「葦牙ジャーナル」63号(2006年4月) 巻頭言


二本のガセネタ・メール

 言うまでもなく、その一本は民主党・永田寿康がまされた「偽メール」である。武部自民党幹事長の次男に、ホリエモンから三千万円の金が渡ったとするメールである。
 この「事件」についてはマスメディアも、永田議員と民主党のバッシングに余念がなく、朝日新聞に至っては「何をぐずぐずしている」(3月23日社説)とまで宣う始末である。
 私は永田議員のファンでもなく民主党の支持者でもないが、自民党からマスコミに至る永田バッシングほど不可解なものはない。永田議員は言論のお粗末さを問われるのは当然としても、懲罰委員会などにかけられる筋合はまったくなかった。
 なぜなら、永田議員のしたことは「政治の論議」を展開しただけであって、それは武部幹事長がホリエモンの手を取って「私の弟です、息子です」と言った類の話と同じレベルのことだからである。その武部氏の言論の方が国民への害毒は大きかった。

 もう一本の「ガセネタ・メール」は、ブッシュから小泉首相に送られた「イラク参戦要請メール」である。これはメールの全面が黒く塗りつぶされていたので、国民の目に触れることはなかったが、その内容は「イラクには大量破壊兵器がある。フセインとアルカイダはつながっている」というものであった。
 小泉はこのメールにしたがって、国会で熱弁を振るい、ついには自衛隊をイラクに派遣した。ところが、このブッシュの「ガセネタ・メール」を読まされて国会と国民を欺いた小泉首相については、懲罰委員会の話も謝罪広告の話も出ない。
 朝日新聞も、「小泉よ、何をぐずぐずしているのだ」という社説を出すこともない。どちらの「ガセネタ・メール」が国民により多くの害毒を与えているかは明らかである。小泉首相が何の責任も取らないのに、何で永田議員だけ責任を取る必要があるだろうか。  (武藤 功)