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勢いというのものはある。
うん、確かにある。
いつもだったら、ちょっとしないようなことをしてしまう、できてしまう。そういう勢いってあると思う。
皆と一緒だかったから、とか、盛り上がってとか。ついつい、もう1本、もう1軒。そんなことをしているうちに、終電がなくなって、仕方ないからオールナイト。
そんなお馬鹿な経験の一度や二度、誰にでもあるんじゃないかなぁ。それとも、そんなことをするのは、私だけ?
このあいだ、初めて近所のそのお店に入ったたのも、そんな酒の勢い。
というか、気分。たまたまというか、何というか。まあ、そんなもの。
仕事の関係で数人で夕食を伴にした。和食のお店で個室。当然ででくるのは、コース料理。おきまりのように、ビールと日本酒。酒も食事も悪くはない。それどころか、おしいい。料理の一つ一つを仲居さんが説明してくれるし、日本酒は竹にはいってでてきた。こういう食事は、自分でお金をだしてはあんまり食べない。ありがたいことだと思う。
でも、正直、やはり肩は凝る。
一人になって、電車にのると、急にラーメンが食べたくなった。
この時間なら、もしかして。乗換駅で降りて、ご贔屓のラーメン屋に行っみたものの、のれんを中にしまわれた後。もう、スープが終了したらしい。人気の店なので、閉店時刻まであいていることは、めったにないのだった。しまった。では、こういう時のあの店に、と歩き出したが、なぜか、いつもの店の通りに行き当たらない。どうも夜道で一つ、通りを間違えたらしい。引き返すのも面倒でそのまま駅に向かう。
今度、降りたのは、最寄り駅。そのまま帰るのが体重的に正しい行為だ。そう、わかっていても、なかなかそうできないのが辛いところ。
胃袋の奴が騒ぎだす。
「寄って行こう」
「どこに」
断ればいいのに、私もついつい応えてしまう。
「ほら、近所のあそこだよ、地下に降りるとこ」
そうか。あそこか。
駅から自宅に向かう途中、麻雀屋の地下にカクテルのお店がある。あるというのは、もうずっと前から知っていて、そこの前に出してある黒板のメニューをチェックするのは日課になっているほどなのに、実は一度も入ったことがない。
別にカクテルが嫌いなわけじゃない。自宅の近くで飲む機会がないというだけのことだ。飲むとしたら、東京か逆に横浜に出たときだし、その店の前を通るのは、どこかへ行く時か、どこからか帰って来た時。いつも何かをする途中で、立ち寄るチャンスがなかったのだ。
「春キャベツのスパゲティーだってさ」
胃袋は、めざとく店の前の黒板を読む。しかし、本当は、1週間も前から、このメニューを気にしていたのを私は知っている。店の前を通るのは、いつも食事の帰りだったから、さすがに食べようとは言い出さなかったが、食べたがってはいたのだ。
「いいじゃん」
いつもなら、食事の後だよ、と止めるとこたが、なにせ、もうラーメンを食べる決意をしてふられたところだ。もう、歯止めなどない。私も、何かをたべないことには、落ち着けなくなっていた。
カクテルもフルーツ各種と書いてるあるから、きっと春らしくいちごのものとかを飲ませてくれるのだろう。最後に1杯、カクテルというのも悪くない。
我々は、初めて、その下に降りる階段を下りてみることにした。
店は意外に広かった。
もっと狭い店を予想していたのだか、カウンターがコーナーの形にきってあって、テーブル席もかなりある。壁には、お酒のボトルがずらりと並んでいるのは、こういう店のお約束。でも、へたな絵なんかより、ずっといい。お酒のボトルというのは、見ていてあきない。こうも種類があるとなおさらだ。知っている銘柄があるかどうか、探すだけで時間がつぶせる。
「何かおつくりましょうか」というバーテンさんに、とりあず食事させてくださいと、お目当ての春キャベツのスパゲティーを頼む。飲み物は、ビール。エビスをおいてあるのがうれしい。
「いいじゃないか」
胃袋は、とにかくエビスがおいてあることを高く評価したらしい。私も異存はない。
「うん、感心だ」
我々がしゃべっているのには気づかず、バーテンさんは連れのない一人の私にあれこれと話しかけて、気を遣ってくれる。そう押しつけがましくもなく、いい感じだ。
ほどなく、スパゲティーが置かれた。
早速、とりかかる。フォークが小さいのがご愛敬だが、なぁに。食べられれば、それでいいのだ。
見た目もきれいにしあがっていて、量もそう少なくない。
早速、一口、食べてみる。
「えらいじゃないか」
胃袋がいう。
「うん、エライ」
なんだ。ヘタなスパゲティー屋より、まともなものをだすじゃないか。キュベツはたっぷり。麺は細め。バランスも悪くはない。でてきたのは、まっとうな一皿。飲んだ後に食べるのには、ちょうどいい。
これは、アタリだ。こんな店が近所にあったのに、今までほっておいたのは、申し訳なかった。
「一度も寄ってくださらないなんて、ひどいじゃないですか」
なんて、我々の会話を聞いていたようなことをバーテンさんに言われて、ドキッとする。
しかし、これは、私が近所に長年住んでいるという話をしたからだろう。
「何がお勧めなの」
最後に1杯、飲んでみたくて、カクテルのお勧めを尋ねてみる。
「うちは、生のフルーツを使うものが評判がいいんです。キーウィがお嫌いじゃなければ、それを、どうでしょう。女性には特に好評なんです」
そう言われて、それをもらうことにした。
「いける」
「いけてる」
胃袋と私は、言ったのは、ほぼ同時。
確かに、甘めだから、男性には、ちょっとという人がいるかもしれなが、口当たりもよくて、おいしい。
「ですが、アルコール度数は低くありませんからね」
とは、バーテンさんからの忠告。
うん、そうなんだ。このての甘いカクテルは、飲み過ぎるとひどいめにあう。最後に1杯が正しい飲み方かもしれない。
「また寄るね」
お世辞ではなく、本気で、そう言って店を出る。
酒の勢いで入った店、たまには、こういうアタリがあるから、胃袋も私も、もう1軒をやめられないんだよねぇ。
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