強い日差しの昼下がりクモのチーボーは誕生した。
右も左もわからず、からだもまだ透き通った薄茶色をしていたが、湿った巣穴から日光の当たる乾いた地面に這い出してきた。
目ざといスズメの親鳥が見つけて食べようとしたが、一瞬早く黒クモのクロがチーボーを抱え込んで草むらに逃げ込んだ。
「危ないじゃないか」絡めた糸を外しながらクロが言うと、チーボーは自分の倍以上も大きなクロに恐縮して、小さな声でありがとうと礼を述べた。
「頭の傷は痛むか」スズメのくちばしがかすっていた。
「ちょっとずきずきするよ」
べそをかいた甘えるような声だがそうかと言い、スズメの悔しそうな顔を思い出した。
その日からクロが餌をとりチーボーを養う生活が始まった。
時折、涼しい風が吹き始めた。
チーボーはクロの大きな巣網張りを見るのが好きで、今朝も見上げてはため息をついている。
「何回見てもすごいなぁ、クロちゃんは巣網張りの芸術家で天才だね。支線の取りかたといい、等間隔のぐるぐるといい、施工技術がすばらしい」
「ぐるぐるか、そうでもないさ」いつも照れ笑いをする。
チーボーはクロのそばにいて、あれこれと質問をする。クロはよくもそんなに聞く事があるものだと感心するが、一度も怒ったり嫌がったりせず、素直に答える。
クロは頼りにされている事に満足し、チーボーはこの新しい世界を知る事が楽しかった。
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