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Fと私は真剣に金儲けの話をしていた。
「それでよ、一体初期投資にいくらかかるんだ?」
「ざっと250億円ってとこです」
「250億か…」
「でも絶対儲かりますよ」
「そうだな。銀行が金貸してくれねぇかな?」
「でも担保無いでしょう?」
「銀行は当てにできねぇしな」
「銀行もバカですよね。こんな美味しい儲け話があるのに」
この日話していたのは"クジラの釣り堀"であった。マッコウクジラやゴンドウクジラをいけすに放し、それを釣り竿で一本釣りしようと言う計画であった。カジキ釣りに飽きた金持ちから1人5000万円とって密かにクジラを釣らせようと考えたのだ。だいたい1600km四方あればクジラを入れる釣り堀が完成する。そこにクレーンくらいの竿を用意し、オキアミをエサにして釣ると言う豪快極まりない釣りの大計画だったのだ。
「でもグリーンピースが文句言いますよね」
「そうだな。面倒な連中だな」
「それならこの前話した"ミニチュアのアフリカ象を作る"って方が現実的ですかね」
「ペットにして売りつける話だろ?」
「ライオンとかもいいですよね」
「でもそれなら虎の子供をさらってきて"新種の猫"だって言って売りつけたらどうだ?」
「そりゃ名案!」
「…しかしイマイチ面倒だな」
「何か無いですかね?」
「あ!あった」
「何だ?」
「カブトムシだ」
「カブトムシですか?」
「そぉよ。カブトムシを日本から持って来て繁殖させて売りさばくんだ」
「すげぇ名案だ」
私はカブトムシが好きだった。アメリカに来た時にヘラクレスオオツノカブトを山に探しに行ったくらいだ。でも北米には生息していないことを聞いてガックリ来た。
「で、具体的にどうするんですか?」
「俺様が日本でカブトムシを捕まえて卵を生ませる」
「ほぉ」
「そして、その卵をここまで持ってきてふ化させるわけだ」
「税関とか大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ」(注:大丈夫じゃ無い)
「私も手伝いますよ」
「まあ、繁殖に失敗しても山に放せば"新種のカブトムシ発見"ってことになるしな」
私は夏休みに日本に帰国した。私の住んでいた場所は山に近く、カブトムシなんぞ腐るほどいた。しかし1人でやるのは面倒なので、友人のKを誘った。
「おい、カブトムシを捕まえに行かねぇか?」
「カブトムシだぁ?」
私は呆れているKに計画を話した。
「でな、K。それだけじゃねぇんだ」
「…何だよ?」
「卵を生ませた後はカブトムシに用はねぇわけだ」
「…で?」
「1匹500円で東京で売るんだ」
「…ん?」
「500匹捕まえれば25万円だぞ!」
「よし、その話乗った!」
そして私とKは準備を始めた。
「どうする負け造?エサは」
「んー、本当は蜂蜜だの黒砂糖だのを調合するんだが…」
「面倒だな」
「そうだな。西瓜(スイカ)にするか?」
「じゃあ行く途中にスイカを買って行くか」
と私とKはスイカを1個買って山に入って行った。
「この辺にするか」
と、雑木林の一角に生えているクヌギの木にスイカを放り投げた。
スイカは割れて下に転がった。
「木の幹にもこすりつけねぇとな」
と、割れたスイカをクヌギの木にグリグリこすりつけた。
「これで準備オッケーだ。後は翌朝来ればカブトムシ取り放題だ」
と、私とKは雑木林を後にした。
…翌日の早朝…
「さあてっと。カブトムシは何十匹いるかな?」
私達は懐中電灯を持って山に入って行った。
「お、あそこだ。あそこ」
と、前日のスイカの場所まで分け入って行った。
「…」
「…」
「おい、K?あのいっぱいいる黒い虫は何だ?」
「…ゴキブリだ」
「じゃあ、あの黄色いヤツは何だ?」
「…蛾だ」
「ってことはあの"うすらデカい蜂"はスズメバチだな」
「カブトムシはどこだ?」
「お?あれだ。でもメスが1匹だ」
「オスはどうした?」
「いねぇようだ」
「それじゃあ交尾ができねぇ」
「帰るか?」
「そうするべぇ」
と、あっさり挫折した。
民家が近いので、ゴキブリが寄ってきてしまうのが原因のようだった。
こうして25万円を取りそこねた。
そしたらKが提案してきた。
「負け造、オオクワガタはどうだ?」
「あの"黒いダイヤ"か?」
「オオクワガタならいる場所を知ってるぜ」
「それなら1匹デケーヤツを捕まえれば大儲けだ」
「でもな…問題がある」
「何だよ?」
「その場所は"マムシの巣窟"なんだ」
「命がけか…」
「行ってみるか?」
「…ダメだ。死にたくねぇ」
金儲けに失敗した私は実家でウダウダしていた。
そしたら父親がデカい箱を持って来た。
「負け造、カブトムシを探してるのか?」
「まあな。でも失敗した」
「その話を知り合いにしたら今日持って来てくれたぞ。ほれ」
親父の持っている箱を見たらカブトムシが30匹くらい入っていた。
「で、でかした。親父!」
私は箱の中のカブトムシを見た。ほとんどオスだった。これではメスの取り合いになってしまう。しばらくそのカブトムシを飼っていたが、交尾や卵の確認が面倒になった。そしてカブトムシたちは近くの幼稚園に引き取られて行った。
「負け造さん、カブトムシはどうでした?」
アメリカに戻った私にFは聞いてきた。
「…ダメだった」
そうっすか。いいアイディアだったんですけどね…」
「やっぱりクジラかな?」
「…クジラですか」
そしてまた、私とFは"金儲け"の話を考え始めた。
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