【家族の肖像】米国留学曼荼羅−4

今日は何事もなく平穏な週末の金曜日の夜である。今日はキースは出かけている。何でもどこぞの知り合いと交尾をするらしい。キースも成長したもんだ。

私はテレビのスイッチを入れた。MTVを見始めたが、すぐに飽きてHBO(映画専門チャンネル)に切り替えた。
「しかし平和だ…」
スティーブの野郎は酒の飲み過ぎでぶっ倒れやがった。当たり前の話だ。朝から晩までビールを飲みっぱなしで体が持つわけが無い。私だって毎週末ゲロを吐きまくるのは飽きた。

「そう言えばグレッグの野郎はどうしたかな?」
グレッグも大酒飲みの大男である。こいつは一晩で自分の兄貴と友達の3人でビール(355ml缶)を160本飲み干した男だ。グレッグがビールを飲む時はいつも"ガロン単位(3.78リットル)"である。グレッグと酒を飲むと命がけになるので、私の周囲の人間は避けていた。どうせ今頃もどこかで酒を飲んでいるに違いない。

そんなことを考えていると電話が鳴った。電話を取ると、それはロスアンジェルスに遊びに向かった友達からのヘルプ コールだった。車が途中で壊れたから迎えに来てくれとのことだった。場所を聞いたら"パーム スプリングス"だった。パーム スプリングスはロスアンジェルスから車で2時間くらいの場所である。私の住んでいるアパートからだと車で片道6時間かかる。
「ダメだ。俺様はそんなにヒマじゃ無ぇ」
と電話を切るとテレビのチャンネルを切り替えた。

そしたらまた電話が鳴った。Qの野郎だった。こいつも車が壊れたので迎えに来てくれと言いやがった。場所を聞いたら、片道2時間くらいだったので行ってやることにした。

Qは女連れで私を待っていた。何でもエンジンのオルタネータのベルトがぶち切れたらしい。車の修理屋はすでに営業が終了しているので、修理は翌朝までかかるとのことだった。仕方がないので、3人で安いホテルに泊まることにした。
「テメーら、絶対に交尾を始めるんじゃねーぞ。そんなことしたら俺様が横でO−72を始めてやるからな!」
と念を押して私は眠りについた。

翌朝起きてホテルをチェックアウトすることにした。Qの野郎は文無しなので私が立て替えてやることにした。チェックアウトのカウンターで順番を待ってると従業員が口を開けて私の方を見ていた。
「何だよ?そんなに中国人が珍しいのかよ?」
と従業員に文句を垂れようと思ったら、従業員は私の後ろの人間を見ていた。私が不審に思って振り返ったら、私の目の位置に後ろの人間のズボンのベルトが見えた。
「???」
そのまま顔まで見上げたらアンドレ・ザ・ジャイアントが私を見下ろしていた。天井まで届きそうな身長だった。巡業の途中だったらしい。
「What?(何か用か?)」
と機嫌が悪そうに私に文句を言って来たので、思わずウンコを漏らしそうになった。

Qの車の修理が完了し、私は自分のアパートに戻った。昨日の晩からキースは戻っていない。どうやら"猿きち君"になっているらしい。私はソファでごろ寝をした。
「もうお助け電話がかかって来ることもあるまい…」

この頃の週末、私は一人で過ごすことが多くなった。ルーム メイトのキースは完全な猿になっていた。私は相変わらずテレビを見ていた。土曜日の夜はFOX(テレビ局)の"COPS"(警察官のドキュメンタリー)を好んで見ていた。番組も終わり、私はチャンネルを切り替えて他の番組を見始めた。

しばらく番組を見てたら突然キースのベッド ルームで物音が聞こえた。
「ん?おかしいな?」
キースはいないはずである。しかもここはアパートの2階である。
「…ど、泥棒か?」
私はビビった。私は台所を見た。ソファから台所まで、距離にして4mはある。そしてそこには包丁があり、それが唯一の私の武器に思えた。

突然私の脳裏に日本の新聞の見出しが浮かんだ。
"日本人留学生惨殺される!!物盗りの犯行か?"
このままではいけない。こんな所で死ぬわけにはいかない。しかし台所までダッシュして間に合うのか?
それまでにリビング ルームに入って来られたらアウトである。

私は意を決して台所までダッシュし、包丁をつかんだ。そしてすぐさまキースのベッド ルームのドアを思いっきり蹴飛ばして開けた。こうすればドアの内側の人間がふっ飛ばされると思ったからだ。

「…」
やはり泥棒はいた。そいつはキースのベッド ルームのバルコニーから侵入しようとしていた。その泥棒と目が合った。ヤツはバルコニーから上半身突き出した状態で、部屋に侵入する直前だった。
「…て、てめ」
と私は口を開きかけた。泥棒はしばらく私を見つめ、そして爆笑しながらバルコニーから落ちて行った。
(何だ?何故笑う?)
仁王立ちになっていた私は我に返って自分を見た。右手の包丁は固く握られていた。そして上半身はTシャツ1枚で、下半身を見たらスッポンポンだった
(思い出した!)
私はプレイボーイ チャンネルの"トレイシー ローズ特集"を見ていたのだ。つまりO−72の途中だった。

私はバルコニーまで行くと外を見た。そこには足を引きずりながら逃走する泥棒がいた。
(バカめ!)
私はリビング ルームに戻るとパンツをはいてタバコに火をつけた。警察に通報しようと思ったが、説明するのが面倒なのでやめた。

後日その話をQにしてやった。
「やるな、負け造」
「まあな」
「それでよぉ、チ●コは勃ってたのか?」
「当ったりめぇだ。半勃ちだったけどな」
「偉い!」
Qに初めて誉められた私はちょっと嬉しかった。

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