まくらの憂うつ・・・
僕の名前は「まくら」
ダイバー達は僕を「たこのまくら」と呼ぶけれど、彼らは僕の本当の名前を知らない・・・
僕の名前は「まくら」・・・海の底で暮らしている・・・
上を見上げると、今日は良い天気なんだな・・・
光の帯びが白い砂床から反射して少しまぶしい・・・
あ〜良い気持ち・・・
今日は頭上を通り過ぎて行くダイバー達がまったくいない・・・
魚達も余裕で泳いでいく・・・
僕らの休日・・・嬉しい・・・。
昨日なんか、まったく参った・・・。
透明度は最悪!なんだか周りはシューシューボコボコ騒々しい気配だけど、
この透明度じゃ奴らはお手上げだな・・・
さてと昼寝でも・・・と僕がウツラウツラしていると、
いきなり身体が注に浮いた!
あいたたた・・・なんだこの野郎!触るなよ!
ボコボコシューシュー音のする方へ目をやると・・・
やっぱりヘタリ目のダイバーだ!
こいつらに「まくら語」は通じない・・・ただ、シューシューボコボコ言ってるだけ・・・
やめろやめろ!ひっくり返すな!顔近づけんナ、鼻水垂れてるぞ!
うわぁ〜!ボコボコの元を口から離してどうするんだ!それないとあんたは・・・
うわぁ〜僕を食うのか?!やめろ!かじるな!
おまえ口くさいぞぉぉぉぉ!!!
ぴーっす!って・・・あんた、ただのうけねらい・・・?
うわっ!うううっ!うぐぐぐぐ!なんだよこれ!僕の口に何か入れようとしている!
なんだこのピンクの固まり・・・魚臭いぞ!うぐうぐうぐ・・・変な味・・・
やめろやめろ!無理やり入れるな!うぐうぐうぐ・・・くっ苦しい・・・
でた!白い板!ペンを取りだして何か書き始めた。
僕はたくさんのダイバーを見るうちに彼らの読み書きを覚えたんだ!
何々・・・?「たこのまくらの餌付け!」
ふっふっ・・・ふざけんなぁ〜!!!
だいたいなんで僕の口が何処にあるか知ってんだ!
まったくおまえらには頭に来る!
この間なんて「忍者ごっこ」だなんて言って僕を手裏剣代わりにヒラヒラ飛ばしやがって!
目が回って吐いちゃったんだぞ!
だいたい人間様が忍者なんて聞いてあきれる・・・。我々の足元にも及ばない!
僕ですら、「忍法死んだフリあるいは置物のフリ」が出来る!
これが蛸やカサゴ君達の隠れ忍法に至っては、まさに芸術である!
イザリウオやアンコウ連中の忍び忍法「チョウチンフリフリパックンの術」は神業である!
まだまだあるぞ!・・・いやいや、そんな場合ではない!
とにかく僕を離せ!そんなもの食べたくないんだ!
僕は自称コダワリのグルメまくらだ!
海底の微生物関係にはちょっとうるさいんだぞ!
温和で通っている僕を怒らせると・・・
・・・何も出来ないんだからもうやめてくれ!やめろって言ってるだろ!
聞こえないのかぁ!!!
これだけダイビングに来るなら少しは「まくら語」なり「さかな語」なり勉強しろよ!
おまえらの事は必ず「お魚新聞」に投書してやる!
要注意ダイバーリストに載せてやる!
・・・今、助けに行ってやる・・・
・・・・・・・・・・えっ?・・・
・・・今、助けに行ってやる・・・
・・・・・・・・・・・誰?・・・
・・・もうすぐ着くぞ・・・
とその瞬間、明るかったハズの頭上がいきなり暗くなった・・・。
あっ!
ウシエイのじじぃ!
じじぃ!僕の悲鳴が聞こえたのか!?
ダイバー達は突然現れたじじぃに大騒ぎ!
あ〜・・・ハラホレヒレハレ・・・ボト・・・
やっと、やっと開放された・・・安堵の砂床・・・もう離れたくない!
じじぃは?・・・あっ!ダイバー達に追われている!
・・・じじぃ!じじぃ!大丈夫か!?・・・
・・・大丈夫じゃ・・・おまえに怪我はないか?・・・
僕は、僕は腹いっぱいになって気持ち悪いだけさ・・・
・・・そうか・・・静かに隠れていろよ・・・
ばっふぅぅぅぅん・・・
じじぃが僕にほんのちょっと砂をかけてくれた・・・。これで、もう奴らに僕は見つけられない
。
・・・グッスン、グッスン・・・ありがとう、じじぃ・・・。
・・・泣く奴があるか・・・
・・・あっ、何処に行くんだよぉ、じじぃ・・・
・・・こやつらを浅瀬に送り届けてやらんとな・・・
この見晴らしじゃワシを追っているうちに迷うじゃろうて・・・
じじぃはダイバー達を浅瀬まで引き付けてから、急に身を翻して姿を消した。
ダイバー達はじじぃの早業に付いて行けずキョロキョロしている・・・。
・・・じじぃ!じじぃ!・・・
・・・もう大丈夫じゃろぉ、ワシは帰るぞぉ、孫の子守りがあるんでなぁ〜・・・
・・・ありがとう、じじぃ!・・・
・・・次は私の番ね・・・
えっ?誰???
チャプン、チャプン・・・サーァー・・・
あっ、あなたは寄る年波の波子さん・・・!
・・・ごめんなさいね、まくらさん。私、海の中では何にも助けてあげられなくて・・・。
でもね、ここまで来れば大丈夫。ダイバー達を陸に押し返してあげるわね・・・。
あ〜、ダイバー達はウシエイのじじぃの登場で嬉しそう・・・。
じじぃがなぜ現れたかなんて知らないんだ。
そして、波子さんに優しく押されて帰って行く・・・。波子さん、ありがとう・・・。
あっ!最後のダイバーが砂床に落ちていた一升瓶を拾って行った・・・。
片付けてくれたのかな・・・。
そんなこんなの昨日の今日で僕は胸焼けしている。
でも、今日はゆっくり出来そうだ・・・
はぁぁぁぁ〜・・・昼寝、昼寝・・・こんな静かな日は昼寝に限る・・・。
また、やつらがやってくるその日まで、ゆっくりこっくり眠るとするかぁ〜・・・
しかしなぁ〜ダイバーよ・・・。僕らに触ってくれるなよ・・・。
おしまい・・・。
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