載 私の教材開発物語 第11回

   「人」で、地域のよさ・日本のよさを伝える

                       
佐藤 正寿

■ 「人」を登場させる価値

 私のホームページのメインテーマは「地域のよさ・日本のよさを伝える授業」である。
 子供たちが将来巣立つ。大都会へ行く者もいるであろう。海外へ行く者もいるであ
ろう。その時に、自分の育った地域のよさや自国のよさについて堂々と語ることがで
きる・・・そんな子供を育てたいと思っている。
 そのような願いから、ホームページのメインテーマを設定した。

 そのテーマの実践で心がけていることがある。それは、可能な限り具体的な「人」が
登場する実践をすることである。
 人が登場する効果は大きい。何よりもインパクトが強い。子供たちがひき付けられる。
人に関わる物語は、常に具体的である。さらに、「自分もこのような人になりたい」と思
う子が必ずといっていいほど出てくる。人を取り上げるからこそ生まれる共感である。
 それらの人から、先に述べた地域のよさ・日本のよさを感じ取ってくれればなおよいと
思っている。

■ 陥りやすい罠

 しかしながら、人を取り上げる場合に陥りやすい罠がある。
 「教師の思い入れが深すぎて、子供の学習と離れた一方的な教え込みになってしま
う」ということである。
 自分が見つけた教材、そして人。調べれば調べるほど共感をする。この感動を子供た
ちにも伝えたい。しかし、伝えたいことを次々と子供たちに投げかけるものの、教師ほど
は共感している様子がない・・・このパターンがそうである。私は何度もこの罠に陥った。
 自分の伝えたいことをストレートに投げかけることのみであれば、確かに一方的である。
やはり、その人から子供たちが学ぶ授業の組み立てが必要である。

■ 授業「UNTAC(アンタック)が救ったカンボジア (国連の働き)」
  (小6・社会)


 6年生の国際連合の学習の一つとして、誰か人物を取り上げたいと考えた。真っ先に
浮かんだのが、明石康氏である。
 現代史において、日本人が世界の中でリーダーシップをとって活躍をするということは
数多くはない。その中で、1993年にカンボジアの正常化を果たした明石康氏をはじめ
とするUNTACの人々の働きは記憶に新しい。
 さっそく資料探し。「平和のかけ橋」(明石康著・講談社)という児童用図書とインター
ネットの資料で授業を構成する。授業の概略を示す。

★発問1 (地雷撤去の写真を示し)この人たちは何をしているのでしょう。
     ・地雷についての説明
★発問2 (写真を示し)この人は、明石康さんといいます。このカンボジアで大きな仕事
     をした人です。どんな仕事をした人だと思いますか。
     ・カンボジアの内戦の説明
★発問3 どんな解決策が考えられますか。
★発問4 この中で理想的な解決方法と思われるのはどれですか。
     ・国連がUNTACという組織を作ったこと、その活動の様子の資料を提示(明石氏
      はUNTAC代表だった。)
★発問5 UNTACの活動を見て、どんなことを思いましたか。
★発問6 カンボジアの人はどう思ったと思いますか。
★発問7 明石さんたちは、立て直しの選挙に向けて努力を続けていました。しかし、そ
     の直前に日本人が殺されてしまうという悲劇がありました。その時に明石さんは
     選挙をやりとおそうと思ったでしょうか。それともやめようと思ったでしょうか。
    ・明石氏は選挙をやり通し、新しい政府ができたことを説明。
★発問8 明石さんたちはどんな仕事をしたと言えるでしょうか。

 明石氏が「国連のUNTAC代表」という紹介をした時、子供たちから「オー」という声が
自然に出てきた。人物を登場させるインパクトを感じた。
 発問8では、「新しいカンボジアを作った人」「平和を求めて働いた人」「一から国を作る
ような仕事」といった反応が出てきた。
 最後の授業の感想でも、「明石さんたちは、カンボジアに夢を与えた人だと思った。」「こ
ういうすばらしい仕事があるんだと思いました。」といった共感が続いた。
 この授業の組み立てで留意したことは、次の通りである。
・その人を通して見える事実について考えさせる。
・その人の立場に立った発問を組み入れる。
・その人が行った仕事の価値づけを行う。

■ インターネットの出現で探しやすくなった

 インターネットの出現で、自分が未知の分野の人を探しやすくなった。
  農業分野で国際貢献をした事例について授業をする機会があった。具体的にそのような
日本人がいたら、なおよい。私が教師になった十数年前であれば図書館等で膨大な資料
を当たって、そこからキーマンを探すところである。今は、インターネットで該当する人物が
出てくることが多い。
 この時には今から30年前にフィリピンに一家で渡った古川外男氏の例を見つけること
ができた。今度は「古川外男」氏をキーワードに検索をする。古川氏の一生、彼を支えた
団体、そして彼の意志を引き継いで行っている古川外男記念日本語学校(フィジー)の存
在を知ることができた。
 自分に必要な資料がこのようにしてインターネットで集められる。
「人」を登場させる授業を行うには、現在はいい時代である。(むろん、その資料の価値は
吟味する必要があるが。)

■グローバル化した世界だからこそ

 多くの先達の努力があってこそ、今の日本、今の地域がある。
 どの地域にも、今の子供たちに伝えたい先人がいる。
 また現在も、よりよい日本・よりよい地域を創るために努力している人々がいる。
 数多くの人々のその気概とその心。
 グローバル化の世界だからこそ、私達の先達の気概やよさを学び、誇りを子供たちが持
ってくれればと願う。

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