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データで見るミシン業界(2)-輸入品と国産品


僕の家に来たミシン販売員は「台湾製ミシンは品質が悪い」と言った。
これは高額の日本製ミシンを売りつけるためのセールストークだろう。

アジア製品の品質が日本製とまったく同じかと言えば、そうではないかもしれない。
仮に同じ物を作らせれば、几帳面な日本人の方が丁寧に作るだろう。
しかし、日本で作れば製品コストは何倍にも跳ね上がる。人件費が高いからだ。
このコスト差は、品質差とは比較にならないほど大きいと僕は感じている。

現在の家電製品のほとんどは、台湾を始め、アジア各国で生産されている。
試しに、家にある家電製品の原産国を調べてみると良いだろう。
(製品の裏や横に貼ってある小さなシールやプレートに記載されていることが多い)
テレビにしろ掃除機にしろ、台湾製、マレーシア製、タイ製、インドネシア製、中国製、
アジア各地で生産されていることが分かる。ミシンだって例外ではない。

このように家庭にいくらでもあるアジア製品だが、「こりゃヒドイ品質だ」などと感じた
ことがあるだろうか? 一昔前ならまだしも、現在のアジア製品の品質は問題ない
レベルに達している、というのが僕の実感である。(ちなみに、品質イメージの良い
ソニー製品が極めて壊れやすいのは別問題)

では実際の数字で検証してみよう。
前回、1999年の家庭用ミシン(ロックは含まず)の台数規模を140万台と言ったが、
それを輸入品(ほぼ100%アジア生産品のはず)と国産品に分けてみる。


<家庭用ミシン台数(1999年)>

輸入品

120万台

国産品

20万台
一目瞭然だが、圧倒的に輸入品が多い。 輸入品の比率は、1999年で85%を越えている。 次のグラフで分かる通り、輸入品の比率は年々高まってきているのだ。 では、家庭用ミシンのビジネスは輸入品によって成り立っているのだろうか? 答えを先に言ってしまうと、どうやらそうでもなさそうである。 生産のアジアシフトが進んだ現在でも、高額ミシンは日本で生産しているからだ。 金額で比較すると非常によく分かる。輸入品と国産品の比率はほぼ半々である。 <家庭用ミシン金額(1999年)>

輸入品

100億円

国産品

120億円
前回も言った通り、家庭用ミシンの市場規模は縮小している。 台数減はそれほど顕著ではないが、金額ベースで激減しているのだ。 1996年に350億円だった市場が、1999年には220億円になってしまっている。 (おそらくこれが、メーカが新規投資を躊躇する最大の要因だろう) つまり、1年間に売れる台数はそれほど減っていないが、1台あたりの値段(単価)が 下がっているため、家庭用ミシン全体の売上金額は少なくなっているのだ。 かなり頻繁に新製品が出てくる家庭用ミシンだが、技術的に大きな改善があるようには 見えない。大した変更点もないのに、マイナーチェンジ機が続々と出てくる印象だ。 そう言えば、僕の家に来たミシン販売員は、「この10年でミシンの機能はほとんど 何も変わっていません」と言い放っていた。さすがにそこまでではないと思うが、 割と実態に近いのかもしれない。 新製品効果というものは確かにある。 誰だって、去年発売の製品より、今年発売の製品の方が良くなっていると思うはずだ。 しかし、家庭用ミシンのほとんどは、外装(見かけ)を変えたり、ちょっと構成を変えたり しているだけではないだろうか。それをユーザに対する目くらましと言われても、 メーカは文句は言えないだろう。 さらに、販売チャネルによって異なるモデルが山ほどある。 内容はほとんど同じなのに、モデル名が違うのだ。 ユーザの混乱は加速度的に深まる。 僕の個人的な印象に過ぎないが、ミシンメーカは、ユーザのためではなく、販売する 人のために新製品を投入しているように見える。 ミシンメーカの人は言うかもしれない。「家電製品だって同じじゃないか!」 まあ、それを完全に否定はしない。冷蔵庫やエアコンは、原則として毎年モデルチェンジ されており、その多くはマイナーチェンジだ。 しかし家電製品は、何年かに一度は新しい技術を持った商品が投入される。 たとえば遠心力分離の洗濯機。あるいは排気しない掃除機。 そこにはメーカとしての「努力」がある。 メーカは常に斬新な新製品を投入すべく努力しなければならないはずだ。 その努力をやめたら、それはもはやメーカではなく、バッタ屋に過ぎない。


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