★ エニ・クエスチョンズ?


 授業参観といっても、漫然と授業を見ていたのでは意味がない。
 自分なりに目的を持って見るのが当然といえば当然である。たと
えば、教える内容はどのようなものか、そしてどのように教えている
のか、その教え方の背後にあるものは何か・・・というように。
 たとえ言葉はわからなくても、その様子はわかるはずである。
 そんなふうに考えて授業を見ていた。

 しかし、いかんせん、英語で行われている授業である。
 子供たちがどんな活動をしているかはわかるものの、教師の発問
・指示はなかなか聞き取れない。ましてや、子供の発言などほとん
どわからない。
 そうすると、自然に参観の集中力は鈍ってくる。
 
 そんな私を緊張させたのが、フローリン先生である。
 彼女は5年生のスペイン語の先生である。
 スペイン語といっても、スペイン語そのものを教えることはほとんど
ない。スペイン語を使って、算数・理科・美術を教えるという仕組みで
ある。
 授業中、ずっと声を張り上げているため、放課後になるといつもた
め息をついて「疲れた、疲れた」と言うのが、口ぐせだった。

 さて、彼女の授業を参観していると途中で私に必ず質問が来る。
「日本でもこのようにかけ算を教えているのか。」「このような教材で
美術を教えたことがあるか。」というように。
 ちなみに、私に聞く時はもちろん英語である。いいかげんな受け答
えをするわけにはいかないので、真剣に授業を見ざるを得ない。

 私に質問をしない時には、「ミスターサトウ、エニ・クエスチョンズ?」
と聞く。
 「ありません」と言うのも失礼と考えて、どんなささいなことでも聞い
た。

☆「算数の評価はどのようにしているのですか。」
☆「美術の内容は何に基づいているのですか。」
☆「理科では教科書を使わないのですか。」
☆「この教材は、学校の予算で買ったのですか。」

 こちらの使える英語は限られているから、簡単な質問しかできない。
 しかし、彼女は私の質問を広げてくれて、3倍くらいの答えを出して
くれた。
 彼女の授業を見たのは研修の第一週目である。
 この学校での研修を深めるには、とにかく質問することだということを
最初の週に発見したことは、幸いだった。


  次へ        トップ