連載 私の教材開発物語 第22回
「学習ゲームの魅力、再発見」
佐藤 正寿(岩手県・水沢市立水沢小学校)
■ 「学習ゲーム」の講座を持つことに
岩手は冬休みが長い。私の小学校は来週20日が始業式である。
冬休み期間中に県内ではいろいろな研修が行われる。その一つ、「県学校レ
クリエーション指導者養成講習会」で講座の講師をすることになった。今まで
全く関わりのない県学校レクリエーション協会からの依頼である。昨年度発行
した本「思考力を鍛える小学校社会科学習ゲーム」(上條晴夫・阿部隆幸編著
学事出版)が縁らしい。(この本作りのコンセプトは、本メールマガジン
797号に執筆。授業でのおまけのような学習ゲームではなく、授業の中核に
位置付けられる学習ゲームという点が既成の概念と異なる。)
しかし、本年度転勤をしてからは学習ゲームになかなか取り組むことができ
なかった。その点で講師を受けることに迷いも少しはあったが、基本的に「頼
まれた仕事は断らない」と決めているので、「よろしくお願いします」と返事
をした。
くわしく聞いてみると、「講座でレクリエーションの技術は 身につけられ
る。しかし、『レクリエーションはおもしろいが、肝心の授業はつまらない』
と子どもたちに言われたのでは意味がない。そこで 授業づくりに関わりのあ
る『学習ゲーム』でお話をお願いしたい。」ということ。依頼の趣旨はわかっ
た。
■ 文献研究、そして改めて学級で実践
学習ゲームの講座を行うのは初めてである。そこで、改めて今まで自分が参
考にした基本的な文献を読み直す。
様々な文献の中で一番役立ったのは上條晴夫氏の『「勉強嫌い」をなくす学
習ゲーム入門』(学事出版)である。この本の章立て自体が 学習ゲーム入門
講座そのものと思われるくらいである。具体的には、「いま、なぜ『学習ゲー
ム』か」という問題提起あり、「学習ゲーム開発とその実践」という具体的な
実践事例あり、そして「学習ゲームの授業運営法」という章で締めくくってい
る。「自分が講座を受け持つ」という視点で読み、改めてこの本の凄さを感じ
た。
また、この本の中にあるゲームと今まで自分が開発したゲームを改めて学級
で実践してみた。学級担任が講座を行うメリットは、やはり自分の学級に実践
をかけることができる点である。そして、ゲーム終了後は子どもたちに5段階
評価をしてもらった。おもしろいことに教師が「このゲームはなかなかいい」
と思っていても子どもたちからは不評だったり、またその逆もあったりで「試
してみることはやはり価値がある」と改めて感じた。
文献研究と学級での実践から、講座ではやはり「学習ゲームの模擬授業」を
メインにしようと考えた。実際に体験してみることが、学習ゲームの一番の理
解につながると思ったからである。「導入ゲーム」「バラエティゲーム(笑い
を引き出すゲーム)」「思考力を鍛えるゲーム」の3種類のゲームを柱にして
その前後に概論、運営法の話を行う計画にした。
■ いざ講座
先の準備期間は1ヶ月ほど。いざ講座である。持ち時間は100分。レクリ
エーションの研修ということで、参加者は20代・30代の若い教師が中心で
ある。しかもほとんどが希望しての参加なので、私の講座の前のレクでは大い
に盛り上がっていた。
これは自分にとって有難かった。聴衆が意欲的でしかもある程度リラックス
している。学習ゲームを行うには好都合の条件である。
その影響もあってか、予想以上に模擬授業は好評であった。特に先の上條氏
の著書の中に書かれている「他己紹介ゲーム」の模擬授業は、「ぜひ学級で実
践してみたい」という声が続出した。
このゲームは質問をしたことをもとに隣の人を紹介するものである。次のよ
うに行う。
1 二人一組になる。
2 質問者はたとえば次の質問からスタートする。「テレビは好きですか?」
その後は答えの理由を深く聞いていく。
3 質問時間は二分。
4 質問内容を材料に、ある型に沿って 「他己紹介スピーチ(一分)」を行
う。
スピーチの型の紹介やいくつかの留意点を加えていざ質問開始。見知らぬ同
士でも「質問」という形であれば、どんどん話が進んでいく。身振り手振りを
交えて自分のことを説明する回答者。それをうなずいたり、大笑いしたりしな
がら聞く質問者。真剣な学習であるが、なぜか和やかで大盛り上がり。代表者
のスピーチにも「ほー!」「うまい!」という声が聴衆から自然に出てきた。
このような学習ゲームを3種類5本行った。大笑いする場あり、真剣に考え
場ありと私にとってはあっという間の100分であった。
■ 校内研でも講座を開く
「県のレク協会の研修に講師で行くのなら、ぜひ校内でも・・・」と依頼を
され、冬休み中の校内研でも講座を開くこととなった。
先の講座と違い平均年齢はやや高いし、希望をして校内研に参加をしている
わけではないので、意欲面で心配をしていた。しかも、持ち時間は県レクの半
分ということでかけ足の講座となる。しかし、それらの心配は無用であった。
次のような感想がそのことを物語っている。
★今日紹介していただいた学習ゲームは心をほぐし、自然な形で自分をさらけ
だす(表現する)ことができるものだと感じました。学級づくりにたいへん有
効だと思いました。
★「楽しい」ということはとても大切なことだと改めて分かりました。「学習
ゲームで何かの力を育てる」ということは、目からウロコでした。
★やはり体験的な研修は実になるなあと思います。理論だけではなく、実際に
やってみることで研修の充実度が変わってくることを実感できました。大人で
もこんなに楽しいのですから、子どもならなおさらですよね。
一人一人の感想を読むと、実にいろいろな学びがあることがわかった。授業
での学習だけではなく、学級づくりにも役立つ。それだけではなく自分の内面
を知ることもできる。さらに研修システムの一つとしても魅力的・・・。まさ
に学習ゲームの可能性の広さを感じた。
今回は新たに教材開発を行ったわけではなかった。しかし、「学習ゲームの
楽しさ」「学習ゲームの知的な魅力」を再度実感することができた。転勤をし
て学習ゲームの教材開発に遠ざかっていたが、改めて挑戦してみようと思って
いる。
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