正しい脂肪の知識(2)〜主にセルライトについて(週刊やさしいダイエット第90号より)


■はじめに

前回は体脂肪、中でも白色脂肪についてどんな細胞なのか、そして体のどんなところに付いているのか、解剖学的なことをお話しました。

今回は世の中にまかり通っている体脂肪に関する間違った知識、主にセルライトについてお話したいと思います。

なお、前回のメルマガで「人間の体には全部で60兆個の細胞があるので、うち1%が脂肪細胞と言うことになる」と書きましたが、これは「0.1%が脂肪細胞」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。

■セルライトとは?

皆さんは「セルライト」という言葉を聞いたことはありますか?エステやダイエット食品の広告を見ると、セルライトは次のように紹介されています。

セルライトとは:肥大化した脂肪の周りに老廃物や水分が溜まり、大きな塊となったもので、皮膚の表面から見るとボコボコしている。
出来やすい場所:女性のお尻や太もも
原因:血行不良や脂肪の代謝不良
対処法:セルライトは太っている人だけでなく痩せている人にも見られるので、単に体重を落としただけでは解消しにくい

これだけ読むと、セルライトとは普通の脂肪とは違う特殊な脂肪で、解消するにも特殊な方法を要するもの・・・と大抵の方は思われるでしょう。

■セルライトは存在しない

しかし、実際にセルライトと言うものは存在するのでしょうか?セルライトはヨーロッパのエステやスパで作られた言葉ですが、欧米では次のような研究が報告されています。

まずニール・ソロモンと言う博士の研究によれば、100人の人の「普通の脂肪」と「セルライトと呼ばれる脂肪」を採ってきて顕微鏡で見比べたところ、2つの脂肪は全く同じだったそうです。これは「セルライトは普通の脂肪ではなく、脂肪の周りに老廃物や水分の溜まった特殊なもの」と言う説明に反しています。

またロックフェラー研究所の発表したところでは、「セルライトと呼ばれる脂肪」の血流や脂肪の代謝について測定したところ、「普通の脂肪」と何ら変わりが無かったそうです。これも「セルライトは普通の脂肪とは違い、血行や脂肪代謝の悪いところに付く」と言う説明に反しています。

これらの研究により、「セルライトと呼ばれる脂肪」は「普通の脂肪」と何ら変わりない;つまりセルライトと言う特殊な脂肪は存在しないことが分かりました。

では何故「セルライトと呼ばれる脂肪」は「普通の脂肪」と違って表面がボコボコしているのでしょう?それは単に、脂肪細胞の中に「普通の脂肪」より沢山脂肪が溜め込まれたからです。よって中の脂肪が消費されれば、自然にボコボコも解消されます。

■セルライト除去サプリメントの危険性

さて、それでは存在しないセルライトを落とそうとすることには、どんな危険が伴うでしょうか?アメリカでは人気セルライト除去サプリメント「セラシーン」について、次のような研究がなされています。

まず、セラシーンには「月見草オイル」「メリロート」「大豆レシチン」などが含まれていますが、研究の結果これらの成分はいずれも、体の脂肪の量や分布に影響を及ぼさないことが解りました。しかし、これらの成分よりもっと深刻なのはその中に含まれるヨウ素の問題です。

ヨウ素と言うのは人間に必要なミネラルの一種で、海草や魚介類に多く含まれます。これが不足すると、首の辺りにある「甲状腺」と言う器官の病気を引き起こしてしまいます。世界的に見るとヨウ素は不足する地域が多く、風土病のように甲状腺の病気が起こったり、また甲状腺の病気を防ぐ為その地域では食塩にヨウ素が添加される・・・と言うこともあります。

しかし日本のように海草や魚介類を多く食べる地域でヨウ素は不足することが無く、逆に摂り過ぎによる甲状腺の病気(ヨウ素は不足しても摂り過ぎても甲状腺の病気を起こします)が問題になります。

アメリカの成人のヨウ素の所要量は1日150μgであり、またアメリカの女性は食事などから平均170μgのヨウ素を摂っています(つまりアメリカもまた、日本のようにヨウ素は足りているのです)。しかし、アメリカのセラシーンには1錠あたり240μgのヨウ素が含まれています。この為セラシーンによる甲状腺の病気が懸念されています。

一方、日本で販売されているセラシーンはアメリカのものとは組成が違う(1錠あたり含まれるヨウ素の量は160μg)ので、同じような問題が起こるとは限りません。しかし、カロリーを控える為にワカメやヒジキを大量に摂るような食生活、結果を急ぐ余りの過量服用、また他のサプリメントの飲み合わせ等がどのように影響するのか、安全性を明らかにする必要があるでしょう。

なお、日本人のヨウ素の所要量は150μg、許容上限摂取量は3mg(3,000μg)です。

■おわりに

以上で、セルライトに関するお話を終わります。

最後になりますが、前回「マッサージすると、脂肪は移動するのか?」「太っている人が運動すると、脂肪の上に筋肉が付くのか?」と言うことを書きましたので、それらについてお話したいと思います。

前回もお話したように、脂肪と言うのは皮膚と筋肉の間をゆるくつないでいます。よって、もしマッサージによって脂肪が移動するようなことがあれば、当然それらとつながっている皮膚や筋肉が引きつれてしまうでしょう。また脂肪が皮膚と筋肉の間をつないでいると言うことは、「脂肪の上に筋肉がある」のではなく、「筋肉の上に脂肪がある」と言うことを意味しています。よって「脂肪の上に筋肉が付く」と言うのは、解剖学的に間違いであることがお分かり頂けるでしょう。

私たちは正しい知識を持ち合わせていないと、ついつい広告の言葉を鵜呑みにしてしまいます。しかし、そのようなものに無駄なお金を払わないためにも、ダイエットについてしっかり勉強することが必要です。


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