トップページミシンを語る > チャネル別商品仕立ての謎(1)-ユーザの混乱


チャネル別商品仕立ての謎(1)-ユーザの混乱


家庭用ミシンでは、特定の販売チャネル向けに独自商品を仕立てることが常識化
している。このことは「実録!ミシン訪問販売」の中でも書いた。

このチャネル別商品設定は、悪いことなのだろうか?

一般的に、特定チャネル向け専用商品は、通常品より安く販売される。
ダイエーやイトーヨーカドーに行けば、いわゆるPB(プライベートブランド)商品を
見つけることができるだろう。ほとんどの場合、特価品として通常品より安い価格が
付けられている。

PB商品が全盛だったのはバブルの頃だったように思う。
最近では通常商品、すなわちNB(ナショナルブランド)商品との価格差が小さく
なっており、かつてのような勢いはなくなっているようだ。

PB商品としては、シーチキン(ハゴロモ)や牛乳(雪印の青いパッケージ)が
代表的だが、最近ではPB商品なのかNB商品なのか、よく見ないと分からない
場合も多い。(NB商品にチャネルの名前を印刷してあるだけだったりする)

消費者であるエンドユーザにとって、PB商品とNB商品の差は何か?

誰が作ったのか分からない怪しいPB商品だったら敬遠されるかもしれないが、
NB商品と変わらないPB商品であれば、「安い方が良い」というだけのことだろう。
ハゴロモのシーチキンと、ハゴロモが作っているヨーカドー専用シーチキンが
同じものなら、安い方を買えば良いのだ。

(マーケティング的に話すと、メーカ主導のNB商品、チャネル主導のPB商品、
ということになり、本が一冊書けるくらい色々な話があるのだが、ここでは省く)

もうひとつ別の切り口で話をしてみよう。
かなり有名な話だが、カップ麺の多くは関東と関西で味が違う(特にうどん)。
スープが黒くて味が濃い関東と、薄味透明スープの関西で、ユーザの好みが
明らかに違うからだ。これはカップ麺のメーカが、関東向けと関西向けの別商品を
作っている。

この手の「ニーズ差による商品設定」は、正しいマーケティング手法だろう。
寒冷地仕様の自動車や、関西弁対応のワープロソフト(←冗談ですよ)は、
必要性に基いて生まれてきている。

さて、ミシンである。

カップ麺や自動車のような地域によるニーズ差はないと思われる。
北陸は着物、大阪はゾウキン、東京は刺繍、なんて話はないだろう。

では、価格政策だろうか?
もし、特定チャネル向け専用商品(PB商品)が通常品(NB商品)と同等機能で
安いとすれば、マーケティング上の意味がある。ユーザにとっては、事実上同じ
商品がモデル名だけ違って安いのなら、こんなに結構なことはない。

ところが、ミシン業界におけるPB商品は、逆に高いケースが多いのだ。
PB商品で安いものもあるにはあるが、これは多くの場合、いわゆる「おとり」と
して使われる1万円や2万円のミシンである。

こういった状況では、モデル数を闇雲に増やしてユーザを混乱させ、
価格比較できないようにするのがメーカの狙いだと言われても仕方ない。

一般的なマーケティング理論から考えると、「PB商品=悪、NB商品=善」とは
言い切れない。シーチキンや牛乳の例を見ても分かる通り、良い場合もあれば
悪い場合もある。時代によっても違うし、ある意味ではマーケティング手法の
流行廃りのようなものだ。

ところがウェブ上のミシン業界では善悪がはっきりしている。
ウェブ上で家庭用ミシンを扱っているショップの多くは、自分たちがNB商品だけ
扱っていることを訴え、「PB商品に騙されるな」といった警告を発している。
よく見ると、自分たちもPB商品を扱っているのに、そのことには触れず、
一般論としてPB商品を貶しているケースもある。

僕にはどうもその構図が理解できない。
おそらくミシン業界には、一般人では計り知れない慣習や常識があるのだろう。
僕が言えることは、「PB商品は避けた方が無難」ということに過ぎない。

最後に、チャネル別商品仕立てによる価格差の例を挙げておく。

以下の3種類のミシン(蛇の目)は、全く同じ中身だと思われる。
しかし、販売チャネルによって定価が相当異なっている。
(一般市場向け標準機は「A3560」だと思われるが確証はない)

◇ Crown Lady 5004DX: 138,000円。石田系チャネル(ヨドバシ含む)。
◇ Selfy 3470: 128,000円。サクラヤ。
◇ A3560: 108,000円。ユザワヤ。

定価が高い方が高級だと考えるのが普通だが、これらは全く同じ商品なのだ。
従って、実際に購入する場合は、それぞれの販売価格の絶対値で比べなければ
いけない。割引率で比べると判断を誤ることになる。
(それ以前に、この3種類のミシンが同じものだと分かるユーザはいないだろう)

ここで挙げたようなケースは他にいくらでもある。
シンガーでは「アプリコット」「フィットライン」「フェアリーランド」といったシリーズが、
おとり販売で後から出てくる高額ミシンである。
ブラザー「センシア」、JUKI 「モンレーブ」なども特定チャネル向けのシリーズ名だ。

チャネル別商品仕立ては極めて複雑で、非常に謎めいている。
少なくとも、ユーザ第一で考えられた戦略でないことは間違いない。

こんな状況の中で、どうやってミシンを選べば良いと言うのだろう?


■次に進む■
■前に戻る■
■「ミシンを語る」のトップページに戻る■

■「ミシンの迷信」トップページに戻る■