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【家族の肖像】米国留学曼荼羅−67 |
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キースが寮のルーム メイトだった当時、週末良く出かけていたのはゲーム センターだった。 キースが手に入れたシボレー ノバはまさにオンボロ車で、まともなのはエンジンだけだった。このエンジンはV8の5リットル エンジンだった。本当はキースは新車が欲しかったらしいのだが、親父がそれを許可しなかった。キースの親父はシボレー カマロのコレクターであり、自宅に5台以上の年代の異なるカマロが置いてあると言う話だった。しかもそれらのカマロのメンテナンスは親父自身が行っていた。その関係もあり、キースの親父はエンジンのコンディションと値段を基準にキースに買う車を決めたらしかった。しかし、内装はボロボロで、何と言ってもカーブを曲がるたびに助手席のドアが開くのがかなわなかった。でもキースはこのノバのベンチシートがことのほか気に入った様子であり"ぐへへ、このシートなら助手席の女の子と密着し放題だぁ…"と言っていたが、ノバの助手席に女の子が座ることは無かった。 キースが車を手に入れる前はどうしたかと言えば、それは悲惨であった。大学のキャンパス内しか遊ぶ場所が無かった。唯一遊ぶ物があったのはStudent Unionと呼ばれる建物で、そこには映画館、食堂、郵便局等の施設があった。ちなみに私が最初に行ったアメリカの映画館はこの映画館で、多分3回目かそこらに見たのが"ターミネーター"であった。Student Unionは夜遅くなると閉まってしまう。それまでだったらビリヤードとかテレビ ゲームで遊ぶことができた。夜中になったらどうにもならないので、寮に帰って寝るしか無かった。しかし熟睡なんかできたもんじゃ無かった。1ヶ月に数回は夜中に火災報知器が鳴り響くのだ。当然学生のいたずらなのだが、これによって寮で生活しているすべての学生が外に出される(このいたずらは見つかるとかなりマズい)。真冬の夜中に外に出されて文句を垂れながら横を見ると、男子寮なのに何故か女の子が毛布にくるまってブーたれていたりした。 この頃は現在と比較して事情が大きく異なっていた。特に通信関係だ。今なら携帯電話だのインターネットがあるが、当時はそんなもんは存在しなかった。例えば外から寮に電話をかける場合、寮の外線番号に電話して部屋番号とブザー"1"または"2"を指定する。ブザー"1"(Buzz 1)は私でブザー"2"はキースという風に決まっており、外線を受けたオペレーターがブザーを鳴らす回数で私かキースを識別するのだ。このブザーが部屋で鳴ると廊下にある電話を取って話をすることになる。当然、ウンコをしていたりシャワーを浴びたりしていると電話を取れないので、寮の自分のボックスに紙っぺらのメッセージが残ることになる。したがって寮に戻って来て一番最初にすることは自分のボックスのチェックであった。これが面倒になった私は部屋に電話回線を引き込んだ。 そして電話器を買った。私は近視であり、なおかつ眼鏡をかけてダイヤルするのが面倒なので足の指でも押せるほどのデカイ数字ボタンを持つ電話器を買った。しかし机の上に置くとどうも邪魔だ。しかも電話器本体がデカイ。どうしようかとキースと悩んでいたらスティーブが部屋に入って来て"こんなの簡単だ"と言いながらコンクリート ブロックの壁にハンマーでデカイ穴をあけて釘を叩き込み、そこに電話器を掛けてくれた(しかも失敗した穴がもう一つ)。これで良しと思ったらそうもいかなかった。ウィングに住んでいる他の野郎たちは電話を持っていないので、私のところを連絡所にしやがった。だから週末の早朝とかに電話で叩き起こされることも度々であった。 コンピュータはどうかと言えばこれもお粗末だった。MS-DOSは登場したばかりであまり知名度は無かった。授業で無理矢理取らされたコンピュータのクラスは拷問みたいなBASICだった。このプログラムは命令文をひたすら打ち込んで行って最後に"RUN"と打ち込んでENTERキーを押す。打ち込んだ命令文に誤りが無ければプログラムが文字どおり走り出す。1箇所でも間違っていれば走らない。でもどこが間違っているかは教えてくれない。だから頭に来る。当時のPCと言えばマッキントッシュであった。 そう言えばこの頃にスティーブに言われたことを思い出した。 とにかく渡米してから1年くらいは遊ぶ場所が少なかった。車が無かったのが痛かった。エロ映画館なんか1時間もかけて自転車で通った。ある時、エロ映画館からすっきりした顔で出て来て帰ろうと自転車を漕ぎ出したら英語学校の日本人オバちゃん教師とばったり会ってしまった。 寮に帰って来て良く考えたらエロ映画館から出てくるところを見られていたことに気がついた。 |
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