

|
岡山市の中心部。 萬歳酒蔵 は、閑静な旭本町の一角に蔵を構える。 旭川の土手に面した、それほど間口の広くない入口を入ると、 東西に敷地が延び、そこに並んで建つ横板張りの木造の蔵が、 戦後間もない頃の建物であることを物語る。 倉敷市玉島黒崎で、みりんと焼酎の醸造をしている本家が、 この地が岡山市きっての名水の湧く地であることを知り、 酒造りを始めたのが大正十年のこと。 当時、この付近では 「 井戸のある家はみんな造り酒屋を営んでいた 」 と言われるほど 酒蔵がひしめき合っていたという。 ここからわずかに南下した州崎辺りは葦が生え、 東の浜では レンコン が栽培されていた。 現在、蔵を任されている本家三代目当主の甥にあたる藤澤兄弟は、 戦前からこの地に住む古老から 「 ここの蔵の水は特にええと評判で、近所の者みんなが汲みに来とった 」 と、 よく聞かされてきた。 出来上がった酒は好評で、 地元はもちろん、灘をはじめ、関東や北陸、東北地方にまでトラックで運搬。 酒を運ぶ専門のトラック業者があったほど、日本酒の需要は高かった。 「 食べて美味しい岡山米。 その技で作った酒米で醸した酒も旨いはず! 」 というのが、酒造りをしている藤澤英二氏の持論で、いずれも県産米である。 藤澤氏は言う。 「 酒は過保護にするとダメ! 素直に造ると、さっと上がったいい酒になる。 」 代表銘柄 の 「 清酒 さつき心 」 は、その名の通り、 新芽が吹くころの 五月晴れ のような、さわやかな酒である。 |

