便秘とダイエット (週刊やさしいダイエット第48号より)
■はじめに
最近「便秘のために飲んだら脂肪も減りました」と言う薬のCMが流れています。これはあたかも「便秘を解消すると脂肪が減る」と言っているかのようですが、このCMが放映される前から便秘とダイエットに関する特集は数多くのメディアで取り上げられており、私の相談室にも沢山のメールを頂いています。
今日はそれらの質問にお答えする意味も込めて、便秘とダイエットについてお話ししたいと思います。
■便秘とは?
そもそも「便秘」とは何でしょう?メールを下さる方の中には「ご近所さん、若しくはエステや薬局の人に『お通じが毎日無いのは便秘だ』と言われたのですが‥」と心配される方が沢山いらっしゃいます。
しかし、実は便秘にはハッキリした定義はないのです。強いて言えば「お通じが4日以上無い状態」を目安にしますが、少なくとも「毎日お通じがないのは便秘」と言うことではありません。
■お通じのメカニズム
それでは「便秘」について良く知るために、お通じのメカニズムについて勉強しましょう。
口から入った食べ物は食道を通って、胃でこなれ、小腸で栄養を吸収され、そして大腸にたどり着きます。ここまでにかかる時間は約2〜6時間ですが、ここから更に18時間前後かけて大腸を通過し、水分を吸収されていくのです。
大腸は全長約1.6mで、大きく分けて入り口から盲腸(もうちょう)、結腸(けっちょう)、直腸(ちょくちょう)と言う3つの部分があります。
大腸に入ってきた食べ物は水分の吸収が終わるとそのまま出ていってしまうのではなく、結腸の最後の部分(直腸の直前)で一度止まります。何故ならその部分で大腸の壁がきゅっと締まっているからです。ですから通常直腸には何も入っていません。
しかし食事を摂ると(特に朝食後)、そこに止まっていたものを直腸に送り出そうと腸が動き出します。そして直腸に食べ物が入ってくると、普段空っぽだった直腸の壁が引き延ばされ、その情報(「引き延ばされたよ!」と言う情報)が脳に伝えられると便意が起きるのです。この為、お通じは朝食後にあることが多いのです。
便意が起きると反射的に直腸がきゅっと締まったり、括約筋(かつやくきん)と呼ばれる肛門の周りの筋肉が緩んだりして、お通じを出そうとします。この反射を「排便反射」と呼びます。
しかし、これだけですと本人の意志に関わらずお通じが出てしまうことになります。そうならないよう、括約筋には意志によって締められるメカニズムもあるのです。またお腹にぐっと力を入れ、腹圧(ふくあつ)を高めることでスムーズなお通じが起こります。
■便秘の原因
以上のメカニズムを念頭に置くと、便秘の原因には次の3つが考えられます。
(1)直腸へ送り出すまでの問題
わかりやすいのは、癌などが出来て通り道(腸の中)が狭くなってしまっているような場合です。この他にも精神的な原因から通り道が狭くなる病気(過敏性腸症候群)もあります。
一方、下剤を乱用すると腸の動きが悪くなり、直腸へ送り出すことが難儀になります。食物繊維の不足や、薬物・ホルモンの作用、加齢や全身的な病気でも同様のことが起こります。ダイエットで食事の量が減ると便秘になる‥と言うケースもこれにあたります。
(2)直腸に入ってから;排便反射の問題
折角直腸に送り出すことが出来ても、「痔が痛いから」「トイレに入っている時間がないから」等の理由でお通じを我慢する習慣がついてしまうと、排便反射が起こりにくくなります。また朝食を抜いたり、浣腸を頻用しても同様のことが起こります。
(3)直腸に入ってから;腹圧の問題
妊娠、加齢、また運動不足などで腹筋の力が弱まると、腹圧を高めにくく、スムーズなお通じが障害されます。
■便秘の解消法
便秘対策と言うと、一般的には適度な運動と水分・食物繊維と言われていますが、上述のように便秘の原因は様々であり、それによって解消法も違ってきます。例えば食物繊維は過敏性腸症候群ではかえって逆効果です。
もし貴方が便秘で悩んでいて、一般的に便秘に良いとされる方法を試してみても一向に改善しないときは、貴方の健康を良く知る専門家に相談されることをお勧めします。
■便秘とダイエット
相談室に寄せられるメールの中には高価な洗腸セットや宿便取りセットをすすめられ、「痩せられないのは便秘の所為でしょうか?」と悩む方が少なからずいらっしゃいます。
しかし、先ほどもお話ししましたように大腸の主な働きは「水分の吸収」。栄養の吸収は小腸までで終わってしまうので、便秘だからと言って栄養の吸収が盛んになってしまうことはありません。
また、しばしば「西洋医学に宿便と言うものは無い」と言いますが、英語の「宿便(coprostasis 若しくはfecal impaction)」は「便秘の時、腸内に詰まっている便」を指します。ですからやはり、最近よく使われる意味での宿便〜お通じがあっても腸内にこびりついている便〜は西洋医学では存在し得ないのです。
それでは、冒頭の便秘薬(防風通聖散という漢方薬ですが)は何故ダイエットに効果があるのでしょうか?それはこの薬に以前お話ししたエフェドリン(麻黄)が含まれているからです。勿論全ての便秘薬にエフェドリンが入っているわけではありません。ですから「便秘を解消すれば脂肪が減る」訳では無いのです。
■おわりに
最近「心因性の便秘」が問題になっています。これは本当は便秘ではないのに、自分が満足するだけのお通じがないために便秘だと思いこんでいる人が、下剤や浣腸を乱用したりストレスをため込んだりして、やがて本当の便秘を引き起こしてしまうものです。
下剤や浣腸の乱用は腸を傷つけます。その結果、腸が緩みきってだらんとなったり(下剤性結腸症)、腸の内壁が黒ずんだり(大腸メラノーシス)してしまうのです。
また見かけの体重を減らす為、お通じにやっきになっている人も見かけます。これは体重が減っても体脂肪が減ったことにはなりませんから、全くナンセンスです。
人間の体は良くできていて、そこそこ健康であれば、必要なときに必要な分だけ食べ、必要なときに必要な分だけ排泄します。もし貴方が自分のお通じに満足できなくても、それが病気によるものでないならば、そして生活習慣の改善を心がけているならば、「ああ、今は必要がないから出ないのだな」と気楽に構えることも必要です。
ダイエットもお通じも焦らず・あわてず。のんびりやっていきましょう。