「葦牙ジャーナル」78号(2008年10月) 巻頭言

「若者が生きられる社会」宣言

 『世界』10月号は「若者が生きられる社会」宣言という特集を組み、労働、社会政策の転換をよびかけた。共同提言者は首都圏青年ユニオンなど個人加盟ユニオンの代表や学者・研究者8人である。
 まず『世界』がこのような特集を組むこと自体、若者の貧困が社会問題化している現われである。1999年から2003年にかけての労働者派遣法の改正は、膨大な非正規労働者を生み出した。ワーキング・プアと呼ばれる非正規雇用者の数は2003年には200万人を超えた。

 かつて、社会的弱者とは高齢者や母子家庭、心身障害者などであり、一般的な若者は弱者ではなかった。彼らは健康でさえあれば働いて食うに困ることはなかったのである。日本型雇用と年功賃金に支えられた雇用の安定と生活保障の枠組みは現在、急速に崩れつつある。
 非正規雇用の若者が低賃金で生活を維持することが困難であれば、高齢者や障害者などの従来型の「弱者」はさらに困難な状態を強いられるだろう。つまり若者が生きられない社会というのは、すべての人間が生きられない社会なのである。

 『世界』の共同提言は二つの点で注目に値する。一つは細かい点では意見の相違があるだろう8人が「共同提言」という形で政策をまとめたこと、もう一つは、若者の貧困問題は一部の人間の社会問題ではなく、すべての世代にとって避けられない問題になったということである。

 「若者が生きられる社会」とは、「人間が生きられる社会」ということである。われわれは様々な「宣言」を持っている。マルクスとエンゲルスが「共産党宣言」で、「万国のプロレリア団結せよ!」と呼びかけたのが1848年、それから160年後の日本で提起された「若者が生きられる社会」宣言は現代の新たな改革につながるだろうか?
(尾張はじめ)

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