連載 私の教材開発物語 第20回

         「地図帳は〇〇」

          佐藤 正寿(岩手県・水沢市立水沢小学校)

 
■     「まるでドラえもんのポケットのよう」

 私が5年生を担任している時の社会科の時間。ある子が次のように言った。
「先生、地図帳はまるでドラえもんのポケットのようだね。」
 農業と水産業の学習をしている時に、一冊の地図帳がいろいろなことに活用
できることをこのように表現したものである。「同感!」とその瞬間に呟いてし
まった。
 地図帳の活用方法は実に幅広い。社会科の学習で地図・統計資料等で使うこ
とはもちろん、総合的な学習における環境教育や国際理解教育でも、場合によ
っては他教科でも活用することができる。また、休み時間に地図帳を広げてい
る子やペアで地名探しに熱中する子もいる。これは何かの目的のために使うの
ではなく、見ること自体が楽しみになっている例である。私自身も小学校の一
時期、暇さえあれば地図帳を見ていたものであった。

■ 「地図帳そのもの」を対象とした授業

 先日、地図帳製作に関わる方を学年(4年生4学級)でゲストティーチャー
として招いた。他の3学級では、ゲストティーチャーの方が主として話をする
形の授業を行った。私の学級ではせっかくの機会であるから、「地図帳その
もの」を対象とする授業を行うことにした。ゲストティーチャーには、子どもた
ちの地図帳に関する質問に答えていただくことにした。
 それまでは授業の中の一部として地図帳を使うということはあったものの、
「地図帳そのもの」を対象として授業を行うということは今までなかった。い
ろいろな地図帳の機能を子どもたちに感じ取らせたい。そして授業の最後
には、「地図帳って便利だ」「地図帳はこんなことにも使えるんだ」「もっと地
図帳を使ってみたいなあ」といった感想が子どもたちから出てくればいい。
そう考えた。

■ 授業「地図帳は〇〇」(4年生対象)

1 都道府県3クエスチョンズゲームを行う。(都道府県図を見ながら)
 (1) 教師が画用紙に答えとなる都道府県名を事前に書いておく。
 (2) 子供たちが答えの都道府県に関わる質問を3つする。
 (3) 教師が質問に一つずつ答え、それを手がかりに子供はその都道府県を
   予想して発表する。
 (4) 教師が答えを発表する。(以上を3問繰り返す)
   全問正解者に大きな拍手をする。

 このゲームは、楽しみながら、都道府県名およびその位置、形、特色等を覚
えることができるものである。以下のサイトに詳しい。
 http://homepage2.nifty.com/masa555satou/gamekenmei3situmon.htm

2 地図帳の有用性を感じる利用法を教える。

 「地図帳では特産物を絵記号で知ることができる」
 「地図帳では距離や交通手段を知ることができる」
 「地図帳では各地の気温を知ることができる」
 「地図帳では索引を使って見知らぬ土地を見つけることができる」
 「地図帳では日本一・世界一高い山や広い湖などがわかる」等の様々な活用
法を具体例に基づいて、地図帳の便利さ、すばらしさを実感させる時間である。
一つ一つの方法について次のように設問をして、子どもたちが地図帳を見なが
ら解決していこうという形をとった。
 たとえば、特産物では、次のような設問である。

★アメリカ合衆国の人が私たちの水沢小学校を見学に来ました。帰る時に「岩
手県のおみやげは何がいいですか」と聞かれました。あなただったら、何を出
しますか。

 子どもたちは岩手県の地図の絵記号を必死で見る。「やっぱり南部鉄器かな」
「りんごもおいしいよ」「『浄法寺ぬり』というのもあるんだ」と特産品の絵記号を
見つけては、「はい、はい!」と挙手をする。
 距離を測る時には、「同じ岩手県の宮古市の方が隣の県の仙台市より遠いん
だ」と分かったり、同じ頃の沖縄の平均気温が24度知って驚いたり(本校は
その日は最高気温10度)と子どもたちの地図帳への関心はぐっと広がった。

 最後に子どもたちに、聞く。
「『地図帳は〇〇』。〇〇にあてはまる言葉を発表しなさい。」
・地図帳は便利
・地図帳はすごい事典
・地図帳はいろいろなことを知る本
・地図帳はみんなの味方
・地図帳はおばあちゃんの知恵袋・・・等、地図帳の有用性に関するものが次々
と出てきた。

3 地図帳に関わる疑問についてゲストティーチャーの方に答えていただく。
 (略)

4 授業の感想の発表。

・今まで地図帳のことがよくわからなかったけど、よく分かりました。気温や
 名産品のことを書いているのがすごいと思いました。
・今日はいろいろなことがわかってよかったです。特に地図帳は、とても書く
 ことがむずかしいのに、わかりやすい地図帳を作ろうとしているのがわかり
 ました。それにしても地図帳は本当に便利だと思いました。

 この授業については以下のサイトに詳しい。
http://homepage2.nifty.com/masa555satou/tizuchou.htm

■ どの学年でも、どんな時でも気軽な地図帳利用を

 小学校社会の学習内容から言えば、「3年で市」「4年で県」「5年で国土」「6
年で世界」という地図利用が多いと思われる。しかし、子どもたち個人のレベ
ルでは、興味を持つ分野でどんどん地図帳利用を促進して、知の世界を広げ
させる方がよい。たとえば4年生でも、世界各国に関わる地図の見方や教え
ることにより、子どもたちは世界にも興味を持つ。
 この地図帳利用の授業のあと、社会科の授業始めに継続的に5分ほどの「
地図帳発見タイム」を設けている。少しずつではあるが、地図帳を開く回数が
増えているのは確かである。今日も、休み時間に「3クエスチョンゲーム」をす
る声が響いている。

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