懐かしのプテラちゃんに再会!(6/1〜6/7,2002)
「やあ、また来たね」と、にこやかな笑顔で歓迎の握手の手を差し伸べてくれた。ヘッド・ダイブマスターのヌースとそのスタッフの面々である。アリ、ノンシックス、イワン、ロビン、リバテイなど、向こうからやってきたらすれ違うのも避けたいほどオソロシイ面構えをしているが、笑うとなんとも言えない優しく人なつっこい顔になる。そしてこの海のマクロ・ガイドとしては、みな飛び切りの腕前なのだ。1年3ヶ月前の私を思い出して、勢ぞろいして迎えてくれたのだ。嬉しいことである。前回訪問時のリゾートマネジャー、ケヴィン&ヴァル夫妻は契約満了で、新たにアメリカ人女性のエニーと交代している。ダイビング・インストラクターとしてスタッフのトレーニングにも当たる底抜けに明るい女性だ。
昨年3月のページにも書いた通り、ここクンクンガン・ベイ・リゾートは、スラウエシ島のマナドから車で1時間半、レンベー海峡に面する人里離れた海辺にあるが、今回は前日までバリ島にいたので、デンパサールから国内線でウジュンパンダン(マカッサル)経由マナドまで飛んできたのだ。空港を出た途端に「ミスター・ヤガミ?ウエルカム・バック!」の声。昨年もリゾートのレストランで働いていたボビーがちゃんと顔を覚えていて迎えに来てくれたのだ。北スラウエシで一番高いとされるクラバト山やドウア・スダラ山などの懐かしい眺めを楽しみながらリゾートに着くと、同じくレストラン・スタッフのマリア、アナ、アテイも私の再訪を大手を広げて喜んでくれた。
ここの海での今回の狙いは、前回初めて見ることができたプテラポゴン・カウデルニ(バンガイ・カーデイナルフィッシュ)の産卵と口内保育のシーンをこの目で見、あわよくばビデオに撮ること、およびバリ島で果たせなかったゼブラバットフィッシュの幼魚とヒゲハギの写真を撮ることである。最後の日を除いてずっと日本人は私一人であったが、主にアメリカ人のマクロオタク達、しかもそのほとんどがプロかセミプロの水中写真家達が、各々独自の撮影対象と目的を持って来ているので、私がその目的のためだけにボートとスタッフを独占するわけにいかない。それでもエニーの暖かい計らいで、通算3回は私がプテラポゴンの周りで好きなだけ粘ることが出た。
そのプテラポゴン・カウデルニだが、先ず「クリッター・ハント」というポイントの水深1mのガンガゼの陰にいるやつは、昨年以上に数を増して元気に群れていた。もう一つのポイント「ポリース・ピア」の水深5mのイソギンチャクの周りには、昨年はまだほんの数匹が身を寄せている記憶しかなかったが、今回は多くの稚魚、幼魚を交えて数十匹の群れを形成していた。益々繁殖しているのは明らかである。都合3回夕刻近いダイブでこれらの周りで粘ってみたが、結果は残念ながら産卵・口内保育のシーンに出くわすことが出来なかった。林公義先生がそのために一ヶ月以上も危険を冒してバンガイ島に立て篭もったのだから、素人の私がチョロっと3回しか潜らないで撮影しようなどとは、大それたことなのだ。

さて、ここでのダイビングはマクロ専門ではあるものの、それを更に「コーラルCoral」と「マックMuck」の二つに分けてお客の希望を訊きガイドしてくれる。つまり「コーラル」とは色目華やかなハナダイとかチョチョウウオの如き水中を遊泳する生物の観察であり、「マック」とは見た目汚らしく泥まみれの水底に生息し、それを観察するこちらも水底に這いつくばって泥まみれにならざるを得ない生物、例えばオコゼやカサゴ類、砂泥のハゼ、エビ、カニ、タコなどの生物の観察を謂う。毎朝ガイドの溜りにあるボードに、お客が行きたいポイントと見たい生物のリクエストを書き込むことになっているが、もう圧倒的に「マック」に希望が多い。黙ってても1日3本、ナイトを希望すれば4本、1本1時間の了解はまず守る客がなく70〜90分のダイブだ。ここの海がそういう海として知られているからであろうが、私の来る直前までスコット・マイケルやロージャー・ステイーンが2週間づつ来ていて、ステイーンは私と入れ違いにバリ島のシークレットベイに向かったらしい。

さて二日目から最後まで私のバデイになってくれたのが、そのプロ写真家の一人でアメリカはコロラド州ボウルダーからやってきたリチャードだ。エニーの依頼で2週間この海の紹介ビデオを撮った後、更に1〜2週間近海での撮影をしてから、やはりバリ島に移ってシークレットベイとトランバンに行くのだそうだ。本国を出るときからバリではトノさんに頼むことを決めてきたので、私からも口添えをしてほしいと言うので、取り敢えずあきらさんにメールを打って趣旨を伝えておいた。ベッカムばりの長身でハンサムな32才のそのリチャードだが、依頼された仕事だから致し方ないことではあるが、一旦マックのクリッターを見つけたらビデオを廻して10分間はそこを動かないのだ。ガイドも仕方なく私にほかのクリッターを見つけてくれる。別のお客にはまた別の生物を探してくれる。リチャードが空くとそこへ私やほかのお客を順番に連れて行ってくれる。その繰り返しなのである。至るところに撮影対象の生物が転がっているからそれで十分廻るのだが、ガイドする方は大変である。数箇所をぐるぐると泳ぎ廻り続けるものだから、ガイドの方が我々より先にエア切れで浮上するのだ。(笑)

30前後もあるポイントの中で、今回私とリチャードが気に入ったのが前出の「ポリース・ピア」と「ジャヒール」と「T.K.(Teluk
Kambahu)」だった。「ポリース・ピア」はイソギンチャクの周りのプテラポゴンのほか、大小、色彩とりまぜたイザリウオ、オニオコゼ、ヒメオニオコゼの類、トゲツノメエビを含む多くのエビ、色彩豊かな各種リュウグウウミウシなどを見ることが出来る。ナイトでも潜った「ジャヒール」では、なだらかな砂地にツノカサゴやオニオコゼ、ヒメオニオコゼの類が大袈裟に言えばうじゃうじゃいるほか、妙に半分に割れたココナッツの殻があちこちに転がっていて、その中や外側に名も知れぬ小さいエビやカニがうごめいている。ナイトではその中に生みつけられたミナミハナイカの卵から、タイミングよく赤ちゃんがハッチアウトするのを見ることが出来た。

「T.K.」では、やはり緩やかな傾斜の黒っぽい砂地に色とりどりのイザリウオが多いが、ツマジロオコゼ、ハオコゼ、ヒメオニオコゼや各種のウミウシのほか、ガイドがウミシダヤドリエビの類を一生懸命見せてくれた。このポイントでは最後の日の最終ダイブでミミックオクトパスを見ることが出来た。今回特筆すべきポイントは「ヌーデイ・フォールズ(Nudi
Falls)」であろう。その名の文字通り「ウミウシの滝」で、よくもこれだけ集めたものだと言えるほどのウミウシがいて、オニオコゼの顔の上にも乗っかっているのには笑えるが、最後の日にまたここを潜ったとき水深30mでガイドが珍しいものを見つけてくれたのだ。Rhinopias
frondosaボロカサゴの一種である。一緒のリチャードも興奮した。話が伝わってほかのお客も見に行った。その晩リゾートのレストランがその話題でもちきりになったのは言うまでもない。

その他のポイントとしては:
「ヘア・ボール」・・・昨年私をクンクンガンに連れてきてくれた写真家タケット夫人のデニースが発見し、友人のロージャー・ステイーンも好むポイントのよし。ここもイザリウオが多いほか赤と白のオオウミウマやタツノイトコ、ツノカサゴ、ヒメオニオコゼ、ミナミハナイカなどなど、マック生物が多士済々である。

「エンジェルズ・ウインドウ」・・・リゾートの対岸レンベー島側にある深場のポイントでもあり、昨年はデニースがシグナルフィッシュを見せようといってガイドしてくれた。今回は白いハダカハオコゼ、砂地のハゼ類、顕微鏡的に小さいカニのペア、色鮮やかな各種リュウグウウミウシなどを見る。

「バツ・メラー(Batu Merah)」・・・同じくレンベー島側にある砂地のポイント。いわばエビ・カニ天国と言ってよく、特に水深24mのソフトコーラルに覆われた岩塊はあたかもエビ団地であって、各種のエビ類を楽しむことが出来る。イソギンチャクの中にはアカホシカニダマシもいる。

「レタク・ラリー(Retak Larry)」・・・黒1、黄色2の3匹のニシキフウライウオがホバリング。これをリチャードがビデオで狙って15分くらい離れない。やむなく近くのソフトコーラルでエビ類を狙い、色違いのオオウミウマなどを撮影してから戻ってやっと撮影。(^^;

「ゴビー・ア・クラブ」・・・リゾートからボートで約10分、今やマカッサル以上に繁忙を極めているといわれるビトウングBitung港を通り越してその先にある砂地とサンゴのポイント。透明度よく水中も明るい。その名の通りハゼとカニのポイントで、各種のハゼ、ソフトコーラルのカクレエビ・ヤドリエビ、ピンクスクワットロブスター、イソバナガニ、モンハナシャコなどを見る。

「クリッター・ハント」・・・昨年初めてプテラポゴン・カウデルニを見たポイントであり、狙ったその産卵と口内保育は見られなかったが、このポイントで今年も最終日にそれを上回るほどの胸躍る遭遇があった。体長1センチあまり、ツノを入れても3センチほどのイッポンテグリの幼魚なのだ。嬉しかった!
最後にここで見たウミウシの写真をいくつかご披露しておきます。

【あとがきと期待】
プテラちゃんの産卵、口内保育シーンだけでなく、バリ島から持ち越したゼブラバットフィッシュの幼魚とヒゲハギも残念ながら最後まで不発に終わったが、特に最後の日などは3本ともアリやノンシックスほかのガイド達が、なんとか私にゼブラとヒゲハギを見せようと懸命に探してくれた。次回以降に期したいところだ。そんな思いを胸に抱きつつリゾートを後にする朝は、いつものようにスタッフ全員が玄関に勢ぞろいし、ギターを弾きネシアの歌を歌いながら賑やかに見送ってくれる。「また来てね!」「来るともさ!」と全員と握手を交わし、再びボビーが空港まで付き添って送ってくれるのだった。
クンクンガンにも日本人ダイバーが少しづつ増えているようだ。最後の日にはサカナオタクのカップル一組が合流した。去る3月には私の日本の友人も訪れている。来月には何人か日本からやってくるらしい。レストランの本棚には名古屋の女流写真家の写真集と訪問記録もある。交通費、宿泊・ダイビング費など決して安いところではないが、海は珍しい生きもの達で溢れていて、その費用に値して十分余りある。世界で最も水中生物の種類が多い海として、遥々アメリカから数多くのプロ、ノンプロの写真家達がひっきりなしにやってくる。今回は昨年の9月から3回目だというロスアンゼルスの歯科医とか、2年に1回海外はここにしか来ないという二人とも大きなハウジングを抱えたミシガンの老夫婦などとも一緒だった。次回は来年の7月を狙っているが、これまでの一人っきりの2回と違って、今度はクンクンガン・ファンクラブでも結成して、誘い合わせて来ようかとも考えたりしている。
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