連載 私の教材開発物語 第30回
メディアをミックスさせる
〜NHK学校放送番組「おこめ」をメインに〜
佐藤 正寿(岩手県・水沢市立水沢小学校)
■ NHK教育の学校放送番組
皆さんはNHK教育の学校放送番組を、どれぐらい授業で視聴させているだ
ろうか。また、学校放送番組にどのようなイメージを持っているだろうか。
数年前まで、「学習のまとめとして見せるもの」「実際に見学に行けないも
のを見せるもの」といったように学習の補完的な形でしか私自身見せたことが
なかった。
それが変わったのは、2年前にNHK学校放送番組「体験!メディアのAB
C」の番組協力員になってからである。この番組は、小学校高学年を対象とし
たメディアリテラシー学習のためのものである。教科の番組の補完物ではない。
番組そのものが学習のメインになる。そして、番組をもとに授業を構成するよ
うになった。
今年は同じくNHKの「おこめ」のプロジェクトチームに入っている。
■ おこめ学習と学校放送番組「おこめ」
そもそも「おこめ」をテーマにするメリットは何か。次のようなことが考え
られる。
・本校の子どもたちは米を主食としており、全員に関わり合いがあり興味が持
ちやすいこと
・5年生の社会科の学習で稲作農家の事例を学び、教科と関連づけた学習が
できること(現在5年生担任)
・「健康」「国際理解」「環境」等総合的な学習の現代的な課題のテーマに結
び付けやすいこと
・実際に稲を育てる過程でゲストティーチャーから学ぶことが多いこと
これらのメリットから、幅広い学習が展開可能ということがわかる。
そしてさらにこのおこめ学習を充実させるものがNHK学校放送番組の「お
こめ」である。「おこめ」は小学校高学年向けの総合的な学習の時間を対象と
した番組である。内容は、お米の育て方だけではなく「祭り」「世界のこめ作
り」等、幅広いものとなっている。番組自体も思わず見入ってしまう映像、問
題提起の部分等を取り入れ、子どもたちの興味・関心を高めるような内容にな
っている。
私の学級では番組を定期的に視聴している。同時に学習の展開に応じて、
部分的にホームページ上で視聴をしている。
■ テレビ・クリップ・掲示板
そのNHK「おこめ」のホームページにはいくつかの特徴的な機能がある。
http://www.nhk.or.jp/okome/ja/frame.html
★テレビ→番組そのものをホームページ上で見ることができる。今までは一斉
にしか見ることができなかったが、このデジタル教材により、子どもたちが興
味のある部分・調査に必要な部分を個別的に視聴できるようになった。個別的
な調べ学習の時に役立つ。
★クリップ→1〜3分の動画がたくさん入った映像百科事典である。子どもたち
が個々の課題を追究する時に視覚的に学ぶことができる。そのコンテンツも2
00本以上あり、子どもたちの課題に対応できるものになっている。
★けいじばん→子どもたちが番組の感想を交換したり、クラスの取り組みを発
表したりするために用意されたものである。つまり、番組をきっかけにした交
流学習をこの掲示板を使って行うことができる。
他にもホームページには機能があるが、本校5年生が主として活用をしてい
るのがこの3つである。個別的な課題追究の時には、「テレビ」「クリップ」
を繰り返し活用している。また、同じおこめ学習をしている他県の3校とは掲
示板を活用して交流をしている。
■ メディアをミックスさせる
様々なデジタル教材があるということは、それらをミックスさせた取り組み
が可能だということである。
番組の第4回は「農薬を使わないこめ作り」、第5回は「農薬なしではやっ
ていけない!」である。対立する内容であり、農薬反対派と農薬賛成派のそれ
ぞれの立場からの番組である。子どもたちにどちらの番組も視聴させ、「あな
たは農薬を使うことに賛成ですか?反対ですか?」と投げかけた。そして討論
をすることを告げ、子どもたちにクリップ教材で理論補強をするように促した。
興味づけと調べ学習の相乗効果で討論は深まった。
□農薬賛成派
・適度な農薬を使っておいしいお米を作ればいい。
・雑草とか虫が苗を悪くしてしまうから農薬を使ったほうがいい。
・使う量や時期に気をつければよいと思う。
・無農薬だと病気がふえてしまうし、農薬を使えば何とかなるから。
・そうしなければお米も食べられないし、農家の人もお金がなくてくらしてい
けなくなるから。
□農薬反対派
・研究を多くすれば、無農薬のお米もどんどんできると思う。
・人の健康に害がある場合がでるかもしれないから。
・安全でいい米がほしいから。
・世話がたいへんでも、農薬を使って稲に害があったら意味がない。
・無農薬でがんばっている人もいるので、農薬を使わない方がいい。
「番組視聴」→「クリップ教材」→「実際の討論」というように複数の教材
をミックスさせることにより、一つの教材にはできない複合効果が生まれたの
である。
■ 教師もインターネットを活用して情報交換
現在4校で交流学習を行っている。と言っても子ども同士に任せているわけ
ではない。教師同士が連絡を密に取り合い、何らかの仕掛けをしておくことが
必要である。そこで4校の担任を中心としたメーリングリストを作って情報交
換をしている。交流のしかたについて意見を交換をしたり、教師の目から見た
子どもたちの様子を気軽に話し合ったりと有意義な情報交換になっている。
教師同士が日常的に交流をしていると、年3回のプロジェクト会議で会った
時にも気軽に話ができる。まさにメーリングリスト効果である。
また、掲示板の子どもたち一人一人の書き込みが担任に自動的に送られてく
る機能がある。教師がホームページ上の子どもたちの書き込みを記録する手間
が省ける。同時にそれらを整理することによって、子どもたち一人一人の学び
の記録が簡単にできる。それらを継続することにより、一人一人の変容を見取
ることができる。
このように、教師がインターネットをうまく活用することは、子どもたちに
よりよい教育効果をもたらすことになる。
■ 稲刈り後は・・・
メインの「おこめ」の番組やホームページを中心に述べてきた。
かんじんのお米作りももちろん行っている。5月にバケツ稲に植え、定期的
に調べ活動を行い、一週間前に稲刈りを行った。学習の過程で専門家をゲスト
ティーチャーに招き、ワークショップと質問を中心とした授業を行った。その
ような実体験があったからこそ、様々なメディアの学習も生きてきたのだと思
う。
今後は、後期の活動に向けて4校交流を活発にすることを目指している。有
機栽培、農業の祭り等のテーマを現在共同で学習を進めている。最終的には共
同で学習したことを各学校のホームページにまとめて発表する予定である。
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