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シカゴ滞在3日目にスティーブが叔父さんの家に連れて行ってやると言い出して、2人で叔父さんの家に向かった。車中で私は叔父さんについて尋ねた。
「その叔父さんはどういう人なんだ?」
「んー、ちょっとワイルドで被選挙権が無いんだ」
「え?どっかからの移民か?」
「いや、昔事件を起こしてな」
「事件? 何やったんだ?」
「18歳の時に身代金目的のシカゴ市長誘拐未遂」
「…」
聞いたところによると次の通りであった。
叔父さんの名前はドム。通称"アンクル ドム"。
年齢30歳台後半。ベトナム帰りの元海兵隊。
身長180 cm。火器、素手による戦闘、破壊工作の訓練を受けている。
短気でケンカっ早く、無茶苦茶強い。
定職につかずいつもプラプラしている。酒乱。
奥さんとの間に息子1人(名前を考えるのが面倒だったとかで父親と同じドミニクと言う名前。ドミニクと呼びかけると二人で振り返るので笑える)。スティーブが恐れている知り合いの1人。
要は乱暴者。
「このアンクル ドムがミシェルの親父と最近さらに仲が悪くてな」
ミシェルはスティーブの彼女である。
「この前も二人してブタ箱に泊まってたらしい」
ミシェル親父は次のような人物である。
年齢40歳前半。
高校時代にボクシングで州の代表となるも、当時の彼女(現在の奥さん)にちょっかいを出してきた同級生を持ち上げて地面に叩きつけ、半殺しにして代表をフイにする。同級生は全治3ヶ月。本人いわく「俺はコブシを使っていないのに何故出場停止なんだ!」とのこと。やはり短気でケンカっ早く酒乱。スティーブが恐れている知り合いのもう1人。ちなみにミシェル親父の父親はアルカポネと間違われて路上で蜂の巣にされたので、ミシェル親父の前ではアルカポネの話は禁句である。
この2人はシカゴ警察の有名人であり、警官も2人のケンカを止めるのを嫌がっていた。
場所:シカゴ ダウンタウン道端
時間:夜中
理由:特になし(泥酔状態)
経緯:2人で殴り合いをしていたら、おせっかいな通行人が警察に通報。
警官2人が駆けつけたが瞬時にKOされる。さらに応援の警官が数人駆けつけるも、逮捕まで20数分を要した。公務執行妨害、傷害、の現行犯。
場所:シカゴ ダウンタウンのボーリング場
時間:夜10時前後
理由:ボールを投げる順番のイザコザ(やはり泥酔状態)
経緯:例によって二人で殴り合いをしていた所に警官二人がよせばいいのに仲裁に入る。
素手の殴り合いで劣勢と判断したアンクル ドムが警官を殴り倒し、警官が所持していたピストルを強奪。「てめー、ぶっ殺してやる!」とミシェル親父にピストルを向けたので、ミシェル親父もすかさず横の警官を殴り倒してピストルを強奪。あわや拳銃乱射事件となるところで、応援の警官数十人が到着。事なきを得る。公務執行妨害、傷害、強盗の現行犯。
はっきり言ってこの二人には法律とか前科とか殺人とかを気にする風は無い。スティーブも高校時代にアメリカン フットボールをやっていて腕っぷしは強いのだが、「この二人を敵に回す時は死ぬ時だ」と言っていた。また普段は仲が良いらしい。
「で、何でアンクル ドムに会いに行くんだ? 俺はかんけーねーぞ」
「久しぶりに東洋人を見たいんだとよ」
「俺はベトコンじゃねーぞ」
嫌な予感がした。
アンクル ドムの家は普通の中流家庭の家であった。ただ、家の裏庭で吠えている子牛くらいの大きさのドーベルマン2匹が異彩を放っていた。中に入るとアンクル
ドムと奥さんが出迎えてくれた。
「よく来たなスティーブ。久しぶりだな」
「叔父さんも元気そうだね。こっちは俺の友達の負け造、日本から来たんだ」
「おー、ジャパニーズ、ベトナムを思い出すなぁ」
「ベトナムでは無く、日本なのですが…」
「まあ、いいや。座れ」
みんなでテーブルに座って楽しい会話が始まった。
「しかし叔父さん、あの市長の誘拐は惜しかったすね」
よせばいいのにスティーブが突っ込んだ。
「そうだろぉ。計画は完璧でよぉ、俺1人でやろうとしたんだよ。酒場で友達を誘ってもみんなビビってやりたがらなかったからな。だいたいここは市街地だぜ、ベトナムと違って俺は殺しをしねぇことにしてるってのによ」
「叔父さんならできると思ったのにな」
「しかし、何でバレたのかな?」
「それって、単に酒場の友達が…」
するとテーブルの下からスティーブが私の足を蹴った。
「何か言ったか?」
「ちょっとこのジャパニーズと車に忘れ物を取りに行って来るよ」
と、スティーブは私を連れて外に出た。
「負け造、生きて日本に帰りたきゃ俺の言うことを聞け」
「誰がどうみたって酒場の友達が密告したんじゃねーか!」
「そんなのは俺でもわかる。いいか、アンクル ドムはベトナム以外じゃ殺人をしねぇとか言っているが、そんなのわかったもんじゃねぇ。一体あのドーベルマンは何だと思う?
俺はあの裏庭には人が埋まっていても不思議はねぇと思ってる。何人かはドーベルマンの餌になってるかも知れねぇ。アンクル ドムは訓練された殺人マシーンだ。しかも頭が悪いと来てる。キツイ薬もやってる。いいから俺の言うことを聞け」
さすがの私も生きて日本に帰るためにスティーブと調子を合わせることにした。
「忘れ物はあったか?」
「あったよ」
「そう言えばジャパニーズ、日本じゃ今でもバンバン腹切りしてるってのは本当か?」
「本当ですよ、アンクル ドム。そりゃもう道路は血まみれで毎日掃除が大変ですよ」
「やはりそうか。日本の女は芸者の格好しているってのも本当か?」
「いやー、参ったな。アンクル ドムは何でも知ってるんですね」
「そーか。昔勉強した通りだ」
「…(一体どこで勉強したんだ?、このクソオヤジ!)」
と他愛もない会話をしていると奥さんが飲み物を持ってきた。
「これはわが家のスペシャル ドリンクだ。飲んでくれ」
とピンクの液体を渡された。
「僕はこの前飲んだし、最近体調を崩してるんでジャパニーズにやってくれ」
「え?、これ飲むの?」
一応お酒っぽかったが、作っている所は見ていない。
スティーブは目で飲めと合図してきた。
しょうが無いので2、3口飲むことにした。
「どーだ、うめぇだろー」
「ゲォッ、う、う、うまいです」
味は化学薬品のような感じであった。飲むとすぐに吐き気とめまいが襲ってきた。スティーブの笑い顔が遠くに見えた。そのうち鼻水と涙も出てきた。トイレに駆け込んでゲーゲー吐いているとスティーブがやってきた。
「やっぱり体に合わないようだな」
「れ、れめー、これは一体何だ?」
「俺もこの前飲んでひでぇ目にあった」
「く、く、薬が入ってるのか? これふゃ?」
「わからん。でもろくでも無い飲み物には違いねぇ。どうする?帰るか?」
「か、か、帰りまふ。帰らしてくらさい、スティーブ様」
「マジック ワードはどうした?」
「ぷ、ぷりーず」
「おお、効いてきたな。負け造、俺様に何か隠しごとは無いか?あ?」
「ひ、ひ、わ、私が悪うございまひた。スティーブ様の邸宅で昨晩誤って夢●をぶちかましたのは私でございます。ついでに一昨日スティーブ様の別荘に泊まった時もついうっかり夢●をしてしまいまひた。2晩連続で●精を経験したのは初めてでございまふ。でも気持ちよかったでふ。許してくらはい」
「て、てめー、人んちで2回も●精しやがったのか!」
「わ、私はスティーブ様がミシェルのケツの穴に○○して、ついでに△△を使って嫌がるミシェルの■■に強引に△△を突っ込み、一晩中鬼畜のような行いをしたことを絶対人には言いまふぇん」
「本当だな?」
「本当でございまふ」
「じゃー帰るか」
居間に戻るとスティーブは"そろそろ帰る"と言ってヘロヘロの私を支えながらドアから出た。
車に乗りこもうとするとアンクル ドムが話しかけた。
「おい、スティーブ。今度ヤマを踏む時は手伝ってくれよ」
「もちろんだよ。叔父さん」
意識朦朧としながら車に乗った私はしばらく寝ていた。小1時間くらいで起きて通常に戻った私はスティーブに尋ねた。
「さっき、手伝うって言ったのは本気か?」
「当然ウソだ。計画を聞いた時点で警察に密告してやる。あーいう人間は世に出さない方が世界平和のためだ」
何かスティーブにはめられた気がした。
しかし、あのドリンクは一体何だろうと今でも気になっている。
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