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(注)作品は作者より許可を頂いております。許可のない、複製は固くお断りいたします。
七種粥
邪気をはらい万病を除くために、粥に春の七草を入れて食べる七種粥。病床にあった私の嫁が作ってくれた。
野良仕事、松手入れ、丹波黒大豆の収穫と、働き詰だった私は去年の暮激しい首の痛みに襲われた。ダンゴ虫のように、背を丸めての作業がさわったらしい。
総合病院は年末最後の診察日とあって、患者があふれていた。頚椎症と診断され、首にギブスがはめられた。
翌日は、孫たちの楽しみにしている餅つきであった。痛みをおして台所へ向かったが、首が重い頭を一分と支えてくれない。両手で頭を抱えて寝床へ引き返した。
つごもりの夜、息子夫婦と娘との会話が聞こえる。
「お母さんは安静第一ね。このまま寝たきりになったら大変。わたしはおせち作るから、ゆきちゃんお母さんの看病たのむわ」
「おねえさん一人でおせち作るのはきついよ。わたしも手伝う」
「ありがとう。じゃあまず献立と材料を決めよう。あ、それから旦那さん、正月の当番医調べておいてね」
嫁は主婦らしく、てきぱきと物事を片付けていく。
大つごもりの夕方、夕食のゼンを運んできたエプロン姿の娘は、
「おせちもお重に詰め、年越蕎麦の用意もできたから安心してね」
と、やさしく言ってくれた。
孫のただしとひろしは、おばあちゃんの首がよくなりますようにと、毎日仏壇にお祈りしてくれる。
元旦の朝、台所から雑煮の香りが漂ってくる。起きようとがんばったが、駄目だった。
一人で雑煮をいただきながら、ふだんは気づかなかった家族の愛情と健康の大切さをかみしめていた。
三が日も過ぎ、もう寝床で体を横たえたままいただくわびしい食事が、一週間も続いていた。
「今日は七種よ。そろそろお母さんも起きて、みんなと食事いっしょにせんといかんなあ。立てる?」
娘に支えられ、食卓についた。
「わあ、おばあちゃんだ。ぼくおばあちゃん大好き!」
ただしとひろしが声をはずませ、すりよってきた。
「お母さんが早く良くなるようにと、今日は七種粥を炊いたのよ。旦那さんと今朝早く摘んできたのよ」
風は冷たかったけれど、枯草の中からはもう春がのぞいていたと嫁は粥をよそいながら言った。
真っ白い粥を彩るさみどりの七草。家族それぞれの椀から湯気が立ちのぼる。
久しぶりのみんなと一緒の食事であった。ふうふうと、湯気をくぼませながらいただく。
「ああ、おいしい。こんなにみんなによくしてもらって・・・・・、全快したらご恩返しせんといかんなあ、ありがとう」
涙声になって頭を下げる私に、
「いつも世話になっとるがなあ」
みんなが口をそろえて言った。
窓の外は北風が吹き荒れていたが、私の心はまるでおくるみに包まれているように、あたたかだった。