「葦牙ジャーナル」54号(2004年10月) 巻頭言
闘ってこそ未来も拓ける
今年の夏はいつになく暑く長かった。その暑い日々の終わりに最もテレビを賑あわし誌紙面を飾ったのは、イラクでも北朝鮮でもなく、プロ野球のスト問題である。
問題の発端は、近鉄バッファローズが経営難からオリックスとの合併を発表したことだった。
当初は球団経営者たちの間での議論に終始し、さらに球団を減らし一リーグ十球団が流れになりかかった。
しかし近鉄のファンが合併に反対したデモ行進や署名活動を行う中で、選手会も動き出しスト権を確立して経営者側との交渉に入った。
選手会の要求は、球団削減により職場が狭められる選手の身分確保に根ざしている。
選手会が二軍や裏方選手をも含む労働組合である以上、ストライキは正当な組合活動である。
しかし、ストライキは試合を楽しみにしているファンを裏切る行為でもあることから、議論は沸騰し巷の賛否も二分されるかに見えた。
かくて一週目のストは見送られが、二週目のストは決行された。
球団側が次善の策としての来期からの新規参入を拒み、セ6パ5球団に固執したからである。
それを強行に主張したのは読売・西武・オリックスであり、財界主流に属する彼らは竹中金融相の金融再建策を支持し、ダイエー本体の産業再生機構送りに期待したからだという。
そのあかつきにはダイエー球団をロッテと合併させ、一リーグ十球団にするというのが彼らの思惑だった。しかしファンは、こうした球団側のやみくもに縮小を目指す方針に反撥した。
日頃大企業のリストラ、賃下げ、非正規労働の拡大といった横暴に不満や不安を抱きながら我慢し続けた大衆の鬱憤が、一気にはけ口を見いだしたともいえる。
球団側や一部マスコミの予想に反し、選手会のストは圧倒的なファンに支持されたのである。
結果として球団側は譲歩を余儀なくされ、セパ各六球団制は来期も維持される見通しとなり、第三週のストは回避された。
これにより問題の本質が解決されたわけではないが、プロ野球が大企業経営者の道楽や玩具ではなく、選手とファンも含む国民的な文化であることが確認された意義は大きい。
それを成し遂げたのが、数十人で始められたデモ行進や街頭署名であり、選手会のストを背景とした粘り強い交渉であった、という点は留意されるべきだろう。
運動を起こし闘ってこそ未来も拓けるのである。
(牧 梶郎)