連載 私の教材開発物語 第21回

               「わたしたちのテレビ白書」

                佐藤 正寿(岩手県・水沢市立水沢小学校)

       
■  教科の中でメディアリテラシー学習ができないか

 私の実践の柱の一つにメディアリテラシー学習がある。
 2年前、前任校で「発見!プロ野球を楽しく見る方法」に取り組んだのがき
っかけであった。学年1クラスいうこともあり、したいテーマを見つけてわり
と自由に実践をしてきた。
 ところが、今年転勤となった今の小学校は学年4クラス。総合的な学習は合
同が原則。その内容も年間計画に定められている。転勤したてということもあ
り、自由に「メディアリテラシー学習を」というわけにはいかない。
 しかし、何も総合的な学習だけがメディアリテラシー学習の対象ではない。
教科の学習の中でも、何らかの形でメディアリテラシー学習はできるはずであ
る。たとえば5年生社会の通信に関わる学習では、具体的に放送局を見学した
り、自分たちで番組作りをしたりすることにより、メディアリテラシーの
視点を深めることができる。
 その視点で担任している4年生の各教科の学習内容を見てみる。
 国語の教科書(光村図書)の中に「生活を見つめて」という単元がある。調
べたことを報告する学習である。教科書の例は「読書生活」である。「これを
『テレビ生活』に置き換えたらどうだろう?」というメディアリテラシー学習
のヒ
ントが浮かんだ。
 教科のねらいを達成しつつ、対象をテレビにすることによりテレビというメ
ディアに対する見方を深めることも同時にできると考えたのである。「調べた
ことを報告する」のであるから、テーマも「わたしたちのテレビ白書」と設定
をした。

■ 実践「わたしたちのテレビ白書」(小学校4年生)

 単元の大まかな流れは、次の通りである。(合計8時間)

1 テーマ決め・アンケート用紙作成(1時間)
2 アンケート実施(1時間)
3 アンケート用紙集計・分析(2時間)
4 報告文作成(2時間)
5 発表・振り返り(2時間)


 ポイントは具体的にテレビについて何を調べるのかという点である。最初の
時間。子どもたちに「テレビについてだったら何でもいいです。君たちが疑問
に思っていること、調べてみたいことを決めなさい。」と投げかけた。
 子ども達が次のようなものをテーマとして選んだ。

・4年1組のみんなが好きなCM
・好きなキャラクターとタレント
・テレビのことで家の人に言われること
・テレビのいい点・悪い点
・家にはテレビが何台あるか
・好きなテレビゲーム
・家の中で誰がテレビのチャンネルの中心か
・好きなテレビ番組


 「好きな〇〇」が多いであろうと予想をしていたら、意外と幅広いテーマと
なったと感じた。たとえば、「テレビのことで家の人に言われること」や「テ
レビのいい点・悪い点」などはおもしろい内容である。きっと子どもたちが自
分のテレビ生活を考えるきっかけになるだろうと感じた。
 一つのテーマについては希望したものを4〜5人が担当をする。アンケート
を作成し、書いてもらい回収をする。集めたアンケートを読みながら「あっ、
そうか」「予想と全然違う」と楽しそうに取り組んでいた。時にはアンケート
を書いてもらった人に聞き取りも行った。
 そして集計、分析をして教科書の例を参考にしながら報告文にまとめていっ
た。

■ 子どもたちのテレビ生活が見える白書に

 それぞれのグループの報告は子どもたちにとっても私にとっても興味深いも
のが多かった。
 たとえば、「家にはテレビが何台あるか」。学級34人のうち一台と答えた
子は5人のみ。2台・3台が一番多かったが、4台以上が10人もいた。「一
台で不便ではないのですか?」と調べた子どもたちが聞いたら、「家族がだん
らんできる」「番組のうばいあいもあるけど、一つの番組についていろいろと
話ができるからいい」ということであった。一台と答えた子どもたちは不便よ
りもメリットの方を感じているわけである。
 また、「テレビのよい点・悪い点」を調べたグループの「いい点ベスト3」
は、「いろいろな情報が入る」「楽しめる・おもしろい」「分からないことが
分かる」であった。大人からすれば当たり前のような結果であるが、子どもた
ちにとっては、「このようなことを初めて考えた」という感想もあり、「テレ
ビとは何か」ということを子どもたちに意識させる結果となった。

■ 子どもたちが「わたしたちのテレビ白書」から感じたこと

 報告会後、子どもたちにこの単元で意図していた国語のねらいとは別に、「
テレビについて思ったことは何ですか?」と聞いた。子どもたちのテレビに対
する視点がどう深まったかをみるためである。
 子どもたちからは次のような感想が出てきた。

・テレビは,みんなにとって欠かせないというものだということが分かりまし
た。お母さんが注意するのも分かるけど、ニュースを見ることもあるので、や
はり大切です。それにつかれて家に帰ってきて、みんなで楽しくテレビを見る
と、つかれもふっとぶ時間になると思いました。
・テレビはすごいものだと思いました。ニュース、アニメ、ドラマといろいろ
と見られます。わたしも調べてよかったし、みんなの発表もいろいろと比べら
れておもしろかったです。
・白書を自分たちで作るたびに「へえ〜」と思ったり、発表を聞いて「すごい
な〜」と思ったりして、いろいろなことが分かり、とてもいい勉強になりまし
た。
・テレビにはいいところも悪いところもあることがわかりました。このような
細かい情報がえられてよかったです。
・テレビ一つでこんなにいろいろと発表ができるなんてびっくりしました。こ
の先もテレビのことを研究したいと思いました。
・この白書の結果がわかって、みんながテレビを見ることが変わればいいなと
思いました。

 身近であるがゆえに、なかなかその存在について考えることがなかったテレ
ビ。今回の「わたしたちのテレビ白書」でじっくりとテレビについて考え、視
点を深めることができた。このために何も特別に単元を行ったわけではない。
一つの教科の中で工夫をすれば、その教科のねらいを達成させるだけではなく
メディアリテラシーの視点も深めることができるのである。
 この冬休み(岩手は長い)には改めて教科の学習内容を洗い出し、教科の中
でできるメディアリテラシー学習を体系化しようと考えている。


トップに戻る