連載 私の教材開発物語 第29回
「家庭でも音楽でも地域のよさ・日本のよさを伝える」
佐藤 正寿(岩手県・水沢市立水沢小学校)
■ 子どもたちに「誇り」を持たせる
いろいろな学習をする中で、子どもたちに「家族のよさ・地域のよさ・日本
のよさ」を感じ取らせることが大切だと考えている。それらを知ることにより、
「家族っていいな」「自分たちの地域や国にはこんなすばらしいことがあるん
だ」といった「誇り」を持つであろう。
国際化の波が教育界にも押し寄せている。総合的な学習で国際理解教育も盛
んである。こういう時代だからこそ、「自分の家族のよさ」「自分の地域のよ
さ」「自分の国のよさ」を堂々と語ることができる子供たちに育ってほしいと
願う。
そこで私は「地域のよさ・日本のよさを伝える授業」というホームページを
開いている。社会科や総合の実践が多いのであるが、いろいろな教科にこのテ
ーマは通用するものだと感じている。今回は家庭科と音楽の紹介である。(な
お家庭科は3年前の実践である。)
■ 例1 家庭科5年「家族から『家庭での仕事のこつ』を学ぶ」
5年生最初の単元は「仕事、任せて大作戦」であった。家庭での仕事につい
て考え、実際に自分ができる仕事について実践してみるというものである。日
常でお手伝いをしている子がほとんどであったが、そのお手伝い以外に1週間、
家の仕事を行うというものである。「玄関そうじ」「食事作り」「洗濯物の後
片付け」等、子どもたちは自分の興味のあるテーマを選んだ。
自分が選んだ仕事については、ふだんしているわけではないので、当然わか
らないところが出てくる。そこで、次のように指示をした。
家族から「家庭での仕事のこつ」を聞きなさい。それをあとで「5年生・家
族の仕事百科」にまとめます。
家庭での仕事については、やはり母親や祖母はプロである。子どもたちは1
週間、家の人から学んだことをもとに実践をした。そして、今まで気付かなか
った「家庭での仕事のこつ」を各自がつかんだ。
それを表に一人一人まとめた。全員分を閉じると、「5年生・家族の仕事百
科」の完成である。読んでみるとなかなかおもしろい。
お家の人へのお礼の意味もあって、授業参観の冒頭の時間を使い、その「仕
事のこつ20秒スピーチ」を行った。
子どもたちの一人一人の仕事での奮闘ぶりや実際に道具を持ってきてこつを
紹介する度に、大きくうなずいたり、思わず拍手をしたりする家の人もいた。
いい場面であった。
単元終了での感想では、「お母さんから、仕事のこつを学んでもの知りにな
ることができ、よかった」といったことが多く出てきた。
家庭での仕事はやはり「家庭での仕事のプロに」に聞くのは一番、というこ
とを子どもたちは実感した。
■ 例2 家庭科5年「おせち料理の意味は?」
日本の伝統行事の中でも「おせち料理」は、子どもたちになじみの深いもの
である。
しかし、その料理自体の知識はあまり家庭で話されることがないという。そ
こで、2学期最後の家庭科の最初の時間を使い、「おせち料理の意味は?」と
いう学習をした。(15分ほど)
1 おせち料理にはどんなものが入っていますか
(黒豆、伊勢海老、田作り、かまぼこ・・・等いろいろと出てくる。「あま
り食べないといった」声も聞こえる。)
2 実は一つ一つの料理にはいろいろな願いがこめられています。
・黒豆の「まめ」には、まめに「 」という思いがあります。「 」には何
が入るでしょうか。(すぐに「働く」という言葉が出てくる。)そうですね。
健康に働けることは今も昔も大切なことです。さらに関東地方では、「しわが
よるま長生きできるように」ということで、黒豆をしわがよるまで煮込む地域
もあるそうです。
・数の子も縁起がよいとされています。何かに恵まれるからです(子どもとい
う反応)。それだけではなく、「よいことに数々恵まれる」とも言われていま
す。
・栗きんとんも縁起のよいものです。漢字では、「栗金団」と書きます。「金」
がたまるとされています。
・ かまぼこは、どのような点が縁起いいのでしょうか(色、紅白という反応)。
赤色は難しいことは退ける、白は清らかなことを表しています。
3 おせち料理はこのように一つ一つ願いが込められているのです。感想を発
表しましょう。
★子供たちの感想
・私が知らなかったお正月のことがわかってうれしいです。子宝に恵まれるよ
うに、私はお正月に数の子を食べようと思いました。
・正月は今まで何となくやってきたけど、こうして学習してみると由来がたく
さんあることがわかりました。
・大掃除は何となくめんどうくさいと思っていたけれど、必要があったことが
わかりました。
・ぼくはおせち料理をあまり食べないから今度は食べるようにしたいです。
感想からもわかるように、子どもたちは改めて「おせち料理」に関する意味
を知ることができた。
このように伝統行事やならわしで衣食住に関わることはけっこう多い。「お
月見」「七五三の晴れ着」もそうである。それに関わる学習を月に一回ぐらい
10分程度で行う。子どもたちは今まで知らなかったことが多いので、喜んで
話を聞く。私自身もこのようなことを伝えていくことの大切さを感じる。
■ 例3 音楽・「滝廉太郎の曲を味わおう」
音楽でも日本の曲のよさを味わうことができる。5年生で行った授業を紹介
する。
(学級通信「カルチェ・ラタン」67号・平成15年9月12日発行より)
昨日、音楽で滝廉太郎の曲を学習しました。「荒城の月」「花」といった大
人にとってはなじみ深い曲です。ところが、子供たちにとっては、「タキレン
タロウ?誰?」「音楽室に写真があるよ」といった程度のとらえでした。
そこで、「何とか滝廉太郎のよさを味わわせたい」と考え、次のように授業
をしました。
最初に、滝廉太郎について私が調べたことを子どもたちに伝えました。
・日本の音楽史上有名な音楽家であり、その曲が100年以上伝えられている
こと・その証拠に滝廉太郎記念館が二つあること
・教科書にあるものだけではなく、他にも有名な曲を作っていること
この事実の紹介によって、子供たちは「日本ではかなり有名な人」と理解し
ました。
さて、かんじんの曲です。「荒城の月」「箱根八里」「花」と、一曲、一曲
じっくりと聞かせました。「荒城の月」「箱根八里」はほとんどの子どもたち
にとって初めの曲でしたが、「花」の前奏が流れた時には「ああ、知っている」
「お姉ちゃんが歌っていた」という声も出てきました。
「一言で言うと、どんな感じがしますか。」と聞くと、子どもたちから次の
ような反応が返ってきました。
■「荒城の月」・・・悲しい感じがする、男の声と女の声が合っている、さび
しい感じがする
■「箱根八里」・・・はずんでいる、力強い、男の人のいろいろなパートがま
じりあっている、がんばって山に行くぞという感じ
■「花」・・・・・・美しい、流れるようだ
滝廉太郎が、実にいろいろなタイプの曲を作っていることがわかります。子
どもたちも「ちがった雰囲気の曲を次々と作っているなんてすごいなあ」と感
じたようです。
ちなみに、「3つの曲の中でどれが一番好きですか」と聞くと、見事に3つ
とも同じくらいの割合で手が挙がりました。
この授業で、子どもたちの滝廉太郎についての見方は深まりました。次のよ
うな感想がそれを物語っています。
・きれいな歌を作る人だなあと思った。それに、いろいろな曲を作るなんてす
ごいです。
・すばらしい人なんだなあと思いました。滝廉太郎さんはいい歌を作っている
なと思いました。ほかの曲も聞いてみたいです。
おまけで「お正月(もう、いくつ寝ると〜の曲です)」も聞かせました。こ
れも滝廉太郎の作曲です。
今後何からかの機会に滝廉太郎に接することがあると思います。今回の授業
のことを、その時に少しでも思い出せば嬉しいと思います。
■ 「家庭・地域・日本」のよさを伝えることのメリット
「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を伝える視点を持つことによって
家庭科の場合であれば次のようなメリットがあると感じている。
・家族を含め、その道の専門家から直接学ぶことができるので、子供たちの学
習意欲が高まる。同時に、人から学ぶことは生き方が学ぶことにつながる。
・家族・地域の一員としての自覚や誇りが高まる。
・学習する対象が身近なことが多く、今までの生活経験の中で得た知識が活用
できる。
そのような教材開発をするためには、まず教師自身が「家族のよさ・地域の
よさ・日本のよさ」を学ぶことが大切と考える。そして、教師自身が「おもし
ろい」「感動した」というものは、子供たちもやはり興味を持つ。そのような
内容をたくさん蓄えることの必要性を感じる。
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