★ 忘れ得ぬ人 ジェフ
アメリカ合衆国の有名大学ですぐに思い浮かぶのがハーバード大学卒であ
る。
私がホームスティーをしている時、身近なところにハーバード大学卒の人が
いた。ジェフである。
彼はアンの妹ベッツイのボーイフレンドで、私がホームステイをしてから1週
間ほどして、アンの家に遊びに来た。背はアメリカ人にしては低いものの、立
派なヒゲを生やしている。29才のコンピュータプログラマーである。
その彼が、「マサ、今度の金曜日、ダウンタウンに連れていってあげよう」と
言う。(まあ、ハーバード大学卒業の人と話すのも最初で最後だろうから・・・)
と思い、興味津々で「OK」と返事をした。
さて、その金曜日、彼はボロボロの車で来た。
まあ、車はそうでも、もしかしたら食事は高級レストランだろうと予想していた。
ところが、車は薄暗い街角でストップ。あたりは、高い工場が並ぶようなところ
である。
とても高級レストランがあるようには見えない。
やがて、ある工場の入り口に。人々の歓声が聞こえてくる。
中に入ると、そこは倉庫を改造したビヤホールだった。床はコンクリートのまま。
そして、テーブルが所狭しと並べられている。メニューはビールとピザのみ。で
も、空いている席がないほどのにぎわいである。中には立ちながらビールを飲ん
でいる人もいるほどである。
何とか席についてから話し始める。
彼とは話しやすかった。彼の英語が聞き取りやすいからである。あまりにも流暢
に英語を話されると聞き取りにくい。単語と単語がくっついて発言されるからである。
ところが、彼は大事な単語の前で一呼吸おく。だからわかりやすいのである。
エクアドル旅行の話、今の仕事が忙しいという話、二つの大学に通った話、アメ
リカの教育問題のこと、そして恋人のベッツイのこと。
あっという間に1時間がすぎ、彼が「行こう」と言った。「今度は別の酒場だろう」
と思ったら、何と本屋に行くとのこと。
ポートランド一の本屋ということだったが、確かに大きい。東京の八重洲ブックセ
ンターの比ではない。県立図書館ぐらいの規模である。
本も高いところまであるので、人々は脚立で本をとって、そこで立ち読みをしてい
る人もいるぐらいである。各国の本のコーナーは数十ヶ国あり、日本のコーナーに
も数百冊。
ジェフ。
ハーバード大学卒業といえども庶民的。しかも、知的な香りのする人であった。
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