F-1コラム2008

 ■ F1 Columns 2008

2007年,皇帝シューマッハを退位させたアロンソはタイトルの防衛に失敗した. 若武者ハミルトンを意識するあまりに,ライコネンに足元をすくわれてしまい,最期には亡命の憂き目. 「古巣ルノーに舞い戻る」といえば表現は良いが,実質的なチャンピオンチームから円満に追放されたということだ.
上位チームが目まぐるしく体制を変える中で,フェラーリだけは不動. 今年のフェラーリの至上命題は「勝者であることの証明」である. 昨年のダブルタイトルがマクラーレンの失格によるものではないこと,アロンソとハミルトンの確執に乗じたものではないことを証明しなければならない. これは「フェルマーの最終定理」の証明よりも難解な命題だ.
Off Season Tests

 袂を別つ時が来た

 フェラーリを常勝チームに押上げた二人
 ミハエル・シューマッハとロス・ブラウン
 ミハエルはフェラーリの新車をテストして
 ブラウンはホンダの復興に心血を注ぐ
 功労者二人が選んだ道は共に荊の道

 進むに傷つき 苦難の連続だからこそ
 踏破した勝者には賞賛が待っている


このフェラーリなら開幕戦から勝利を狙える by ミハエル・シューマッハ
バルセロナテストに参加したシューマッハは新車F2008をテストして一言,「このフェラーリなら開幕戦から勝利を狙える」. そんな速さを持つフェラーリを狩るライコネンはF1史上23人目の「完璧なチャンピオン」. そして今年は「複数回の完璧なチャンピオン」を目指す. 成し遂げれば,ファンジオ,アスカリ,ブラバム,ヒル,スチュアート,ラウダ,ピケ,プロスト,セナ,シューマッハに次ぐ11人目の男となる. 対するはハミルトンとマッサの二人だろう.
2008年シーズンは全18戦,有効ポイントは12戦の設定で戦う.
Round 1: Australian GP Winner: Lewis HAMILTON (McLAREN)
 ロズベルグ 獲得失敗
 ベッテル 獲得失敗
 第三の男としてチームに招かれた
 ヘイキ・コバライネン

 チームにとって最良の選択でないことを
 自分自身がよく知っている
 だからこそ勝たねばならない
 他人には判らない重圧に耐えて走る

 四人目のフライング・フィンは誕生するか??


競争力はリザルトが示すよりもよかった by ヘイキ・コバライネン
2008年開幕戦はハミルトンの圧勝. 優勝候補筆頭だったフェラーリは散々. 古巣に舞い戻ったアロンソは流石の走り. 中嶋一貴は序盤の不運を撥ね返して完走.
注目していたのはコバライネンだったが,セーフティーカーの不運をものともせずにアロンソを抜いたまでは良かった. ところが,捨てバイザーを剥がした際に速度制限ボタンを押してしまうという,往年のマンセルを彷彿させる大チョンボをやらかしてしまう. ロン・デニスのガッツポーズも束の間,憎むべきアロンソに易々と前を許してしまう大失態を演じた. コバライネンはチームに自らの実力を認めさせなければならないのに... よりのもよって,トレードとなったアロンソにシテヤラレルトハ.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ハミルトン(8),ハイドフェルト(6),ロズベルグ(4)
1960年ルール: ハミルトン(8),ハイドフェルト(6),ロズベルグ(4)
1961年ルール: ハミルトン(9),ハイドフェルト(6),ロズベルグ(4)
1967年ルール: ハミルトン(9),ハイドフェルト(6),ロズベルグ(4)
1991年ルール: ハミルトン(10),ハイドフェルト(6),ロズベルグ(4)
現行ルール: ハミルトン(10),ハイドフェルト(8),ロズベルグ(6)
Round 2: Malaysian GP Winner: Kimi RAIKKONEN (FERRARI)
 
 マッサ 二戦連続リタイア
 そのレースでライコネン優勝
 やはりフェラーリは速い車を持っていた

 速い車を作るのはチームの役目
 速い車で勝つのがドライバーの役目
 当然の役目を果たせない者には
 容赦ない罵声が浴びせられる

 フェラーリならばなおさらのこと
 シューミの弟子ならばなおさらのこと

スタートでフェリペに並んだけどリスクを冒さなかった by キミ・ライコネン
スタートで厳しい幅寄せを喰らいながらも,熱くならずに引いたライコネン. 自身がマッサに比べて1周のマージンがあることを知っていたからこそ冷静な判断ができたのだとすれば,ライコネンはチャンピオンになって厄介な化猫になってしまった訳だ. 逆にマッサの方は完全に焦ってしまっているように見える. 「なに,あと16連勝すればタイトルは俺のものだ」というくらいに開け直らないと,マッサがライコネンを倒す可能性は少ないのではないだろうか??
もう一人,化けたのはコバライネン. キッチリとレースを纏めて表彰台. 昨年のルノーでの失敗の数々はこの若者を大きく成長させていたようだ.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ハミルトン(10),ライコネン(8),ハイドフェルト/コバライネン(7)
1960年ルール: ハミルトン(10),ライコネン(8),ハイドフェルト(7),クビサ(6)
1961年ルール: ハミルトン(11),ライコネン(9),ハイドフェルト(7),クビサ(6)
1967年ルール: ハミルトン(11),ライコネン(9),ハイドフェルト(7),クビサ(6)
1991年ルール: ハミルトン(12),ライコネン(10),ハイドフェルト(7),クビサ(6)
現行ルール: ハミルトン(14),ライコネン/ハイドフェルト(11),コバライネン(10)
Round 3: Bahrain GP Winner: Felipe MASSA (FERRARI)
 BMW 古豪が最前線に返り咲き

 遂に という言葉で祝福すべきか
 遅まきながら と言うべきか
 いずれにせよ「お待たせしました」

 ポール・ポジションの次は優勝
 優勝の次はチャンピオン
 マリオ・タイセンの野望は始まったばかり


二戦連続表彰台,チームはコンストラクターズの首位だ by ロバート・クビサ
決勝は復調したマッサが終始トップを許さずにフェラーリの1-2. 続いたのはBMW勢で開幕前の酷評が嘘のようだ. コンストラクターズでも首位,ポイント争いでもフェラーリ,マクラーレン,BMWで三つ巴になっている. ライコネンが頭一つ飛び出しているが,絶対的優位という訳ではなさそうで,展開によっては次戦で順位の大幅な入れ替えも予想される. 次からは舞台を欧州に移しての本格戦の始まり. 優勝争いに全く絡めていないアロンソがどう掻き回すか. その渦に誰が足元をすくわれるかが見所.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ライコネン(14),ハミルトン/クビサ/ハイドフェルト/コバライネン(10)
1960年ルール: ライコネン(14),ハミルトン/クビサ/ハイドフェルト(10)
1961年ルール: ライコネン(15),ハミルトン(11),クビサ/ハイドフェルト(10)
1967年ルール: ライコネン(15),ハミルトン(11),クビサ/ハイドフェルト(10)
1991年ルール: ライコネン(16),ハミルトン(12),マッサ/クビサ/ハイドフェルト(10)
現行ルール: ライコネン(19),ハイドフェルト(16),ハミルトン/クビサ/コバライネン(14)
Round 4: Spanish GP Winner: Kimi RAIKKONEN (FERRARI)


 母国の英雄

 期待されて当然の様に結果を出す
 それが平然と出来るところが
 流石のワールドチャンピオン

 今年は二度あるスペインでのグランプリ
 この次はバレンシアでのロードレース
 公道コースでトラックに強い紅い駿馬を倒せ

 国民の期待は否応にも高まる

今週末は喜びとつらいことの両方だった by フェルナンド・アロンソ
アロンソの予選二位. 軽いタンクだと予想されていたが,キッチリと最前列にルノーの車を持ってくるあたりが凄い. 決勝では不運に捕まったが,マクラーレンやBMWとは競い合えるポテンシャルを示した. ポイントは二勝目のライコネンが独走. マッサ,ハミルトンが追走するが,今年はこのままフェラーリ同士のチャンピオン争いになりそうな予感だ.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ライコネン(23),マッサ/ハミルトン(14),クビサ(13)
1960年ルール: ライコネン(22),マッサ/ハミルトン(14),クビサ(13)
1961年ルール: ライコネン(24),マッサ/ハミルトン(15),クビサ(13)
1967年ルール: ライコネン(24),マッサ/ハミルトン(15),クビサ(13)
1991年ルール: ライコネン(26),マッサ/ハミルトン(16),クビサ(13)
現行ルール: ライコネン(29),ハミルトン(20),クビサ(19),マッサ(18)
Round 5: Turkish GP Winner: Felipe MASSA (FERRARI)

 首位のマシンを2位が抜く
 こんな単純なことが今のF-1では珍しい

 マッサ vs ハミルトン
 作戦が異なるので当然な訳だが
 それでもコースの上で抜く姿は美しい

 いいねぇ OVERTAKE!!

素晴らしい仕事をしていなければ落ち込むこともない by マーティン・ウィットマーシュ
マッサが得意なのか,ライコネンが苦手なのか,このトルコでのマッサはやたらに速い. マシン的に劣るマクラーレンに乗りながらハミルトンが頭脳的に一矢報いたが,残念だったのはコバライネン. 好調フェラーリ勢はともかく,そのフェラーリの1台の前に滑り込んだハミルトンは「これまでで最高のレース」とコメントした. 対して序盤で不運に見舞われたコバライネンはガッカリ肩を落とす. マクラーレンのCEO ウィットマーシュはコバライネンの走りと才能を称えてこう言った. 「ガッカリするのは当然だ.でも,それだけの素晴らしい仕事をしていなければ落ち込むこともなかったはずだ」 彼は特別な男だよ,とウィットマーシュは付け加えている.
ポイント争いはフェラーリ勢の優勢がハッキリとしてきた.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ライコネン(28),マッサ(22),ハミルトン(20),クビサ(16)
1960年ルール: ライコネン(26),マッサ(22),ハミルトン(20),クビサ(16)
1961年ルール: ライコネン(28),マッサ(24),ハミルトン(21),クビサ(16)
1967年ルール: ライコネン(28),マッサ(24),ハミルトン(21),クビサ(16)
1991年ルール: ライコネン(30),マッサ(26),ハミルトン(22),クビサ(16)
現行ルール: ライコネン(35),マッサ/ハミルトン(28),クビサ(24)
Round 6: Monaco GP Winner: Lewis HAMILTON (McLAREN)

 雨のモナコはドラマの舞台
 ハッピーエンドもあれば
 そうでない結末も巡ってくる

 エイドリアン・スーティル 25歳
 音楽家になる為の英才教育を受けたが
 父の意に反してレーサーの道を選ぶ
 F3時代はハミルトンとも争った

 2008年のモナコはアンハッピーエンド
 才能はある あとは歯車が噛み合えば
 スターダムへ駆け上がる

ようやく何を成し遂げられるかを示せた事が嬉しい by エイドリアン・スーティル
雨,曇,大雨の予報が雨,曇,晴で変化したモナコGP. ポイントで首位争奪戦を繰り広げるライコネン,マッサ,ハミルトンの3人は,停まれない,曲がれないコースオフやマシン破損. 不運を一番味方にできたのはハミルトンで,デビュー2年目でモナコ初制覇のスピード快挙.
一方で掴みかけた夢が悪夢に塗り替えられたのは,終盤まで4位を快走していたスーティル. 圧倒的に戦闘力の劣るマシンで「前はマッサのフェラーリ,後ろはライコネンのフェラーリだぞ!!」と激励されながら走っていたが,ポイント目前でライコネンに追突されて夢が幻に. 地面を蹴って怒りをあらわにするメカニックに,悔やみきれず肩を落とすスーティル. ショックだと言いながらも「ようやく何を成し遂げられるかを示せた事が嬉しい」という前向きなコメントがチーム唯一の救いか.
ポイントはライコネンのアドバンテージが消え,タイトル候補3人が再び混戦突入. 今回のライコネンの走りにはニキ・ラウダも厳しい. 「最も高額の支払いを受けているドライバーが,どうやったらこんな愚かなレースができるのか理解できない」と辛辣.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ライコネン(29),ハミルトン(28),マッサ(26),クビサ(22)
1960年ルール: ハミルトン(28),ライコネン/マッサ(26),クビサ(22)
1961年ルール: ハミルトン(30),ライコネン/マッサ(28),クビサ(22)
1967年ルール: ハミルトン(30),ライコネン/マッサ(28),クビサ(22)
1991年ルール: ハミルトン(32),ライコネン/マッサ(30),クビサ(22)
現行ルール: ハミルトン(38),ライコネン(35),マッサ(34),クビサ(32)
Round 7: Canadian GP Winner: Robert KUBICA (BMW)

 初優勝というのは大抵が運だ
 強敵を力でねじ伏せるという劇的な展開は少ない
 荒れたレースになるか 逃げる者 追う者が躓くか

 現実はそんなものだ だが侮るなかれ
 一度勝利の味を覚えた者は強くなる
 次からのクビサは全くの別人だ

ルイスに感謝だ,彼は僕ではなくキミを選んでくれたからね by ロバート・クビサ
優勝最有力はハミルトンだった. 対抗できるのはスタートを決めたライコネンぐらい. そう思っていたが,結果は意外やピットレーンで起きた. 赤信号で停まっていたライコネンにハミルトンが追突. しかも,ライコネンと並んで停まっていたのは優勝したクビサ. ハミルトンの凡ミスさえなければ,マクラーレン・フェラーリ・BMWで激しい優勝争いが見れたはずだった.
ハミルトンとライコネンのリタイアで,一気に首位を奪ったのは勝者クビサ. ライコネンが勢いを失ったこともあって,タイトル争いは一気に混沌としてきた.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ライコネン/クビサ(30),ハミルトン/マッサ(28)
1960年ルール: クビサ(30),ハミルトン/マッサ(28),ライコネン(26)
1961年ルール: クビサ(31),ハミルトン/マッサ(30),ライコネン(28)
1967年ルール: クビサ(31),ハミルトン/マッサ(30),ライコネン(28)
1991年ルール: ハミルトン/マッサ/クビサ(32),ライコネン(30)
現行ルール: クビサ(42),ハミルトン/マッサ(38),ライコネン(35)
Round 8: French GP Winner: Felipe MASSA (FERRARI)

 ルノー時代のトゥルーリは
 此処マニクールで大失態を演じた
 最終周の最終コーナー「リセ」で
 表彰台から引きずり降ろされる不名誉
 地元でルノーの威信は失墜した

 今日 懸けて走るは故人の名誉
 喪章を腕とマシンに纏い戦果を残す

 ラリードライバーにしてトヨタF1創設者
 オベ・アンダーソンに捧ぐ表彰台

あぁ,今回はリベンジさ by ヤルノ・トゥルーリ
フランスGPは快速フェラーリの速さ自慢. 普通走っても速いのに,トラブルを抱えても速い. 手負いの車でライコネンはファステストラップまで叩き出してみせた. フェラーリ以下の3位争いは熾烈. トゥルーリにコバライネン,クビサが絡んで三つ巴の表彰台争い. ポジションを守るトゥルーリは2004年にマニクールで失態を演じている. どうやらレース中にもそのことが気になっていたようで,レース後には「今回はリベンジ」と不幸な過去と決別した.
ポイント争いはマッサ,ライコネン,クビサ,ハミルトンの順で綺麗に並んだ. マッサとハミルトンの差は僅かに1レース分. 夏の欧州連戦はまだまだ混戦模様だ.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: マッサ(37),ライコネン(36),クビサ(32),ハミルトン(28)
1960年ルール: マッサ(36),ライコネン/クビサ(32),ハミルトン(28)
1961年ルール: マッサ(39),ライコネン(34),クビサ(33),ハミルトン(30)
1967年ルール: マッサ(39),ライコネン(34),クビサ(31),ハミルトン(30)
1991年ルール: マッサ(42),ライコネン(36),クビサ(34),ハミルトン(32)
現行ルール: マッサ(48),ライコネン(46),クビサ(43),ハミルトン(38)
Round 9: British GP Winner: Lewis HAMILTON (McLAREN)



 雨とバリチェロ
 F1デビュー戦も雨のキャラミ
 F1初優勝も雨のホッケンハイム

 何かと雨に縁がある
 初優勝の時は雨の中でドライタイヤで耐えた
 今度は迷わず大雨用のタイヤで表彰台の一角を奪った


 雨のバリチェロ
 老兵は今だ枯れず

僕が辞めるとすれば他に行く場所がなくなった時 by ルーベンス・バリチェロ
雨の第9戦 英国GPは面白いようにフェラーリが滑り・回った. かつてチームに在籍したロス・ブラウンが見たらどう思っただろう? もう少しやりようがあるだろうに... とでも思っただろうか. 所属チームのバリチェロは雨を味方にして一時は2位を走り,最終的には3位表彰台を獲得. 来年度のシートが危険視されていたバリチェロだが,この表彰台で「僕が辞めるとすれば他に行く場所がなくなった時」と息を吹き返して健在振りをアピール.
シーズンはようやく半分を消化したところだが,タイトル争いは横一線の状態. ファステストラップが多いライコネンが1950年ルールだと優位を保っているが,他年度ルールではまだまだ混戦.

■ドライバーズ ポイント
1950年ルール: ライコネン(41),ハミルトン/マッサ(36),クビサ(32)
1960年ルール: ハミルトン/マッサ(36),ライコネン(35),クビサ(32)
1961年ルール: ハミルトン/マッサ(39),ライコネン(37),クビサ(33)
1967年ルール: ハミルトン/マッサ(39),ライコネン(37),クビサ(31)
1991年ルール: ハミルトン/マッサ(42),ライコネン(39),クビサ(34)
現行ルール: ハミルトン/マッサ/ライコネン(48),クビサ(46)
-To be continue-