森のやさしさ(1)
森のイラスト
背景画像
フリー素材WING

Copyright(c)2001-2007 by MAR-YAN. Allrights reserved.

 大人びた幼馴染のユウちゃんにちょっぴりドキドキした亮太君ですが、今日は二人で山歩きの日です。
亮太君は喫茶店で一緒にケーキを食べながら山へ誘ったのでした。
ユウちゃんをあのサクランボの樹が燃えたところへ案内しようと考えていたのです。
サクランボの精を荼毘に付したのは本当で、絶対夢なんかじゃないと確信していました。
冷静になってユウちゃんの意見を聞いてみたいと思ったのです。

 亮太君は二度目のせいなのかそれともユウちゃんと一緒だからか、予定よりかなり早い時間で草原のくぼ地に着いたので少しビックリしました。
朝日山の頂上をさっさと乗り越えたのに足が軽いのです。はじめて登った時の辛さが嘘のようです。
すでにあたり一面には草が生い茂り、ここらが焼けたとは思えません。明るい日差しを浴びて青々とし、葉と葉をすり抜けた風がとても爽やかに感じました。
昼には早いのでシートを敷いて少し休むことにしました。

「ユウちゃん、このあたりが火事になったんだよ。あの辺にサクランボの樹があったけど、一緒に焼けたんだ」
ちょっぴり悲しい顔になり空を見上げました。
「それはリョウタのせいではないでしょう、でもどうして火事から私の顔が浮かんできたの?」ちょっぴり気の強いユウちゃんは悪戯っぽい目で亮太君を見つめます。
横顔にユウちゃんの視線を感じて苦笑いをしました。
「ごめん、ユウちゃんは樹の精を見たことある?」
「えっ、あぁっ、リョウタはうたた寝をしたって言ってたわよね、それって夢で見たこと?」
それから声のトーンを下げると「夢に出るほど私のことが忘れられなかったのね」
ユウちゃんは自分で言いながら噴出してしまいました、亮太君もつられてしまい、二人して笑い転げたのです。
幼い頃からユウちゃんは活発でハキハキ言うタイプ、亮太君はおとなしくてユウちゃんには逆らわないのですが、高校を卒業した今も二人の関係は変らないようです。

「ごめんなさい、茶化すつもりはなかったけど、真剣な顔をしていたから、つい。でも夢で見た樹の精が私に似ていたってことかしら?」

 そよ風がほてったからだを取り巻き、気持ちまで透明になっていくようです。
亮太君はユウちゃんと一緒に来てよかったと思いました。
二人でこの草原に囲まれていると本当はうたた寝の夢だったかもしれない、そんなふうにも思えてきたのです。

 今日はもう少し奥の方へ行って大きな樹を下からのぞいて見ようと思いました。

つぎへどうぞ

Top>Novel→(