褐色脂肪(1)(週刊やさしいダイエット第91号より)
■はじめに
前々号(第89号)では、脂肪について「白色(はくしょく)脂肪と褐色(かっしょく)脂肪と言う全く働きの違う2種類の脂肪がある」とお話しました。そして前号・前々号では白色脂肪についてお話しましたので、今回はもう一つの脂肪〜褐色脂肪についてお話したいと思います。
その前に、褐色脂肪についてお話を始めると専門用語が沢山出てくるので、ちょっと難しく感じられるかもしれません。そこで、これからお話しすることを先にまとめますと、
・褐色脂肪には余分なカロリーを消費する働きがある
・その働きの鍵は「β(ベータ)3アドレナリン受容体」と「脱共役たんぱく質(UCP)」である
・肥満治療のため、現在これらの研究が進んでいる
と言うことになります。たったこれだけのことを説明する為に、これから長い文章が続くのですけどね(^^;)。最近はテレビや雑誌の健康特集でもよく「褐色脂肪」という言葉が使われるようになりましたので、この機会に是非勉強していただきたいと思います。
■褐色脂肪とは?
一口に「脂肪」と言うと、栄養素の脂質の別名なのか、それとも体にある脂肪組織・脂肪細胞の略称なのか、紛らわしいものですが、一般的に「褐色脂肪」と呼ばれるものは後者です。つまり「褐色脂肪」とは、「褐色脂肪組織」や「褐色脂肪細胞」のことを指すのです。決してそう言う栄養素がある訳ではないので、間違えないようにしてくださいね。
褐色脂肪も白色脂肪と同じように「脂肪」という言葉が付きますが、その形や働きは白色脂肪と全く違います。まず付く場所が違います。白色脂肪は皮膚の下なら殆ど全ての場所に付きますが、褐色脂肪は心臓・腎臓の周り・首周り・脇の下・肩甲骨の間と言った限られた場所にしか付きません。この為褐色脂肪はとても量が少なく、大人では全部で40gくらい(赤ちゃんの時には100gくらいあるのですが、だんだん減っていきます)しかないのです。
また見た目が違います。褐色脂肪はその名の通り褐色をしています。これは「組織の血流が豊富なため」「細胞の中にミトコンドリアが多いため」です。ミトコンドリアと言うのは、高校の生物で習った方もおられるかもしれませんが、ATP(アデノシン三リン酸)を合成するところ。ATPとは
[有酸素運動と無酸素運動(週刊やさしいダイエット第26号)]
http://homepage2.nifty.com/luke_apostle/vol.26.html
でも少しお話しましたが、体にとっての「パワーえさ」みたいなものなので、ミトコンドリアは「パワーえさ生産工場」と考えて貰えると良いと思います。
さて話が脱線しましたが、褐色脂肪と白色脂肪の一番の違いは、その働きにあります。皆さんご存知のように白色脂肪は脂質を蓄えますが、一方の褐色脂肪は脂質を燃やしてしまうのです。これは何とダイエットに好都合なことでしょう!
しかし、褐色脂肪はむやみやたらに脂質を燃やしているのではなく、ある調節システムの下に働いています。そしてどうやら日本人の中には、この調節システムにの一部に問題があり、褐色脂肪がうまく働いてくれないタイプの人が多いらしいのです。その問題の部分こそ「β(ベータ)3アドレナリン受容体」です。
■褐色脂肪の調節システム
胃腸や心臓のような内臓は、自分で勝手に動いているようですが、実は脳からの指令に従って動いています。そしてその指令を伝えるのが自律(じりつ)神経で、自律神経の中には交感(こうかん)神経や副(ふく)交感神経と言った種類があります。
最近の研究で、褐色脂肪も他の内臓と同じように、脳からの指令に従って働いている(脂質を燃やしている)ことがわかりました。例えば、食事をすると脳のある部分の働きが活発になり、そこから「褐色脂肪君、脂質を燃やしてくれたまえ」と指令が出ます。そしてその指令が自律神経(この場合は交感神経)を伝わって褐色脂肪に届き、褐色脂肪が脂質を燃やし始める・・・と言った具合にです。
しかし更に研究を進めていくと、褐色脂肪が自律神経から指令を受け取る時、うまくいかないことがあるらしいと分かりました。それが「β3アドレナリン受容体」の不具合です。「β3アドレナリン受容体」と聞くと何だか難しそうですが、要は「褐色脂肪が持っている、指令を受け取るための道具」です。日本人では33-34%の人にこの不具合があり(正確に言えば、受容体を作る遺伝子に不具合があり)、不具合があると基礎代謝が何と約200kcalも低くなってしまうのだそうです。
この為「β3アドレナリン受容体」の不具合を解消し、肥満を解消するための薬の研究が進められています。しかし、副作用の問題(皮膚が真っ赤になってしまう)等もあって、すぐに使えると言う訳では無さそうです。
ちなみに以前、第48号で「便秘で飲んだら脂肪が減った」と言う薬(防風通聖散)についてお話したことがありますが、実はこの薬は「β3アドレナリン受容体」の部分に働きかけます。このためカロリー消費がアップし、体脂肪が減る(=痩せる)と言う仕組みです。
(次号に続きます)
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