★ イワガキ大作戦

 ■「イワガキ」という素材

 宮古市は水産業のまちである。
 しかし、現在その水産業は衰退の一途である。漁獲量の減少、水産業で働く人
の減少・高齢化と明るい話題に乏しい。
 しかし、地域のよさをとらえさせたいと考えるのであれば、その衰退の事実だけ
示したのでは、子供たちはがっかりするであろう。
 ただ、働いている人たちは誇りを持って生きている。問題はその「明るい前向きな
事実だけだ」と考えていた。
 宮古はサケの町である。「サーモンランド」と市で言うぐらいである。だから、最初
は市の魚のサケの商品化の工夫で攻めようかと考えていた。
 そんな中、漁協でイワガキを育てていることを知った。
 もともと宮古ではカキを育てている。しかし、それはマガキであり、冬期間中心の
ものとされてきた。イワガキは主としても日本海側で漁獲され、夏場に取引されるも
のである。
 それを、太平洋側の宮古で養殖にチャレンジしよう考えているのである。太平洋側
での取り組みは全国でも先駆けということで、水産業の教材になり得る明るい話題
と感じた。

■教材化のために
 さっそく、インターネット、地元漁協への取材等で調べる。すると、次のような事実が
わかった。

★宮古でイワガキ生産に取り組むきっかけは、利潤といったことの他に、新しい取り
 組みをしたいという熱意からだった。
★養殖を始めてからの4年間は、試行錯誤の連続だった。
★ようやくイワガキ生産が軌道に乗り始め、地元漁協でも大いに期待している。

 これは、まさにこれからの宮古の水産業の誇りになり得る。そう直感した。

■授業
 イワガキという素材をどう教材化するか。視点のあて方によって、授業の展開も変わ
ってくる。ポイントは次の2点と考えた。

・宮古でイワガキを養殖するよさ
・イワガキを養殖している人々の願いと誇り


 そして2時間で、次のように授業を行った。(単元名・「イワガキを育てる」)

★1時間目
■発問1・カキの料理にはどんなものがあるでしょうか。
■発問2・それらは主にいつの季節のものでしょうか。
■発問3・みんなが食べているのとは違い、夏にも生のカキを食べられます。それがイワ
      ガキです。なぜ「イワガキ」と言うのでしょうか。
■発問4・イワガキとマガキの違いは何でしょうか。(インターネットの資料で調べる)
■発問5・一言で言うとイワガキはマガキより何だと言えますか。(高級、ぜいたく)
■発問6・先ほどのイワガキの産地である島根、秋田、庄内を地図で探しなさい。これら
    に共通するのは何でしょうか。(日本海、マガキの産地と違い海岸が入り組んで
    いない。)
■発問7・実はこのイワガキを太平洋で育てている人がいます。水産研究センターの芳賀
   さんという方です。なぜ日本海が中心産地のイワガキを太平洋で育てようと考えたの
   でしょう。(もうけたい、宮古を有名にしたい、他のものがとれなくなってきた等)
■指示1・イワガキ養殖の様子について、思ったこと、気付いたことを書きなさい。(資料
       提示)発表しなさい。
■発問8・この研究はすぐに成功したわけではありません。どんな大変な点や失敗があっ
   たと予想できますか。(卵ができない、重労働、海の汚れ等)発問9・実験を始めてか
   ら、初めて売り出されることになりました。その時のニュースがこれです(新聞記事提
   示)。その時の芳賀さんはどんな気持ちだったのでしょ
■指示2・次の時間に芳賀さんが教室に来ます。聞きたいことをノートに書きなさい。

★2時間目(ゲストティ―チャ―芳賀さんとのTT)
■芳賀さんのイワガキ養殖についての説明
■イワガキの実物や道具を用いての養殖の説明 ・養殖の歴史等
■芳賀さんへの質問 前時の内容を深めるものが中心(なぜ全国でも珍しい養殖に取り組
 んだか、失敗した点、養殖にかける願いや成功した時の気持ち等)
■芳賀さんからのメッセージ(魚や貝と共存しながら生きていきたい、君たちも海のそばで
  育ったことを忘れないでほしい
■指示・今日の授業で分かったこと、わかったことを書きなさい。

 2時間の授業で、イワガキを養殖して育てることに共感したようであった。「宮古でもこん
なことに取り組んでいると思わなかった」「イワガキの養殖が、これからの宮古に大切なこ
とがわ
かった」「この養殖のことをもっと全国に伝えればいいのにと思った」といった感想を
書いていた。
 宮古の水産業への誇りが芽生えつつあることの表れである。

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