「葦牙ジャーナル」80号(2009年2月) 巻頭言
資本主義体制下の民主主義の瓦解
2008年9月に金融危機が米国のウォール街から始まり、世界へその波紋が広がった。
ブッシュ政権が救済対策として7千億ドル(約70兆円)の政府資金を投入することを米議会に提案したのは9月20日で、ポールソン財務長官が議員に配ったのはたったの二枚半に過ぎない提案書であった。本案を通過させないために9月28日に、カリフォルニア州のBrad
Sherman議員が反対演説を行った。この演説の一部始終が議会専用のケーブルテレビであるc-spanに録画され、現在youtubeで参照できるようになっている。
シャーマンの演説の大半は財務長官の提案に対する批判ではあるが、演説の中に妙なことを言う。つまり、この案を通すために議員をパニック状態に陥れ、不安な心理状態を積極的に煽っていた人達がいたと主張した。具体的にどの議員に対して誰が何を発言したかは言及されていないが、「戒厳令が布告される」という話が「脅し」として使われていたことを説明した。
シャーマンによれば、「多くの議員に対して『この案が否決された場合、次の月曜日には株が数千ポイント下落し、翌日も更に数千ポイントも下落するであろう』と、そして、幾人かの議員に対しては『否決された場合は米国全土において戒厳令が布告される』といわれた」そうである。このような「脅し」が米国議会において指摘されたにもかかわらず、日米両国のマスメディアはこの話は一切取り上げていない。後に、シャーマンは「当時、救済案について交渉している最中に、信じられない話が多くあった。そうした極端な話の一例とした」という。
9月29日に米下院議会において再提出された時には提案書が1010頁に増えたが結局否決された。そして、10月1日に上院議会において、451頁の提案書になり、最終的には8千5百億ドル(約85兆円)の救済案として通過し、その後、下院議会に送り込まれ、通過した。通過してから数時間以内にブッシュ大統領の署名をもって正式な法律となったのである。
戒厳令が布告されるという話は件の案を通過させるために「否決された場合は暴動が起こり、戒厳令も布告せざるを得ないかもしれない」という程度の話であったと思うが、私たちは決して無視できる話ではない。
絶望の秋と軍靴の響き―富裕層救済対策はファッショへの第一歩になるのか。
(ジグラー・ポール)
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