連載 私の教材開発物語 第12回
新たな教材開発、学習ゲーム
佐藤 正寿(岩手県・宮古市立高浜小学校)
■ 「思考力を鍛える学習ゲーム」という提案
昨年、7人のチームで一つのプロジェクトに取り組んだ。
テーマは、「思考力を鍛える社会科学習ゲーム」である。
社会科における学習ゲームは珍しいものではない。地名探し、地名しりとり、ビンゴ
ゲーム等、いろいろと私も行ってきた。ただ、それらはあくまでも、授業の中ではおま
けみたいものであった。導入で授業を盛り上げるため行ったり、暗記を効率的に行うた
めに行ったりという具合であった。
この「思考力を鍛える社会科学習ゲーム」は、そのような学習ゲームとはコンセプト
が違う。
メインは「思考力を鍛える」という点である。当然、授業のおまけではない。授業の
中核に学習ゲームが位置づけられる。1時間を貫くものである。
そして、このコンセプトは、1冊の本になった。
「思考力を鍛える小学校社会科学習ゲーム」(上條晴夫・阿部隆幸編著 学事出版)
という本である。
■ 学習ゲーム「ターミナルベース地を探せ!」
この本で、私は4つの学習ゲームを担当した。
何ごともそうであるが、新しいものを生み出すにはそれ相応の苦労が伴う。しかも、
今回は新しい学習ゲームの提案である。教材開発が好きな私といえども、胸中は不
安の方が大きかった。
対象は5年生社会。ある程度、学習ゲームに関わる先行文献を読み、応用が可能
かどうか考える。
しかし、なかなかいい案が出てこない。
案は考えつかないものの、「まずは地図を使った学習ゲームを創り出そう」というこ
とは決めていた。私自身が地図を見ることが大好きで、謎解きのような面白さを地図
帳に感じていたからだ。
ある日、地図帳を見ていて、ふと2学期に行う運輸の学習で閃いたことがあった。
宅急便のターミナルベース地のことである。岩手県は、宅急便のターミナルベース
地が北上市にある。県庁所在地の盛岡市ではない。
昨年、担任した子供たち(やはり5年生)のほとんどは、盛岡市にあると思い込んで
いた。「北上は、秋田に高速道路が延びている。(盛岡は秋田には高速道路が走っ
ていない)」「北上は花巻空港に盛岡に近い。」「渋滞が少ない」といったことを、昨年
の子供たちは考え出していた。
「各都道府県のターミナルベース地の立地条件を考えさせると面白いのではない
か。」
そう考えたのである。
さっそく、ヤマト運輸のホームページで各都道府県のターミナルベース地を調べる。
すると、岩手県の例と同じように、子供たちに考えさせるような例がいくつか浮かび上
がってきた。
たとえば・・・
・福島県→やはり県庁所在地ではなく、郡山市にある。
・神奈川県→3つある。ベース地の数は人口に比例する。
・鳥取県→ベース地がない。岡山県の津山市のベース地がカバー。
・北海道→5つ全てが空港の近く。
(これらのデータは2001年現在)
「これらをクイズ形式に出して、その理由を考えさせることにより、『ターミナルベース
地の立地条件』という社会的事象を追究できる!」
そう考えた。
ゲームのおおもとができれば、あとは細かな部分を考えるだけである。都道府県の
順番、ワークシートの用意、説明の仕方の工夫。そしてゲーム自体がシンプルであれ
ばなおよい。
最終的には次のような形にした。
1 教師が出した都道府県のターミナルベース地を地図帳で探す。
2 一つ当てるごとに1点を獲得する。
3 一問を終えるごとに、そのベース地設置の理由を考えていく。
4 全部で5問行い、合計得点を競い、数多く当たった子供の勝ち。
実際に授業で行った時には大いに盛り上がった。その設置理由も地図帳をじっと見な
がら子供たちは考えていた。「思考力を鍛える」という点でも合格であった。
■ プロジェクト・メーリングリスト
この学習ゲームの教材開発が出来たのは、チームによるプロジェクト・メーリングリス
トのおかげである。7人のメンバーのみのメーリングリストである。
・初期の段階では、各自の文献による情報交換。
・アイデアの磨き合い。
・実践原稿のチェック・・・等
全国各地にいるメンバーがこれらの活動をメーリングリスト上で行う。
それまで、数人が執筆する本といえば、各自が書いた原稿を編著者が集めてチェック
して終わりというものばかりであった。
ところが、今回は本当にプロジェクトチームという形で、多くのことを学んだ。1冊の本を
生み出すことと共に自分がネットサークルで学ばせていただいたという感じである。
そして、プロジェクト自体は終わったが、このメーリングリストの交流は続いている。同時
に私の学習ゲームの開発意欲も続いている。魅力的なメーリングリストがあるからこそで
ある。
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