インスリン(インシュリン)(週刊やさしいダイエット第72号より)


■はじめに

最近「低インシュリンダイエット」が流行っているようです。私のHPにも時々このダイエットについての質問が寄せられるのですが、余りにインスリン(インシュリン)のことを知らずにこのダイエットを実践している人が多いことに驚きます。中にはインスリンをパンやご飯に含まれる「栄養素」と思っている人もいるほどです。

インスリンはダイエットを科学的に考える上で、大変重要なホルモンです。低インシュリンダイエットを実践している人もしていない人も、今日はインスリンについて勉強しましょう。

■ホルモンとは?

先ほど「インスリンは‥重要なホルモン」とお話ししましたが、そもそも「ホルモン」とは何でしょう?

人間の体は生きていくために様々な物質を分泌します。例えば食べ物を消化するためには唾液(だえき)を分泌しますし、背を伸ばすために成長ホルモンを分泌します。このうち、分泌物を作る腺(せん)から管を通って出てくるものは外分泌(がいぶんぴつ)、管を通らず血中に出てくるものを内分泌(ないぶんぴつ)と言います。

先ほどの例で言えば、唾液は唾液腺(だえきせん)で作られ唾液腺管(だえきせんかん)を通って口の中に出てくるので外分泌、成長ホルモンは脳の下垂体(かすいたい)で作られ直接血中に出されるので内分泌と言います。

そして、内分泌で出てくる分泌物をホルモンと言い、インスリンは膵臓(すいぞう)から出てくるホルモンです。ここで「あれ?でもある種の消化液は、膵臓で作られ膵管(すいかん)を通って腸の中に出てくるんじゃなかったっけ?」と思った方は物知りですね。膵臓は内分泌(インスリン等)と外分泌(消化液等)の両方を行う臓器です。

■インスリンの働き

それではインスリンはどのような働きをするのでしょう?よく知られているのは「血糖値を下げる作用」と「脂肪をため込む作用」かもしれません。しかしこの他にもインスリンには様々な働きがあります。以下に主なものを列挙しましょう。

1.筋肉への作用(糖をグリコーゲンとして蓄える、アミノ酸から筋肉を作る)
2.脂肪組織への作用(脂肪を蓄える)
3.肝臓への作用(糖をグリコーゲンとして蓄える)
4.その他の組織への作用(細胞を成長・増殖させる)

食べ物から取り入れた糖やアミノ酸と言った栄養素は、ただ血管の中を流れているだけでは、エネルギーや組織(筋肉など)の材料として利用することが出来ません。ちょうど回転寿司でお寿司がいっぱい流れているのに、レーンから取ることが出来ないのと同じです。ですから、体にも「お寿司をレーンから取って食べられるようにする」ホルモンが必要であり、それがインスリンなのです(変な例えでゴメンナサイ)。

また4番目の「細胞の成長・増殖」と言うのはイメージしにくいかもしれませんが、体の細胞は常に新しいものへ、新しいものへと生まれ変わっています。肌も、血液も、あらゆる細胞が、です。インスリンはその生まれ変わりを助けています。

最近は「脂肪をため込む悪いホルモン」としてダイエットの敵のように扱われるインスリンですが、実はこのように体を作る大切な働きもしているのです。

■インスリンの調節

次にインスリンの分泌を調節するものについて勉強しましょう。

1.栄養素(糖、アミノ酸、脂肪酸)
2.ホルモン(消化管ホルモンやその他のホルモン)
3.神経

この中で最も重要なのは、1.の栄養素、中でも糖による調節です。インスリンは空腹時でも常に少量分泌されているのですが、食事によって体内に糖が入ってくるとその分泌量は5〜10倍になります。

しかしインスリンを調節するのは糖(血糖値)だけではありません。例えば2.の消化管ホルモンですが、これは糖を点滴などで直接血中に入れたときより、食事として口から入れたときの方がインスリンの分泌が遙かに多いと言うこと等に由来します。

また3.の神経ですが、これは味覚刺激を与えると血中の糖の濃度と関係なくインスリンが上がると言うこと等に由来します。このようにインスリンは様々なものによって調節されているのです。

■おわりに

私達は、知らず知らずのうちに間違った知識を身につけてしまっていることがあります。例えば冒頭に挙げた「インスリンを栄養素だと思う」と言うのもその一つですが、その他にも「蛋白質はいくら摂っても太らない」「果物はカロリーが低い」等々、数え上げたらきりがないでしょう。

そのような間違いは、おおごとにならずに済むこともあります。しかしダイエットでは、その為に痩せられないばかりか、逆に太ったり健康を害してしまうのです。

ダイエットはそもそも医学の領域なので、難しい言葉も沢山出てきます。しかしそれらを正しく理解する努力が大切です。やさしいダイエットでは、これからも皆さんの努力を応援したいと思います。