連載 私の教材開発物語 第19回

                 私の定番授業「発見!テレビCMの秘密」

                   佐藤 正寿(岩手県・水沢市立水沢小学校)

 

■ 私にとっての定番授業


  ここ数年、私は4年生以上の学年を担任している。学年が違っても毎年実践
をしている授業がいくつかある。「発見!テレビCMの秘密」もその一つであ
る。
 テレビCMは子供たちにとって身近な存在である。子供たちはそこから買い
たい商品の情報を得たり、キャッチコピーの影響を受けたりしている。そこで、
テレビCMになぜ引き寄せられるのか、その分析をさせたいと考えたのが、こ
の実践のきっかけである。私にとっては、年間何回が実践をしているメディア
リテラシー教育の一つである。

■ テレビ好きの子が生きる

 この実践を毎年行うのは授業そのものが楽しいからであるが、その他にも大
きな理由がある。この学習で生き生きとする子が必ず出てくるからである。
 実践の布石として、10日ぐらい前に子どもたちに「テレビ日記」をつける
提案を行う。

 君たちが毎日見ているテレビについて思ったこと、気付いたことを日記に書
きます。テレビ番組でもいいし、コマーシャルでもいいです。長くても短くて
も構いません。期間は1週間です。

 これは強制ではなくあくまでも任意である。しかし、ふだんとは違うパター
ンの家庭学習に多くの子どもたちは興味を示し、次のような日記を書いてくる。
(5年生の例)

☆CMを見ていると、何かの募集と視聴率を上げる宣伝と物を買ってほしいの
3つに分かれると考えました。時間は15秒と30秒です。短い時間で楽しく
するようにCMは作っていると思います。天気情報で、短い時間でわかりやす
く図が書いてあり、言う人が「あ〜さむそう」とかひとり言をいったり、洗濯
情報が書いてあったりしました。見ていると楽しくなってきて、工夫をしてい
るなと思いました。

☆今日、いろいろなCMを見て、一番すごいなあと思ったのは洗剤のCMです。
人が天使のかっこうで、小さくなっていておもしろかったです。あれはどうや
って小さくしているのかなと思いました。

 日記の中には子供たちが発見した番組やCMの工夫、疑問点が詰まっている。
これらはそのまま授業での学習の視点にもなるものである。実際に授業でも子
どもたちの日記の一部を活用することができた。
 また、このテレビ日記はふだん作文を苦手とする子でも、長く書く子がいた
というのが特徴であった。テレビ好きの子である。ここぞとばかりに自分の思
ったことや考えを書き連ねていた。その作文を見本として帰りの会で紹介をす
る。するとそれを励みにまた日記を書くという繰り返しである。そのような子
は実際のCM分析の授業でも、テレビ日記をもとに積極的に発言をする。まさ
にこの学習だからこそ、生き生きとした取り組みができるのである。

■私自身もワクワク、教材開発

 教師自身も当然教材開発を行う。
 最初に考えるのが、どのCMを扱うかということである。当然、子供たちが
興味を示すものを授業で扱いたい。そのためには、事前に子供たちの声やCM
の見方を知りたい。先のテレビ日記が参考になる。しかしテレビ日記で子供た
ちのよく見ているテレビCMはわかるが、決め手に欠く。
 そこで、私はいつも子どもたちに「好きなCMベスト5とその理由」のアン
ケートをとる。その時の上位のCMを実際の授業の中で使う。
 扱うCMが決まれば、まず私自身が分析する。何度も何度も見て、実に多く
の工夫がCMの中にあることがわかる。同時に、そのCMをキーワードに、イ
ンターネットで検索をする。その裏情報を知ることができる。また、CM関係
の本も読み、授業に役立てる。
 このような情報を探っていくうちに私自身がワクワクする。教材開発の楽し
さである。

■実際の授業〜CM分析編〜

 実際の授業を紹介をする。5年生の社会科「通信」の分野の一つとして行っ
たものである。
 最初に「みんなの好きなCMベスト5」を発表する。一つ一つを言うたびに
子供たちから「うん、うん」「大好き!」といった反応が出てきた。合わせて
好きな理由を簡単に発表させる。人気CMなだけに、子供たちは一気に興味を
示し、どんどん発言をする。一位の缶コーヒー(「明日があるさ」の曲でおな
じみ)のCMの時には歓声があがるほどであった。そこで子供たちに言う。

「これから一位のCMを見ます。工夫をしている点や思ったことを発表しなさ
い。」

 ビデオは3回繰り返して見せた。その後5分間、気づいたことをノートに書
かせる。子どもたちからは、次々と分析した結果が出てくる。

・有名な芸能人を使っているので、おもしろい。
・楽しいというイメージにさせてくれる。
・最初は何のコマーシャルかと思うが最後にコーヒーを出している。
・短い時間でパッとわかる。
・音楽がコマーシャルを明るくしている。
・お金がどれくらいかかっているか知りたい。(きっと多い)
・コマーシャルを作るのに、時間がかかっていると思う・・・・等。

 子どもたちの発表は次々と続く。新しい見方が出てくると、「なるほど」と
いう声が自然に出てくる。子どもたちにとっては自分のCMの見方が広がる時
間である。教師は子どもたちから出た視点を束ねていく。

■分析にプラスをする

 私自身は、メディアリテラシー教育の一つとして考えれば、このようにCM
分析を行い子どもたちのCMを見る視点が広がれば、それでいいのではないか
と考える。
 しかし、「発展」という視点からすれば、何かしらの「プラス」を加えたい。
 この場合には、5年社会の通信分野の学習の一つとして行ったので、テレビ
CMの経済的な面、CMを作る側のターゲットという面について深めたいと考
えた。
 そこで、子供たちから出てきた疑問「お金」と「時間」について、資料を提
示する。資料から、わずか15秒のテレビCMに多くの費用がかかっているこ
とと、多くの人が制作に携わっていることを理解させる。子供たちからも「こ
のCMでは有名人が多いので、ギャラも高い」「このCMでの小道具にもお金
がかかると思う」と実際のCMに即した発言が出てきた。
 ここで、子供たちをゆさぶる発問。

「そのようにお金がかかるのなら、商品が売れても得はしないのではないでし
ょうか。何のためにテレビコマーシャルを作るのですか。」

・いや、それでもコマーシャルをした以上に売れるから損はしない。
・資料集にあるようにテレビは一番みんなが情報を得るものだから、コマーシ
 ャルを作る。
・テレビは大量に情報を伝えるので、その商品を知ってもらえるから得。
・テレビコマーシャルはおもしろいので、はやりになる。すると商品も売れる。
・自分もコマーシャルを見て買ってしまう。そういう人は多いと思う。
・新聞よりもテレビの方が見やすい。
・コマーシャルのある民放で一番多いのは娯楽番組。それを自分たちもよく見
ている。するとコマーシャルをよく見ることになるので、買う量も増える・・
・・等。

 その意見を述べる過程で、テレビCMの経済的な側面と自分たちの生活への
関わりを考えることができた。私からは、企業側の意図について次のように説
明をした。

 テレビコマーシャルを見て、商品を買ったことがある人?(全員が挙手。実
際に買ったものを次々に答えさせる。)このようにみんなも影響を受けていま
す。コマーシャルを作る方も「ターゲット」と言って、買ってくれる人を絞り
込みます。君たちも実はターゲットになっている場合もあります。(その例も
示す。)

 そして最後の発問。「テレビCMは人々にとってどんなものと言えますか。」
 一人の子の発表。

「テレビコマーシャルは釣りのようなものである。釣る人が会社、餌はテレビ
CM。ぼくたちが魚。うまく釣られることもある。」

 テレビCMの一面を突いたこの表現に、子供たちは大爆笑であった。

■     テレビCMは幅広い活用が可能な素材

 分析をさせた後の「プラス」には、先の例の他にもいろいろ考えられる。私
が今まで行ってきたのは次のようなものである。

1 合成映像の効果について(総合・情報教育の一つとして)
 ドリンク剤のテレビCMを分析して、合成映像の効果を考えたもの。
 子供たちは、二つのCMを比較することにより、同じ種類のCMでも送り手
の意図によってイメージが違うことがわかる。

2 ビデオ撮影・編集の素材として(総合)
 子供たちがビデオを活用して発表する時に、効果的な撮影や編集の例として
テレビCMを使った。短いショット、効果的な音声の工夫等を分析し、自分た
ちの発表のビデオに応用することができる。

3 キャッチコピーの素材として(国語)
 テレビCMのキャッチコピーは魅力的なものが多い。その例として提示でき
る。

 このようにテレビCMの教材化は幅広く可能である。教材のヒントを期待して
今日も私はテレビCMを楽しんでいる。

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