ストーリー6!ピエロと鏡と肝試し
じりじりとコンクリートに照りつける日差。嫌気がさすくらい暑い。
魔法学校の一学期が終わり今は夏休み。なのに陣による毎日の魔法の勉強指導。
もう、うんざりする。
窓をしめきりクーラーのある部屋の中にいながらも、
窓越しに見る外の景色でやる気がうせてしまう。
「ルナ?」ボーっとしている弟の様子を見て声をかけてみる。
「ん?うん。なんでもないよ。」苦笑いでかえしてみる。苦笑いすらきつい。
たまには涼しい部屋で勉強しないでゆっくりしたい。
でも、学力不足の僕の言えることじゃないんだと我慢する。
そう思っていたのが聞こえたように陣はこう言ってくれた。
「今日はもう終わりにするか?」神のお言葉だぁ。
もうお昼時だ。陣が昼御飯の用意をし始める。
そんなとき家の電話が鳴り始めた。陣に頼まれたので自分が出なきゃ行けないみたいだ。
受話器を取ってみると相手はアイナちゃんだった。
「ルナ君?」
「そうだよ?どうしたの?アイナちゃん。」
アイナちゃんいったいなんの用なんだろう…?
「今日の午後空いてる?」
「午後??」
「学校に来てほしいんだけど…。」
答えはもちろん空いてるけど。呼び出しの内容は一言も話してくれない。

午後1時30分。夏休みから1週間経った自分達の教室へ足を運んだ。
1週間行かなかっただけで懐かしさを感じる。不思議な感じ。
教室へ近づくに連れてだんだんと人の声が聞こえて来た。
教室の前のドアから入ってみる。
すると、教室の対角線のむこう側にアイナちゃんとガーナの2人がすでにいた。
「ハロォ―。2人とも。」
「あ、ルナ君。」
「2分遅刻!」
「2分くらい…うぅ(汗」
にしても一体なんの用なんだろう?とりあえず定位置につく。
しばらく他愛もない話をしてた。夏休み入って何してたとか。他愛もない。
しびれをきらして自分から思いきって聞いてみた。
「ねぇ、今日って何しに集まったの?」
「?アイナちゃんもしかして話してない?」
「うん。」
??何?
「…肝試しするの。」エッ。ひどいよ。
「だって!ルナ君そういって呼び出してもきっと来てくれなかったでしょ?!」
うぅ…・゚・(ノД`)・゚・そうだけどさぁ。言ってくれないなんて…。アイナちゃん信じてたのに!
「ま、そー言うことだ。でもな、それだけじゃない。」
「そ、それだけじゃないって?」
「職員室で宝物探し。」え…またこいつら無茶しようとしてる?!
「宝物だか何かしらないけど、それはやめようよ!職員室は駄目だって!」
必死の抗議も受け入れられず、「ルナ君―。悪いけど、もう決めちゃったのv」
なんだこいつらぁ…

「これから職員室に探しに行く宝物のこと話すからよーく聞けよ。
 その宝物とは鏡。教頭が持ってる。」
「鏡?ただの鏡なら」
「違うの。実はその鏡魔法を閉じ込める作用があるのよ。」
「…もしかしてさ。それ夏休み前に学校中で広まった噂?」
「そう。でもその噂、実は噂じゃとどまらないの。」

その噂…。それは、学校一の堅物の教頭。彼が来てから突然魔法が使えなくなる生徒が出た
という噂だ。教頭がこの学校へ来たときに同期で入った先生は、十人ほどいたと思う。
なぜ教頭かと言うと、その魔法を失った生徒は1ヶ月前以内に教頭にじきじきに
呼び出されてると言うのだ。しかしそれだけじゃ魔法を失った理由にならない。
精神と魔法は繋がっているものの、精神に異常をきたしたからといって、
全く自分の意思通りに魔法が出なくなるといった現象は起きない。
そこで出てくるのが、特殊な魔法力を帯びた何かなのではないか。という仮説だ。
魔法を失った生徒はたいていすぐにこの学校を去ってしまう。
その学校を去っていった生徒の一人が親友に打ち明けた話しがあった。
紺色の手鏡が机の上においてあったと。それは教頭に放課後よびだされ、
しかられかばんを取りに教室に戻ったときだった。友達は置手紙で先に帰りますとかいてあり、
手紙から手鏡に視線を移す。少し怖いとは思ったものの、
手鏡の紺色に魅力を見出し手にとって見た。
そして綺麗に磨かれた鏡面に手を触れてみたい衝動にかられた。そっと、そっと手を近づけてみる。
そして触れた瞬間自分のすべてがその鏡の異世界へ流れ込んで行く感覚にとらわれたそうだ。
そして鏡面には背後にピエロが立っている。振り向くが何も居ない。
怖くなって、すぐさま手を離しかばんを持って教室を出る。
そして次の日…

魔法を失った。寒気のする。ちょっとした怪談話のような噂。

先日呼び出された3人だけに、少し不安がよぎる。
あの教頭…本当にその鏡の持ち主なのだろうか?
そんな真実を確かめるため今回の肝試しをしようとアイナちゃんが持ち出したそうだ。
家に連絡を入れ、今夜ガーナの家でお世話になると伝えた。ホントは今から帰るからって言いたい。
でも、ここまで計画を聞いてしまったいじょう、この二人から逃れることなんて
できっこないのだろう…。怖いよ、陣。
そのまま夕方になり日が暮れ…と時間が過ぎるのを待った。
その間、見まわりの先生など学校に遊びに来てる生徒など、不思議なほど見なかった。
ただただ3人だけの時間だった。
何度も計画を話し合って何度もガーナがボクを驚かせそうして時間が過ぎて行った。

「こちらガーナ。職員室、明かりがありません。どうぞ」
「こちらアイナ。同じく明かりがないことを確認。どうぞ」
「こちらルナ。…なんでこんな近距離でトランシーバーなんですか?」
『雰囲気。』
ガーナを先頭に一列になっている3人。どこか間抜けな感じがしてはたから見たら笑える。
「それじゃァ、これから任務を遂行します。職員室の合い鍵よ―い。」
よく用意したものだ。一体どんなとこから入手したのやら…。
ゆっくりと鍵を空けてゆく。そして、鍵穴を回しがしゃん。という音が廊下に響く。
光がないのがこんなにも学校を変えてしまう物なのだとすこし怖くなる。
「入るぞ。それぞれの担当場所を探せ。」
担当場所といってもおもに教頭の机の周りだ。教頭はたいてい職員室ではお茶を飲んでる。
書類がこんなにもあるなんて思いもよらなかった。ルナ自身の担当は、教頭の机。
アイナちゃんは机周りのダンボール。ガーナは教頭の机の後ろにあるロッカー。
それぞれが無心に探している。

早く見つけないと。
誰か来たらどうしよう?
しかもそれが教頭だったら?

ゾクゾクと寒気がする。夏休み中の誰もいない職員室。時計はすでに8時30分を回っていた。
夏だというだけあって、流れる汗が止まらない。
しかしその汗の中には、少しばかりは冷汗も混ざっている。
教頭の机を下から探していったルナは、とうとう最後の引き出しにたどり着いた。
しかし、手を描けて引いてみても開かない。
「ガーナ、ガーナ」
一番近くにいたガーナに小声で呼びかける。
すぐにガーナが降りかえりルナの声を聞き取ろうとする。
「ここ、開かない。ロックされてるみたい。」
どいてろといわんばかりに、ルナの顔を押しのけ引き出しをじっくり見てみる。
そして、すぐにはっとする。するとガーナは教頭の机の上にある、
外付けのハードディスクに目をやる。
これだといわんばかりに一本のケーブルの先端を持ち、開かなかった引き出しに接続部分がないか
探す。そしておもわく通りその接続部分は見つかった。なんでこんな仕組みがわったのだろう?
「この机、うちの親父が使ってんのと一緒。パソコンを使用することを前提に売り出されたらしい
 机なんだ。で、こうやって本人のハードだってわかるデータを接続すると、
 それを机の方が読みとって…」
「ガチャッ」
鍵が開いた…。すごいな…。ガーナ物知り…。
「ォィ、ルナ。これ」
開いた引き出しを自分も覗いてみる。するとそこには噂通りの手鏡が。
噂は本当だったんだ。ってことは教頭は…。これの持ち主ってことも本当になる。
そのときだ。急に真っ暗な教室に光りが。
誰かが職員室の明かりをつけたらしい。誰?教頭?亡霊?それとも別の誰か?
「2人とも隠れて!」
ガーナとルナ2人もろともアイナちゃんに頭を抑えつけられる。

だれ…近づいてくる…。ハイヒールのコツコツという音。女の人?

「誰かいるの?…全く。こんな夜中に。出てきなさい。」
3人ははっとした。この声は!
『アンジェリア先生!』思わず声を上げて3人は姿を見せてしまった。
今までの不安がいっきに晴れたようだ。怒られることなどこれっぽっちも考えず
真っ先に飛び出したのはアイナちゃんだった。ガーナは少し警戒して。
しかし、ルナは安心で力が抜けてしまった感覚と、野生の勘なのだろうか?
体が精一杯の厳重体制を取っている。
そのふたつの感覚にとらわれ、動けないでいる。
体が分かっていても、頭では全くそれが理解できない。一体何故なのだろう??
そのとき、パチンと音がした。何かがはじけた。いや、この音は間違えなく、
アイナちゃんのビンタの音だ。
何故先生に?
「な、何てことするの?」驚きの色を隠せないアンジェリア先生。
「何よ、何よ何よ?ていうかあんただれよ?」震える体からでた精一杯の声。
「誰って、あなた達の担任よ?夏休み入って忘れちゃったわけじゃないでしょ?」
「忘れるわけないじゃない!はっきり覚えてるわよ!」
何?アイナちゃんどうしちゃったの?
「はっきり覚えてるのよ!先生に泣きボクロがないことぐらい!!」
ハッとして顔をさする先生。いや、先生に化けていた誰か…。
震えて動けないでいるアイナちゃんを、おもいっきり引き寄せるガーナ。
「あんた誰だ?俺だって泣きボクロがないことぐらい気づいてたぜ?
 それにもう1つ言わせてもらうけど、アンジェリア先生は新婚ほやほや。
 結婚指輪はずす日なんて見たことなかったけどな?」
みるみるうちに醜く怒りの顔に満ちて行くアンジェリア先生。
「ンフフフっ。やっぱりばれちゃいましたか。ンフフフフフッ」
そういってあらわれたのは紺色のグロテスクなピエロだった。
身長はゆうに2メートル以上はある。
あまりのグロさと大きさにへたれこむアイナちゃんとガーナ。
「わァ…はは…が、ガーナ…何こいつ。」
放心状態のガーナ。
「そこの小娘、さっきは、よくも私の顔を叩いてくれましたね?ンフフフフッ。許しませんよ?ンフフッ。
 んー―でも私、クリオネはあんまり好きじゃないのよね。光の属性だし?
 どっちかって言うと灰色の坊やのほうが取りこみやすいわね。闇の属性だし?」
「近寄るな!…お前の正体見破った。紺色の手鏡だろ?」
ちょっと間を置いて…ピエロは一歩近づいた。それと同じタイミングでガーナとアイナが下がる。
「私…あんたみたいな生意気な子はタイプじゃないのよね?今すぐ消しちゃいたい。
 恐怖に震える顔。見ごたえありそうじゃない?ンフフフフフッ」
「ガーナ、こいつきもいぃぃ(泣」
「黙れ、小娘」「はひぃぃ」
ピエロは自分の手のひらにすっぽり入るくらいしかないガーナの頭をつかもうと手を伸ばした。
すると、教頭の机の方から別の声が叫んだ。
「やめてぇ!駄目、やめて。でないとこの鏡…割っちゃうから!」
とたんにピエロの顔が引きつる。しかし、すぐに真顔に戻る。
あれ、おかしいと今度は、ルナの顔色が変わる。
「その鏡割ってみなさいよ。坊やに割れるものなのか。
 その細い腕でどう割るって言うの?ンフフフフフッ」
「い、いいの?ほ、ホントに割っちゃうから」
「ンフッ。坊やの好きにしなさい?じっくり考えていいわよ?」
そう言われて思わず鏡に目を落とすルナ。
そのときはっとガーナが何かに気づく。
「ルナっ!その鏡を覗きこんじゃ駄目だ!」
しかし、時はすでに遅し。ルナの目には鏡に映った自分の顔しか見えていなかった。
不思議と吸い込まれてゆく不思議な魅力。駄目だ。
「ガーナ、どうしよう?ルナ君が…じゃが太郎が鏡に…。」
固まったままのガーナ。ルナがルナじゃないみたいだ。あんなルナ俺の知ってるルナじゃない。
と受け入れられないのが見え見えの表情。
「ルナアァアァァァ!!!!」
小声でルナが自分の声をつぶやいたようなきがした…。
しかしそんなことを無情にもぶち壊したのが紺色のピエロ。
「坊やはもう落ちた。この子ごと取りこんじゃおうかしら?」
いつのまにかルナの背後に迫っていた。
そして、その姿をルナは鏡を通してみていた。
もうだめだ。
鏡にすべてもって行かれてしまいそうだ。
…。

しかし、そうはならなかった。その異常に気づいたのはグロテスクなピエロ本人が最初だった。
吸い取っても吸い取ってもこのこの魔力が尽きない。
底知れない魔力…。これじゃぁ本当に鏡がもちきれなくて割れてしまう。
しかしその判断は遅すぎた。
ピキッピキッ…。と綺麗な鏡面に少しずつひびが入ってゆく。
それと同時にルナには、自分に呼びかけるじゃが太郎達の声が聞こえていた。
「ご主人!俺達を召喚して!」
「はやく!」
しようとしてる。でも、体に力が入らないんだよ…。
「ご主人!…ご主人。しょうがない。かってに外に出させてもらうぜ」
そして外に出た瞬間。鏡面はこなごなに砕け散った。
ピエロの方はと言うと…。

こちらも跡形もなかった。

「…ははっ。ありがと…じゃが太郎達…。」
しかし…僕の中にじゃが太郎達がいるだけであんなにも有余る魔力が、僕の中にあるのだろうか?
これはジャガ太郎たちの魔法力?それともボクの潜在能力?
どっちでも…良いや…。

次の日。アイナちゃんとガーナで学校へ行ったそうだ。
そしてたまたま日直だったロゼッタ先生に昨日のことを伝えた。
そしてそのことをすぐに校長に報告したのだ。
取調べの結果。教頭は署に連れて行かれた…。
しかし…。
教頭はポラロイドカメラに姿を映された男のときと同じように突然死したそうだ…。
どうやら教頭も魔法学校を狙う一味と少なからず1枚かんでいたのかもしれない。

学校を騒がせたこの噂も、夏休み開けにはその噂に立ち向かった3人の武勇伝に変わりそうだ。

長くてごめんなさい(汗 そして読んでくださった方ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・
ちょうど8月に合わせて書いてみた物です。
少しでも怖いと感じる場面があればこちらとしてもそれはそれで嬉しい(笑)
学校の怪談風にしてみたかったんですよ。
ともあれピエロのイメージとしてはDグレの絵に近いです。(爆)
笑い声はテニプリのミズキをイメージしてみた。笑いレベル50みたいな。(いらない)