新・食べ過ぎの原因(2)(週刊やさしいダイエット第71号より)


■オレキシンと神経ペプチドY

その昔、人間はお腹が膨れると文字通り満腹になるのだと信じられていました。そのうち食欲のメカニズムについて研究されるようになると、今度は血液中の糖やインスリンの量が関係することがわかってきました。そして更に研究が進んだことによって、前回お話ししたレプチンを始め、様々な物質が食欲に関係していることが明らかになったのです。

その一つに、「オレキシン」と「神経ペプチドY」があります。オレキシンは空腹中枢から(正確に言うと、空腹中枢にある「ブドウ糖感受性細胞」という糖のセンサーの様な細胞から)分泌される食欲促進物質で、空腹中枢が作動すると分泌されます。

つまり前回もお話しした「食欲のメカニズム」の6と7の間で働くのです。

4.ごはんを食べ終える→5.血液中の糖やインスリンが減る→6.空腹中枢に伝わる→7.空腹を感じる→0.ごはんを食べる

そして神経ペプチドY(ニューロペプチドY、またはNeuropeptide-Yとも呼ばれます)もまた、オレキシンと同じように脳細胞から分泌されて食欲を促進します。

神経ペプチドYはオレキシンが発見されるまで、「唯一の内在性(脳の中にある)摂食亢進作用物質」として有名でした。しかし、今ではオレキシンだけでなく脳の中にある複数の物質(以前お話しした神経ヒスタミンもそうです)が相互に関係しながら食欲を調節していることが分かり、二〜三の物質で食欲を説明しつくすことは到底難しくなりました。

よって今では、これらの複数の物質のバランスの乱れや、ストレスによる刺激が食べ過ぎを引き起こし、その結果肥満になるのだと言われています。

■アドレナリンβ3受容体遺伝子の変異

「受容体」や「遺伝子」という言葉が出てくると何やら難しそうですが、アドレナリンβ3受容体遺伝子とは簡単に言えば「アドレナリンと言うホルモンがちゃんと効く為に必要なもの」です(余り簡単じゃないかも?!)。

アドレナリンには色々な働きがあるのですが、このアドレナリンβ3受容体遺伝子が変異している(異常がある)と、アドレナリンの作用の一つである体脂肪の分解が妨げられてしまいます。

皆さんはテレビや雑誌で「日本人は遺伝子的に太りやすい」と言う話を聞いたことがありませんか?その話の元になっているのが、このアドレナリンβ3受容体遺伝子の変異です。アドレナリンβ3受容体遺伝子の変異が一番多いのはピマ・インディアンと言う人種ですが、日本人はそれについで多く欧米人の2〜5倍と言われます。

またアドレナリンβ3受容体遺伝子の変異は前回お話ししたレプチンの量と関係があると言われています。

■おわりに

以上、食べ過ぎの原因について最近の話題をお話しました。

レプチンにオレキシン、神経ペプチドYにアドレナリンβ3受容体遺伝子‥等と挙げていくと、人間はいかに食欲を調節する様々な物質に支配されているか驚きます。これらのどれもが現在研究中なのですが、果たして私達は全てが解明されない限り痩せられないのでしょうか?

そうではありません。確かに人間には意志の力ではどうにもならない食欲のメカニズムがありますが、その一方で「行動連鎖」をはじめ、食欲とうまく折り合いをつける知恵を持っているのです。

ですから皆さん、どうか「私は体質で痩せられないから」と諦めないで。地道な努力と、ちょっとした工夫で体質の溝を埋めていきましょう。