風邪の薬に含まれています。この為、厚生労働省は日本国内で売られているPPAを含む薬について検討しました。その結果、「日本ではPPAを含む薬は食欲抑制剤として承認されておらず、また食欲抑制の目的で使用されることもない」こと、また「アメリカと日本ではPPAの使用量が違う(アメリカは1日あたり150mg、日本では90〜100mg)」ことから、PPAを含む薬を直ちに販売中止とする必要はないと判断しました。
その上で、PPAを含む市販の薬については次のような注意を促しています。
ア.高血圧、心臓病、甲状腺機能障害の診断を受けた人は服用しないこと
イ.脳出血を起こしたことがある人は服用しないこと
ウ.過量服用しないこと
エ.モノアミン酸化酵素阻害剤(塩酸セレギリン等)で治療を受けている人は医師又は薬剤師に相談すること
オ.まれに重篤な症状として脳出血が起こるおそれがあること
■最後に
本論とは外れますが、薬について考えるとき、必ずと言って良いほど問題になるのは「依存」です。ダイエットのために薬を使っている人たちは、この問題に触れると「薬に頼っているだなんてとんでもない!私たちは食事や運動の習慣を改善した上で、あくまで補助的に薬を使っているだけよ」と口を揃えて言うことでしょう。そしてさらに、こう付け加えるかもしれません。「痩せたら、勿論薬は止めるつもりよ」と。
しかし、例え食事療法や運動療法を併用していたとしても、「(その後に来るリバウンド等が怖くて)今すぐには薬を止められない」と思っているならば、それも十分「依存」です。そして「今」薬を止められない人が、「数ヶ月先」には止められるようになっている‥と言う保証はどこにも無いのです。
今はインターネットで簡単に個人輸入が出来るようになりました。しかし「始めるのは簡単・止めるのは大変」と言うことを心に留め、薬物の使用には慎重になっていただきたいと思います。