チャンス到来!
友人2人とHamとKeiの4人で久しぶりに老香港酒家で夕食を食べに行き、師と仰ぐ施蓮宗氏とお喋りをしていた時のことである。
次回の香港滞在中には再び元朗の大榮華酒樓へ行くつもりであることを話し、どんな料理がおすすめか尋ねていた時のことであった。
Ham「ところで施さん、今度はいつ香港へ行かれるんですか?」
施さん「連休後やね。連休中は上海に行って蟹を買い付けてから香港へ行くねん」
Kei「ニアミスですね。私たちは連休中ですから」
施さん「そうやなぁ。連休の終わる日に香港へ行って2日ぐらいいてから帰るつもりや」
Ham&Kei「連休の終わる日…もしかして?」
施さん「うん、19日には香港へ行くで」
Ham&Kei「あら~1日重なりますねぇ~(思わず頬が緩む)」
施さん「そしたら一緒に『榮華』行こか?夕飯一緒に食べよ」
Ham&Kei「ヤッタ!(飛び上がって喜ぶ)」
偶然にも1日だけ旅程が重なったおかげで図々しくも施さんと夕食を共にしていただく話を取り付けてしまった。
しかも一度ゆっくり食事をしたいと思っていた大榮華酒樓である。
まさに絶好のチャンスが転がり込んできたのであった。
そのやりとりを見ていた友人2人も、「これは一緒に行かなあかんやろ」と決心して急遽合流することになった。
「圍村菜(田舎料理)専門店」とうたっている店だけに、どんな料理が食べられるか楽しみだ。
食神あらわる
香港グルメ界では「食神」(映画のタイトルではない、念のため)と呼ばれ、地元の雑誌『飮食男女』にも料理のページをもつ梁文韜氏は、この元朗の大榮華酒樓の社長である。
美食探訪こぼれ話では「料理を見ただけで味のわかる大先生」として紹介しているので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれない。
さて、約束の夜、メンバー全員が揃ったところで梁文韜氏が登場した。
料理研究家の櫻井さんから話には聞いていたが、6年間でますます恰幅がよくなられて、これならばご利益もきっとあるだろう。
最初は顔を出しただけ、次には新兵器とおぼしき鍋と小型カセットコンロのセットを持ってきて、施さんの意見を求めていた。
そして、次に現れた時には(お色直しみたい)首からいくつものメダルをぶらさげていた。
何やら世界的にも非常に権威のある賞を受賞したらしいがよくわからん。
さて、梁さんが組んでくれた料理は次の通り。
◆蝦子桂花炒魚翅(エビの卵入りフカヒレと卵の炒めもの)
◆燕窩魚雲羹(ツバメの巣入り魚の頭のスープ)
◆脆皮豆腐拼鍋貼(豆腐の衣揚げ)
◆片皮鴨兩食(ペキンダック)
◆圍頭五味雞(鶏肉のスパイス風味漬け)
◆鮮腐竹蒸生魚片(ライギョと湯葉の蒸しもの)
◆科夾冬瓜件(トウガンと金華ハムの煮込み青野菜添え)
◆絲苗砵仔白飯(ラードかけご飯)
◆魚湯菜遠手打生麵(青野菜入り手打ち汁そば)
◆花旗蔘冰花炖蓮子(朝鮮人参とハスの実の甘いスープ)
◆奶黄馬拉糕(カスタード入り蒸しカステラ)
◆奶黄水晶飽(カスタード入りくずまんじゅう)
蝦子桂花炒魚翅
ビンボーたらしい話で恥かしいのだが、フカヒレの炒めものは話には聞いていても食べるのは初めてだ。
モヤシほどの太さのフカヒレをフワフワの卵が包んでいて、これはなかなかおいしい。
フカヒレを炒めるとフカヒレが痩せてしまうので、それなりの量を使うらしいし、実際フカヒレの炒めものは高い。
これにはフカヒレがタップリ入っていて満足感高し。
しかしいきなりフカヒレでいいのか?
燕窩魚雲羹
フカヒレにツバメ…と看板に似つかわしくないメニューだと一瞬思うが、合わせたのが魚の頭の皮や肉のみじん切りというミスマッチが面白い。
魚の頭独特の風味が、ツバメのスープを平凡にしていないところが「らしさ」かもしれない。
少しクセのある風味をコショウが中和しているが、これは好き嫌いが分かれそうだ。
脆皮豆腐拼鍋貼
豆腐に味のついた衣をつけて揚げたものとエビのすり身をトーストパンになすりつけて揚げたものの盛り合わせ。
こういう豆腐料理は越華會でも見かけたことがある。
「味のわからんヤツ」のそしりを覚悟で言えば、衣の味はポテトフレークでできたスナック菓子の味に非常に似ている。
豆腐はともかくエビのすり身揚げは私たちには少々ヘビーであった。
片皮鴨兩食
アヒルを丸ごと炙り焼きにしたものと言えばペキンダック。
ペキンダックは「兩食」とあるように2つの食べ方で楽しむようになっているが、切られた肉を見るとちゃんと肉が付いている。
広東料理のスタイルでは、皮だけを切って食べ、残りの肉は別の料理になって出てくると思っていたが、肉がついているアバウトさがなかなかいい。
添えられたネギが束ねて唐辛子に通してあるという細工がしてあるところが高級料理店のようではないか。
2つめの料理はポピュラーな細かく切った肉と野菜を炒め、レタスに包んで食べるというもの。
どちらの食べ方も当たり外れのない味。
圍頭五味雞
北京ダックの他に家禽類の料理ということは普通では考えられないが、さすがに大人数だと何でもできるようだ。 醤油をベースに何種類かの香辛料を混ぜたタレの味を鶏肉がほどよく吸っている。
これはこの店の名物料理の一つらしい。
ムチムチした鶏肉と複雑な香りのタレが相まって、確かにこの店のスペシャリティという感じだ。
鮮腐竹蒸生魚片
ライギョの仲間を蒸した料理。
生魚の料理は初めてのHam。
Keiはタイ出張の時に東北部の田舎で食べたナマズの味にソックリだと主張している。
泥臭いのではないかと思っていたが、全くイヤな匂いがなくて食べやすい。
食べやすいどころかいい意味で淡水魚のおいしさを堪能できる。
添えられた湯葉とニンニクのみじん切りも秀逸だ。
今回私たちが一番気に入った料理だ。
科夾冬瓜件
一瞬、「えっ!パイナップル?」と思ってしまったがトウガンであった。
トウガンは煮込みが足りないのかやや固く、金華ハムの塩味と上にかかったあんかけが塩辛く、期待外れ。
しかしこういう塩辛い味は概して「田舎風」とも言われるので、案外これは正しい味付けと解釈することもできるのだろうか?
絲苗砵仔白飯
蔡瀾氏のお気に入りということで一時期有名になったラードかけご飯をこの店で食べられるとは意外であった。
1皿ずつ炊き上げられたご飯にラードと醤油をかけて食べるというもの。
貧しくて何も食べるものがない時代にはよく食べられたという。
熱いうちが身上の一品。
魚湯菜遠手打生麵
魚で取ったスープにサイシンを合わせた汁そば。
シメはこれぐらいシンプルな方がありがたいが、ご飯と麺、と主食が続く。
魚で取ったスープということだが、魚らしい匂いはせず、ごくごく普通のスープであった。
中に入っているのは手打ち麺ということだが、未熟者ゆえ機械打ちと手打ちの違いがサッパリわからないのが悲しい。
花旗蔘冰花炖蓮子
人蔘(ジンセン)と呼ばれる朝鮮人参の一種(?)を薄く切ったものとハスの実を甘く煮たデザート。
文字通りの漢方で、本来ならありがたくいただくべきところなのだが、朝鮮人参の苦手なKeiは半泣き状態。
「身体にいいよ。長生きしなよ」とゴチャゴチャ言い訳しながらHamにほとんど全部を押し付けたのであった。
奶黄馬拉糕
カスタードを挟んで蒸したカステラ。
セイロを開けると湯気が上がる。
とろけるように柔らかくきめの細かいカステラに、ほどよい甘さのクリームが薄く挟んである。 満腹でもついつい手が出るおいしさだ。
この馬拉糕に関しては、この店のものが恐らく香港一だと思う。
前回行った時は1切れだけしか食べられなかったが、今日はたくさん用意してくれていたおかげでアツアツのおいしいところを十分に楽しむことができて大満足。
奶黄水晶飽
カスタードをくず粉で包んで透明に蒸したまんじゅう。
温かいデザートが2つ続くのは珍しい(2つともおいしいからいいのだが)。
施さんの経営する老香港酒家ではおなじみのデザートだが、老香港酒家ではこの大榮華のものをお手本に作っているという。
さすが本家、並べ方は雑だが1つ1つの仕上がりが美しい。
中のカスタードの甘さも丁度よく、皮も薄くて食感を邪魔しない。
馬拉糕と同様、これもレベルが非常に高い。
豪華すぎる田舎料理
1皿目のフカヒレと2皿目のツバメの巣を除けば高級素材を使った料理はないはずなので、「これが田舎料理だ」と言われればそうかとも思うが、思ったよりもずっと豪華で内心驚いたことも確かだ。
もっとも施さんの手前、梁さんが気合を入れてメニューを組み立てたことは想像に難くないわけで、ある程度豪華な料理になるのは当然かもしれない。
逆に言えば滅多に食べられない特別メニューを食べることができたし、HamとKei2人だったら決して食べることのできないほどの品数を堪能できたし、大好きな馬拉糕をお土産に持たせてくれたし、施さんに深く感謝しつつ楽しく満ち足りた気分でホテルに戻ったのであった。
【2004年7月】
◆大榮華酒樓 新界元朗安寧路2-6號(℡24769888)
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