連載 私の教材開発物語 第13回

   ゲストティーチャーのよさを引き出す

                       佐藤 正寿 

      
■ 森林資源育成に従事する人から学ぶ

 今年度、5年生を担任して、社会科で実に多くの方々から学んだ。
農業、漁業を営んでいる学区の方、市内の部品工場の方、そして
放送局の記者。教科書や資料からは得られない生きた社会科の
学習ができ、そのつど子供たちは大きな学びをしたものであった。
 3学期の社会は森林資源の働きが主な学習である。当然、ここで
も森林資源育成に従事する人から学ぼうと考えた。

 ところが、この学習は1・2学期のパターンとは異なる。農業にして
も工場にしても、実際に見学に行くことができた。働いている様子を
実際に見て、学びを深めることができたわけである。
 しかし、今回は森林が対象ということで、冬の時期の見学は無理
である。そうであれば、教室にゲストティーチャーとして来ていただく
のが一番よい。

 そうと決まれば、まずは人材探しである。同僚の先生方に聞くが、
今まではそういう方はお呼びしていないとのこと。
 「森林のことなら営林署だな」と見当をつけて電話帳を探すが該
当するものは見つからない。即、インターネットで探す。「宮古 森林」
を入力すると「三陸北部森林管理署」のHPが出てきた。
 読んでみると、「営林署」という名称は現在はなく、「森林管理署」
というように組織が改変されているとのことであった。しかも、他校
に「森林出前教室」で訪問しているということも掲載されており、「こ
れならゲストティーチャーとして呼べそうだ」と感じた。
 さっそく交渉。OKの返事をいただく。

■ 質問をメインにする授業

 さて、このように、「お話を聞く」というゲストティーチャーを招いた
授業の場合、どのようなパターンの授業になるだろうか。2つの例を
紹介する。

【パターン1】 授業のほとんどがゲストティーチャーのお話が中心と
なるパターン。たとえば45分のうち35分がお話、残りが質問コーナ
ーという具合である。ゲストティーチャーの専門的な話が十分に聞く
ことができるというよさがある反面、難しい話や講義調になってしま
う場合もある。

【パターン2】 あくまでも教師の授業がメインで、その中の一部に
ゲストティーチャーが登場するパターン。授業者の意図があるので
ゲストティーチャーの話す時間は少ない。

 私の場合はかつては1のパターンがほとんどであった。
 しかし、今では違うパターンである。「お話を聞く」という場合には、
次のようにしている。

【パターン3】 1 ゲストティーチャーが10〜15分程度の話をする。
2 子供たちが20分〜25分程度の質問をする。
3 残りの時間でゲストティーチャーと教師がまとめの話をする。

 いわば「質問がメイン」の授業である。
 これは雑誌「授業づくりネットワーク」(学事出版)2000年8月号
で上條晴夫氏が、「『質問する技術』を教えたい!」で提案されてい
たことであった。
 実際に試してみるとパターン1に比べ、いくつものよさがあることに
気づいた。

・まず、子供たちの学習内容が深まる。知りたいことを学ぶことがで
 きる。そのためには、事前に質問内容を吟味するという作業が必
 要になる。
・ゲストティーチャーの個性が伝わってくる。質問に対して答える時に
 は、ゲストティーチャーの人間性が垣間見られることが多い。
・子供たちとゲストティーチャーとの心の交流が深まる。
・子供たちが主体的に興味を持って参加できる。


 この中で一番のよさは「ゲストティーチャーの個性や思いが伝わる」
ということと感じている。これだけでも「人から学ぶ」という価値がある。

■ 実際の授業

 三陸北部森林管理署の方をお招きしての授業。事前に打ち合わ
せをしてから、来校していただいた。署長さんがじきじきに来られた。
 署長さんは、ゲストティーチャーとして学校で教えるのは初めてとい
うことであった。(HPに掲載されている森林出前教室は前署長の時の
こと)
 最初、15分間、日本と宮古の森林事情について話してもらう。
 「宮古市重茂にある大ケヤキは『森の巨人たち100選』に選ばれた」
「皆さんにお願いしたこと」といった話に子供たちは興味を示す。自分
たちの知らない事実だからである。
 そしてメインの質問タイム。
 子供たちが事前に考えていた質問、そしてその日のお話から考え
た質問が次々と出てくる。子供たちの質問に、はじめは硬かった署長
さんの表情も和らいでくる。同時、口調も滑らかになってくる。「質問効
果」と言ってもよいかもしれない。

 一番個性が出たのは、次の質問のときであった。
Q 「木を育てる『一番の喜び』って何ですか」
A 「そうですね・・・。自分が若いころ(署長さんは50代)、山に植樹を
  をしました。『どんどん育ってくれよ』という思いで植えたものです。
  その場所には、仕事の関係でしばらく行ったことがなかったのです
  が、数年前、たまたま行く機会がありました。そうしたら、自分が植
  えた木が大きく育っていました。その山を見た時に、素直に感動し
  ましたね。『この仕事をしていてよかった』とつくづく思いました。」

 この話から、署長さんが誇りを持って木を育てていることを私も子供
たちも感じ取ったのであった。
 これは講義調のゲストティーチャーとの授業では生まれないものであ
ろう。

■ ゲストティーチャーも感動

 授業終了後、校長室にゲストティーチャーを招いた。
 学校長に署長さんが、開口一番、「いやあ、今日は私が感動しました」。
子供たちの質問に、今まで自分が携わってきた森林の仕事をいろいろと
思い出したということである。
 「初めて学校で教えるということで不安だったのですが、子供たちに励
まされたようなものです」とも話された。
 社交辞令はあるにせよ、このように言われると、ゲストティーチャーを
招いた甲斐があったと感じる。もちろん、子供たちの学びが大きかった
ことは言うまでもない。
 その意味で、質問をメインにした授業は、ゲストティーチャーのよさを
引き出すものと言える。

 なお、ゲストティーチャーの授業実践例を数多く収録した本が出版され
ました。『ゲストティーチャーと創る授業』(上條晴夫編著・学事出版)です。
「セッション型授業」「ヒヤリング型授業」「コンサート型授業」の3つに区分
された実践事例はすぐに役立つものです。一読をお勧めいたします。

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