| ドラマキャンプ 8月中旬の木曜日、奥多摩湖の近くの水根沢キャンプ場にキャンプに行きました。
今年は、一時、中止の話も出ていたので、立ち上がりが遅く、来られないメンバーもいて、
全体の参加者が少なく、こじんまりしたキャンプになりました。
今回は、下の娘の友達のT君も、ボランティアで参加してくれて、男の子たちにとっては、
とてもありがたいことでした。
奥多摩湖のほとりでお昼を食べ、それから、一緒に出発です。
田舎道という名の山道を歩いて行きました。
橋の下で、村の人と出会います。その人は、Tさんがやってくれました。
この辺りは、いたずらぎつねに困っていて、そのきつねは、観音様にお仕えしていて、
観音様の首飾りを壊してしまい、その球を探しに地上に降りている。
ところが、球を探すのも自分のことも、すっかり忘れて、いたずらばかりしている。
だから、球を探してほしい、というのです。
なんと、その球はキャンプ場の川に落ちたというのです。
話を聞くうち、2年生のA君は、だんだん前に寄っていきます。
年少のS君も真剣な顔で聞いています。
そうして、子どもたちは必ず探すと約束して、キャンプ場に向かいます。
開国式につづいて、川遊び。
次々に球を見つけていきます。少々、競争的になっていたようですが、それでも、見付けた子どもたちは
嬉しそうです。
キャンプ場の反対側から山へ上がっていくハイキングコースがあります。
おやつの後、子どもたちは、小学生と幼児に分かれて、キツネに球を届けに、
その道を登っていくことにしました。
小学生のチームには、ちんぷいとT君と私。
幼児のチームには、全員のママ達がついていきます。
小学生のチームは、ママ達に見送られながら、一足先に山道を上がっていきました。
「今度は誰のママだろう」
「でも、みんな、あそこにいたよね」
日常の遊びの中でも、ママたちが役を演じることが当たり前になっている子ども達、
さすがに小学生は、そんな推理を始めました。
ところが、山道で間伐用の木の印をみつけると、
「これ、きつねの印じゃない」とMちゃん。いつのまにか、物語の世界に入っていきます。
「きっと、こっちにキツネがいるよってことだね」聞いていた他の子ども達まで
すっかりその気になっています。
一本道をずっと登り続けていくと、道の向こうに、何かが見えます。
「あっ!」A君が小走りになります。
小さな橋を渡ったところに、キツネがしゃがんでいました。
子ども達の目の前、元は滝が流れていたのだろう、というところに、キツネがいました。
(キツネの面を被ったAです)
いつのまにかすっかり空気を読んだT君がうまく子ども達を誘導しながら
キツネに話しかけていきます。
「これ…」
「持ってきたよ」
「返しに来たよ」
子ども達がどう声をかけても、キツネは不思議そうに首をかしげるばかり。
その時、手前の木の枝に何か引っかかっているのを見付けました。
「みんな、ちょっと来て」子ども達を呼ぶと、木の回りに集まってきました。
それでも、キツネが気になって仕方がないA君やMちゃんは、振り返り振り返りしています。
T君が素早く木の側まで駆け上がって、木に引っかかっていた布に書かれた文章を読み出しました。
「三つのキツネを探して球を返して欲しい」ということが書いてありました。
「よーし」と振り返ったA君、「あ、消えた!」振り返り振り返りしてキツネを気にしていたのに、
最後に振り返ったとき、キツネの姿は見えなくなっていました。
(実は、滝から細い川に続く橋の下に隠れていた)
でも、その小さな不思議は、がっちりと子ども達を物語の世界に連れ込みます。
「ね、後ろからキツネがこないかどうか、ちゃんと見ててね」と言われて、
T君は「わかった、ちゃんと見てるよ」
大きなT君(178センチ)の存在は、子ども達にはとても頼もしく見えていたようです。
この同じ場所で、後から来た幼児のグループでは、なんと、消えたキツネを追って、
年少のS君が橋の下を覗いてしまいました。
「いた、いたよ!」とS君が叫ぶのを聞いて、「私が一番がっかりして」と後でママが言っていましたが、
S君にとっては、消えたのはキツネでしたから、キツネが橋の下に隠れていても
なんの不思議もなかったのでしょう。
おとなにとっては、キツネは有り得ないことなので、「消えた」ことが大切だったのですが…。
この一人一人にとっての感じ方の違いが何度やっても、なかなか面白いものなのです。
子どもたちは、3匹のキツネを探しに先へ向かいました。
たった今、実態のあるキツネを見てしまった子ども達は、どうしても、木立の中の
キツネの姿を探してしまいます。
そこで、ちんぷいが水を向けます。「ホラ、あそこ」
遠く、キャンプ場の建物が小さく見える場所にキツネの顔がありました。
「あ、キツネだ」
「見えない、どこ」
「ほら、あそこ」
あっと言う間にどの子もキツネの顔を見付けました。
そして、反対側のお供えの台にT君が誘導します。
球をここに置いていく、というのが、なんとなく惜しそうな子ども達。
でも、Mちゃんが思いきって、そぅっとそこに置きました。
「キツネさんに返せますように」小さい声で呟いて、また、みんなで出発。
「あれ、取りに来るかもしれないから、ちゃんと見ててね」とA君は、また、T君に頼みます。
「わかった、ちゃんと見てるよ」と、T君。
また、一列になって出発です。
次にキツネを見付けたのは、観音様の像の隣。(これは元々そこにあったもの)
小さなキツネがいくつもあり、その近くにお供えの台。
今度は、迷うことなく、そこに一つ置きました。
そうして、観音様に手を合わせて、キツネが無事に帰れるようにお願いします。
そして、最後のキツネは?
3匹目のきつねは、きつねより先に、お供えの台を見付けてしまいました。
「きつねがいない」「どこだろう?」とキョロキョロしている子ども達に
T君が「ねぇ、みんな見て」ちんぷいも「ほら、あっち見て」と誘います。
視線の方には、奥多摩湖。
かつて、品川の子ども劇場のドラマキャンプでは、この湖を恐竜の姿に見立てたそうですが、
私達は、きつねの顔に見ました。
実は、下見の時は、はっきりとキツネに見えたのに、当日は、なんとなく違うようにも感じたのですが、
ここまできたら、見たつもりにすることにしました。
でも、高校生二人の説明を聞いていると、やっぱり本当にキツネの顔のように
感じてくるから不思議です。
すっかり満足して、A君が最後の球を置きました。
それでも、子ども達のキツネ探しは終わりません。
Cちゃんは、キャンプ場に戻る道々、「ほら、今、白いのが見えた」「あっちへ行ったよ、隠れてる」
Cちゃんの目には、はっきりと観音様の元へ向かう真っ白いキツネの姿が見えているようでした。
それは他の子どもたちも同様で、観音様の姿や、キツネの姿がそれぞれに見えていて、
きっとキツネは、観音様のところに戻れるのだろう、と話ながら歩いていきました。
そうして、戻ってきたキャンプ場の入り口のテーブルの上に1通の手紙。
小学生みんなで広げてみると、それはキツネからの手紙でした。
曰く
何もかも思い出したよ。ありがとう。僕が観音様のところへ戻れるように何か乗り物を作ってもらえないかな。
雨が心配で、急いで進めたので、時間はたっぷりあります。
さっそく、A君は、何か乗り物になりそうな物を捜しに行こうと言いますが、
まだ帰ってこない幼児やママ達を待つことにしました。
ちょっと気持ちがそれてしまった小学生の子ども達でしたが、幼児やママの顔を見ると、
きつねの手紙を見せに行きました。
そこで、ママの一人が折り紙を出してきました。
乗り物?飛ぶ物?飛行機を折る子、鶴を折る子、風船を折る子、とそれぞれです。
そのうち、折り紙の裏に手紙も書き始めました。
それを糸につないで、今夜、ファイヤーの火にくべよう、と話しました。
そして、夜。
ファイヤーの途中、川の上流の方にぼぅっと白く浮かぶ人影。
「きつねだ!」人影が見えるギリギリまで川に近寄ってきた子ども達の目には、
その人影の後ろに観音様のような丸い光が輝いていました。
そうして、その人影は、丁寧に一礼して、静かに見えなくなりました。
翌朝、子ども達と一緒に河原に下りて行きました。昨日、きつねが立っていた場所に行ってみることにしました。
そこには、白い紙で折られた風船がいくつも置いてあって、その中には、キツネに返した物と
同じ形・色の球が入っていました。
「お礼だね」Sちゃんがにっこり笑っていいました。
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