メチルフェニデート(MPH) (週刊やさしいダイエット第46号より)


■はじめに

これまで数回に渡って、日本で認可されていない食欲抑制剤についてお話ししてきました。今日はその締めくくりとしてメチルフェニデート(以下、MPHと略す)について取り上げたいと思います。

MPHは脳神経に作用する薬で、頭を冴えさせる(覚醒させる)働きがあるため、日本では主に精神科で使われています。

一方この薬には食欲を抑制する作用もあるため、アメリカではダイエットサプリメントに含まれています。

■MPHの副作用

このようにMPHは有益な薬ですが、一方で次のような副作用があります。

・過敏症(発疹など)
・眼(かすみ目など)
・精神神経(頭痛、けいれん、薬がきれた後の倦怠感など)
・消化器(食欲不振、便秘、吐き気など)
・循環器(動悸、血圧が上がるなど)
・血液(貧血など)
・肝臓(黄疸など)
・その他(脱毛、性欲減退など)

また時に血管を詰まらせ、脳卒中や狭心症の原因となることもあります。しかしMPHはこの他にも怖ろしい副作用を引き起こすのです。それは薬物依存(いわゆる薬物中毒)です。

■MPHの依存症

勘がいい方は、冒頭の「MPHは‥覚醒させる働きがある」と言う部分を読んでピンと来たかもしれませんが、MPHは覚醒剤と大変作用が似ています。このためMPHの依存症は覚醒剤のそれと同じ病気として扱われています。

ただし、日本の法律で「アンフェタミン」と「メタンフェタミン」と言う薬物のみが覚醒剤取締法の対象になっているため、MPHは覚醒剤ではありません。しかし返ってこれを良いことに、MPHは「合法覚醒剤」と呼ばれ乱用される(不正に使われる)のです。

MPHを使うと他の覚醒剤と同じように、心臓がドキドキして気持ちが高ぶってきます。そして自分は何でも出来るのだと言う自信に満たされます。食欲に関して言えば、食べなくてもピンピンしていられる感じがします。

しかし薬がきれるとそのような感覚は消えていきます。そればかりか舞い上がった分、どん底へ突き落とされた感じがします。気持ちの高ぶりは落ち込みに、自信は不安と混乱に、そして食欲は嵐のように襲ってきます。そしてこの辛さから逃れるために、再び薬物に手を出すことになるのです。

一方、続けて飲んでいるうちに薬物には耐性が出来て、いつもの量では効き目が感じられなくなってきます。この為1錠が2錠、2錠が4錠‥と薬が増えていくのです。そして精神科の病気を装って医者から薬物を処方してもらおうとしたり、時には病院に盗みに入ったりして薬物を手に入れようとします。

そうやって慢性的に乱用していると、やがて幻覚、幻聴、妄想、不安、不眠、鬱状態など精神分裂病のような症状が現れるようになります。更に薬物を使っていないときでもその時と同じ、もしくは逆に薬がきれた時と同じような感覚に襲われることもあります。これらの症状は薬物の乱用をやめればすぐに無くなることもありますが、乱用をやめてからも長い間残ることがあります。

もし貴方が「一度MPHを試してみたい」と思うのであれば、それは決して「一度」では終わらないのです。

■おわりに

薬物は、正式名称の他にもしばしば複数の呼び名があるため(例えば覚醒剤がエス、スピードと呼ばれるように)、そうとは知らずに使われることがあります。例えばMPHも乱用者の間では「ビタミンR」と呼ばれているので、友人に勧められるまま、痩せるビタミンだと思って飲んでしまうことがあるかもしれません。

今は「外国で肥満治療に使われているらしい」「女優の○○もこれで痩せたようだ」と言っては、成分もわからないような薬物・サプリメントが出回っているくらいですから、自分が飲んでいるものは一体何なのか、安全性はどうなのか、知らない人も少なくないのでしょう。

しかし、これらの影響は全て貴方自身に、若しくはこれから赤ちゃんが欲しいと思っている人であれば貴方の赤ちゃんに跳ね返ってくるのです。「知らなかった」では済みません。どうか薬物やサプリメントを利用する前に、もう一度それらの恐ろしさについて考えていただければと思います。